17歳からのメッセージReport2002

17歳からのメッセージReport2002 page 10/32

電子ブックを開く

このページは 17歳からのメッセージReport2002 の電子ブックに掲載されている10ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
17歳からのメッセージReport2002

8金賞答えがない日本が好きです。他者の答えを求めようとする日本が嫌いです。日本について考えたときこの国では答えがないということに気付き私はなぜかうれしかったんです。でも、人はこの国にたくさんの答えを求めようとしています。その象徴に新刊コーナーでは育児、教育に関する本がところせましと並べられ育児や教育に答えを求める人がその本を買っていきます。その本に答えのすべてが載っているとは思いませんが。たしかに答えがあればどれだけ楽だろうと思うんです。私たちに内在する問いに確実な答えがあったら。でも教育に関する確実な答えなんてものは存在しないし、存在したらそれはそれで大問題なことです。答えがないということに焦らないでゆっくり考えていってほしいと思います。答えがない、そのことの自由さに気付いてゆっくり自分の答えを見つけたらいいと思います。【講評】現在の日本には、財政赤字、登校拒否などさまざまな解決を必要とする問題がたくさんありますが、作者は「答えがないということに焦らないでゆっくり考えていってほしい」と時間の必要性を主張します。人間社会には簡単に答えの出せない問題が多いのです。作者は、最後に「答えがない、そのことの自由さに気付いてゆっくりと自分の答えを見つけたらいい」と結論づけられていますが、老若を問わず、現在の日本人に読んで欲しい文章だと思います。人を助けるのは誉められることなのか。私がこれを疑問に思い始めたきっかけは高校二年生のある日、友達と下校中に駅の近くで倒れている女の人を見つけ、助けたときのことだ。そのとき駅員さんは私たちに、「いいことしたなぁ」と言ったのだ。人が倒れているのに、助けるのはあたり前だ。助けないのが普通で助けるのが珍しいことのように日本では思われているのだろうか。ボランティアでも日本では「してあげる」意識がありがちだと思う。日本にこの意識があることが私はきらいだ。どうしてあたり前のことをして誉められるのか。それは今の日本では助けることが一般的になっていない証拠ではないか。それではいけないということを日本人一人一人が気付き、この意識をなくしていかなければならない。私は日本が好きだが、この意識はどうかと思う。だから、私自身も心から日本が好きだといえるように頑張りたい。【講評】人助けをして誉められるとうれしい。これはごくあたり前の感情です。でも国見さんは、この「誉められてあたり前」はおかしいと感じたのです。人助けを「するのがあたり前」だろうと。日本のボランティア元年といわれた阪神淡路大震災から7年、ボランティア活動も少しずつ日本社会に定着してきています。けれど、強者が弱者のために「してあげる」という旧い慈善意識も残っています。自分の気持ちのままに自発的に人を助けるという本来のボランティア意識が、ごく自然なこととして若い世代に根を下ろし始めているのだという希望を、素朴な疑問から綴ったこの文章は私たちに与えてくれました。私の家に遠い国からの訪問者ハナンがやって来た。彼はイスラエルで地雷埋めの仕事をしている。最近になって地雷問題をよく聞くようになって、除去運動が活発になってきていると思う。そんな時に私は目の前で地雷埋め仕事の話を聞いた。私はすごい悲しくなって腹が立って「そんな事したらいけん」と皆の前で言った。ハナンは悲しそうな顔をした。すると私が地雷問題に関心を持っている事を知っている父さんが「でもね、ハナンはそれをせんと家族を守れんのんよ」と言った。私はもっと悲しくなった。自分の大切な人を守りたい心は誰にだってある。そんな事は分かっていたはずなのに、普通に暮らしていては守れない人も居るという事が分かっていなかった。明日の命をも保証されない国でどの様に生きるかなんて私には分からない。しかし人がすべき事は同じだと思う、平和を願う事だ。ハナンはきっとそう願っている。皆の願いと世界の状況が逆になっている事が、私にとってとても悔しい事だ。【講評】現在、世界には一億個もの地雷が埋められており、その被害者は22分に1人の割合で拡大しています。しかし、その一方で、筆者の友人ハナンやその家族にとっては地雷埋めの仕事がなければ生きていけないというもう一つの現実があります。戦火の国が抱える戦争被害と貧困という厳しい現実を知り、憂い悲しむ筆者の気持ちが素直に表現されていました。また、多角的な視野を持てるようになるまで成長している一方で、純粋な心も持ち合わせている高校生の多感な心情には読み手の心を強く引き付ける力があるように思われます。実体顕微鏡を使い、私の通う農芸高校で咲いていたコデマリの花の観察をした。肉眼では四枚の花弁に勲章の形をした萼、白くて小さいとても可愛い花だ。だが、実体顕微鏡を通したコデマリの世界に、思いがけない生物を発見した。肉眼ではとうてい認められなかった小さなアブラムシが住んでいたのだ。体の色は萼と同系色な為、見分けが付かない。小さなその体は、繊細でとても神秘的だ。私の知る世界に突如現れたこのアブラムシは私に小さな声で、「あなただけが生きているんじゃないよ」と何度も囁いているように聞こえた。新たに始まった高校生活にも少しずつ慣れ、あたり前のような日常生活の中、平和な毎日を過ごしていて、テレビや新聞から流れてくるアフガニスタン問題や、イスラエル・パレスチナ問題を、私は他人事のように、関係のない話だと気にも留めなかった。しかし、実体顕微鏡を通し、私の身近にこれほどまでに懸命に命を輝かせている生物がいることを再確認した様に、知識の力を借りて今の平和をもっと考えてみる必要があることに気が付いたのです。私は、アブラムシの世界には小さくて気がつかなかったのと同様に、世界の問題が大きすぎて気が付かなかったのだ。人間は、自分の大きさでしかモノを考えることができない存在なのだ。これからの高校生活で、変幻自在に大きさを変えることのできる知識と広い目を持って、この私の周りにある平和が世界に広がることのできるよう、積極的にさまざまな知識を吸収していきたいと思う。【講評】実体顕微鏡という文明の利器によってコデマリに棲む小さなアブラムシの存在をはじめて知った感激。さらに、今後は知識の力を借りて視野を広げ、今まさに他国で起こっている戦争の現実を知ろうとする探求心。この世のさまざまな物事(出来事)を自分の視野で測ることなく、より大きい視野を得るために、変幻自在な感覚をこれから養っていこうとする筆者の飽くなき向上心は、審査員の私の目には眩しいぐらいに感じました。3テーマ日本のここが好き、ここがきらい県立榛原高等学校(奈良県)山岡歩さん時間が必要府立農芸高等学校(大阪府)宮本如奈さん実体顕微鏡から知った世界の広さ4テーマ平和について県立徳山高等学校(山口県)中村愛さんイスラエルのハナン県立穴吹高等学校(徳島県)国見真由さん人を助けるのは誉められることなのか