17歳からのメッセージReport2002

17歳からのメッセージReport2002 page 9/32

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17歳からのメッセージReport2002

7金賞先日、祖母が僕の幼い頃を収めた何冊かのアルバムを見せてくれた。どの写真も、どこにもつけいる隙のないほど満面の笑みを浮かべている。そのそばには常に母の姿があった。僕は母のことをほとんど憶えていない。母と遊んでいる場面を断片的に思い出すことは出来るのだが何かしら胴体しか映らず、首から上は全く浮かんでこないのだ。多分それは夢か、自ら作りだした”過去“なのだろう。離婚して十二年…、ものごころつく前に母はどこかに行ってしまった。それ以来、僕は”母の愛“を他人に求めるようになった。父の男手一つでここまで育ててくれたたくましさや、祖母の限り無い優しさや、いつも手厚くもてなしてくれる友達の親や、好きな女性の仕草や笑顔、怒った顔に母を重ねていた。しかし、それは”本当の母“ではない単なる自らが作りだした偶像にしかすぎないということに、気付くのはそう遅くはなかった。それからは心にぽっかり穴が空いたような日々が続いている。母に会いたい―。会って…何をするわけでもない。ただ、どうでもいいような話をして少しでも母との時間を過ごしたい…。そう思う今日この頃です。【講評】存在感を伴った人として心の中に母親が存在しない空しさと、母に会いたい寂しさが、作者が心に抱いているに違いない強い感情に比較して、やや淡々とした文調で描かれた秀作です。感情の強烈さが前面に出ていないことで、作者の持つ空しさを却ってしのばせます。愛されて育ち、寂しさを知っている作者はきっととても優しい人でしょう。今年の1月、私の母がなくなりました。「後悔先にたたず」という感じで『あの時…』と思うことがたくさんある。一年間ずっと口をきかないでいた事も…学校に呼ばれた事も…母が悲しんでいるのはわかっていたはずなのにその頃の私は反抗する事しか考えていなくて、でも、私が自傷行為をし始めた時、母は、怒りながら泣いていた。今考えると、体が傷付いているのは私なのに、泣いてくれたのは母で体の痛さよりも大きな心の傷をおったのは母だったと思う。そんな事ばかりしてきた私を母は最期の最期まで『この世で一番かわいい』と言ってくれた。今、私の友達に自傷行為をしている子がいてその子の親もやはり泣いていたという。しかしその子はまだ親の気持ちは理解できないようでその行為は止まらない。今の私だから言える事、それは親に限らず相手の気持ちをほんの少しでも理解しようとする事で、今までとは違う見方ができるという事。また、それによって傷付かずにすむ人がいるかも知れないという事。自分の周りは大切な人であふれています。【講評】本作品は、母親の死を契機に自らの自傷行為を反省し、現在、前向きに生きていることを綴った作品である。自分の思いや考えが素直に記述されており、しかも論旨がハッキリしているために、高校生らしい非常に好感が持てる作品である。また、「自分の周りは大切な人であふれています」というメッセージは、未だ自傷行為を続けている前田さんの友人のみならず、現在、孤独に悩んでいる全国の高校生諸君の耳元に是非とも届けたい言葉である。お父さん、身体の調子はどうですか?昨年の夏、あなたが交通事故に遭ったと聞いた時は、本当にびっくりしました。幸い、命に別状はないということで、どれ程安心したことか。お酒が大好きで、頑固なあなたのことを、私はあまり好きではなかった。偉そうで、わがままで…。でも病室で、あなたを見た時、ひとまわり小さくなった気がして、なんだか寂しかった。退院をやっと迎え、家族みんながうれしく思ってます。お父さん、仕事を無理にしようとしないで。まだ、そんなに動けるわけではないのだから。「居場所がない」そんな事言わないで。あなたのことを、働くための道具なんて、誰も思っていないから。あなたの存在が大切なんだから。これからも、いろんな事があると思います。乗り越えて行こうね。みんなで。みんなで…。【講評】お父さんへの愛情と優しさが素直に表現された作品です。感動しました。「病室で、あなたを見た時、ひとまわり小さくなった気」がしたとき、作者はきっと少し親離れをして、一歩大人になったような気がします。そして、お父さんをかけがえのない一人の人間として見ることができるようになったのかもしれません。作者はきっと、人間は支えあいながら生きていることを知っていて、人と人のつながりを大切にできる人なのでしょうね。理想の家庭…。理想が、そんなものがあるから目の前の現実とのギャップに驚かされ、落胆してしまうのだ。テレビドラマの作られた家庭も、それに近い友人達の家庭も、そんなもの目にしていなければ……初めから知らなければ…。近頃の私はまるで神経質のかたまりだ。母との何気ない会話でもつい強い口調になってしまう。大学受験や人間関係など、心のもやもやを母に押し付けるかのように。母にしてみればなぜきつい口調なのか知る由もなく、母が気分を害するのは言うまでもない。母は若い頃からの病気に悩まされ、私が想像している以上の苦痛を伴っていると思う。それでも毎日仕事に通っている。なので私が小さい頃から、家に帰って親の「おかえり」なんて言葉はめったに聞くことが無かった。でもこの十数年間、”理想の家庭“が私の脳裏から消えたことは一度も無かった。ところが最近、私より両親の帰りが早いことが多くなった。玄関の靴を見て心を弾ませた私は、軽い足取りでリビングへ向かった。そこで私の目に飛び込んできたのは、晩酌を済ませすっかりご機嫌の両親だった。たとえ早く帰った日でも夕食は自分達の分だけ。自分のことは自分でしろ、表情で分かる。両親がお酒をストレス解消法にしていることは知っている。帰宅してあたたかい食事と団らんが待っているなんて想像している自分が甘えすぎなのも分かっている。でも、それでも、放っておかれると、精神的に辛い時は特に、自分の居場所がどこにもないような気がしてたまらない。癒してほしい時だってある。友達や他の誰でもない私の、私だけの家族に。私のきつい口調は心の中の乱れであることに気付いてほしい。―もう子どもじゃないでもまだ大人でもないんだよ―【講評】本作品は、自分の気持ちを家族に気付いてもらえず、家庭内で孤立している様子を綴った作品である。理想の家庭への強い憧れゆえに、受け入れ難い現実の家庭状況、そしてそのために抱く孤独感が丁寧に記述されており、評者には、野山さんの「心の声」以上に「心の叫び」が聞こえてきた。「もう子供じゃないでもまだ大人でもない」17歳の「心の叫び」や「心の中の乱れ」に、我々大人がどれだけ気付き、耳を傾けることができるのか、今、改めて問われているように思われる。2テーマ人とのふれあいの中で・・・長崎市立長崎商業高等学校(長崎県)舛谷優生さん人とのふれあいの中で…長崎市立長崎商業高等学校(長崎県)前田夕佳さん相手の気持ちを考える事長崎市立長崎商業高等学校(長崎県)田眞子さん―――父への手紙大阪市立南高等学校(大阪府)野山夏子さん心の声