17歳からのメッセージReport2003

17歳からのメッセージReport2003 page 9/76

電子ブックを開く

このページは 17歳からのメッセージReport2003 の電子ブックに掲載されている9ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
17歳からのメッセージReport2003

17歳からのメッセージ?[受賞作品集]??金賞?7最近の体調は、どう?この頃は、仕事が忙しくて、私も帰りが遅くてゆっくり話す間も、あまりなくなってしまいましたね。いつも遅くまで働いているけど、少しは自分の体調を気遣って休む時間も、大切にして下さいね。私は、今クラブばかりしているけど、なぜだか知ってる?もちろん優秀な成績を残すことが一番大切だけれど、私はいつか、あなたに頑張っている私の姿を見て、今まで応援してきてよかったって、このクラブに入れてよかったって思ってもらえるようにだよ。だから、そのためにまだまだ頑張るし、まだまだやれるからずっと応援していてね。普段、口にしないけど私はあなたが、大好きです。今はたくさん心配もかけて、手のやける子供だけれど、いつか必ず、あなたが私に注いでくれた愛情を裏切らないように、立派な大人になるね。そして、今まで苦労してきた分、私があなたに楽をさせてあげるね、幸せにしてあげるね、だからいつまでも一緒にいようね。お母さん、ずっとずっと、元気でいてね。私は中学生の頃、町の派遣事業でニュージーランド(NZ)へ行ったことがある。NZでのホームステイなど毎日が楽しかった。しかし、その中で一つ、「鮮やか」というよりは、「刻みこまれた」という形で心に残っている風景がある。ある日、私はホストファミリーと一緒に森の中をドライブしていた。NZの森は、日本では見かけない木がたくさん茂っていて、まるで密林のような雰囲気だった。その時、急に視界がパアッと明るくなった、と同時に私はギョッとした。そこには何もなかった。あるはずのものが全てなくなっていたのだ。目の前に広がる山、山、山、その全てが丸裸で、所々から、もくもくと黒煙があがっている。私は聞いてみた。「何でここには木が一本もないの?」「全部伐採して輸出しているんだよ」「どこに?」「ほとんど日本だね」……。私はショックだった。NZの森を破壊し、こんな風に変えてしまった国、それが私の住む国、日本だとは。その後、私は帰国してテレビを見ていた。一つのCMが流れ出す。「温かみのあるNZの天然木を使用した家?」そのCMには、NZの美しい森も一緒に映し出されていた。私の心の底から、ふつふつと強い感情が湧いてきた。そして心の中で叫んだ。「違う!NZの森はこんな状況じゃない」たくさんの輸入で豊かな暮らしを支えている日本。その裏の現状を、私たちは知らない。ここはパリのルーブル美術館。値が付けられないような名画の前で寝そべってスケッチする子や粘土を持って彫刻の前でせっせと何かを作っている子がたくさんいる。日本とはちょっと違うこの雰囲気、歴史にはぐくまれた文化の厚みを感じた。ヨーロッパ諸国での通貨統一、瞬時に分かる世界の動き、外国の友人とのメール、世界に垣根はなくなっていく、けれどもここには越えられない、越えてはならないものがあるはずだ。文化・宗教・生活習慣を統一したとき、それはすなわち支配を意味する。今世界はまん丸のアトリエの中で大勢の人が、さまざまな色の絵の具を持って一つのキャンバスに絵を描こうとしている。そしてこのグローバルという名画を完成させる上では、三つの約束事がある。一つ目は、色は重なり合うことはあっても決して塗りつぶしてはならないこと。二つ目は、何色にも染まらない部分があっても無理に色を付け周りと調和させなくてもいいこと。そして最後にもう一つ、自分の筆を忘れてこないように。ホタルが好きだ。僕は箕面の山のふもとに住んでいる。六月に入ると、今となっては毎日当たり前のようにこなしているランニングも、一段と楽しくなる。Tシャツが汗でビショビショになるまで家の近所を走り回り、最後に目指す場所は箕面川上流だ。ホタルが飛んでいる。毎年だんだんとホタルの数が減ってきているのを感じ、自然を破壊し続けている人間という生物を憎く思いながら、真っ暗闇の中を飛び回るキレイなホタルを眺めている。僕は最近部活を引退し、生き甲斐をなくしたような脱力感を感じ、特に目標らしいものが見つけられず、進学に向けて勉強はしているが何となく集中できずにはかどらない。毎日同じことの繰り返しなようでダラダラと締まりのない生活を何となく送り、人生は笑った数が多い人が勝ちだという自分の前向きになるための教訓をどこかで避けているのを感じていた。ホタルは、幼虫期がとても長いのだが成虫の命はとても短い。成虫になるまで生き残るのも困難な生物なのだ。その長い困難を乗り越え光り輝くホタルをこうして眺めていると、気持ちが前向きになる。人生の一時一時を精一杯に生きようと心から思える。僕はこれから、誰よりもたくさん笑い、絶対前向きに生きていきたい。ホタルのような、たとえ苦労があっても最後は光り輝ける人生を生きたい。たとえ命が短いと分かっていても。今、アメリカとイラクの戦争が終わりに近づいている。毎日流れる戦争のニュースを見て、祖父は悲しい顔をしている。祖父は太平洋戦争のときシベリアにいた。ロシアが戦争に参戦し、祖父は捕虜になった。終戦となり、祖父は日本に帰ってきた。でも、自分を待ってくれているはずの家族と友人はいなかった。祖父はそれ以上のことは話してくれない。ただ毎年八月十五日の終戦記念日になると、軍服を着た自分と家族が写っている写真を見て一人で泣いている。戦争はいつ終わるのか。『終戦』は果たして戦争の終わりを意味するのだろうか。僕が思うに、祖父の戦争はまだ終わっていない。終わっているのなら祖父は毎年一人で泣くはずがない。僕は、考えてほしい。世界中の人に考えてほしい。戦争はいつ終わるのかを、誰が終わらせるのかを。それは、今のこの瞬間から、僕らが終わらせるんだ。国と国とのうわべだけの付き合いを止めて、本気と本気で付き合うんだ。武力を使わず自然を愛し、心から平和を願うんだ。日本に生まれた僕らは世界で一番、強く、熱く、真剣に、終戦を願い、平和を愛す。僕の父は長年務めてきた仕事を今終えようとしている。とても仕事熱心な父で、家で疲れた顔を見せることも何度かあった。そんな父が今、今まで仕事で積み上げてきたこと全てに終止符を打とうとしている。僕の、心の底から「長年お疲れ様でした」と伝えたい気持ちとは裏腹に、父は複雑な表情を浮かべていた。不思議に思った。肩書きを失うことが怖いのだろうか……。そんな疑問も抱いた。しかし今改めて考えてみると、自分にもその複雑な思いに共感グローバル社会に生きる私京都府立嵯峨野高等学校(京都府)石田すみれさん刻まれた風景大阪朝鮮高級学校(大阪府)尹愛梨さんあなたに…佐賀清和高等学校(佐賀県)原陽子さん名画の条件大阪府立桜塚高等学校(大阪府)上浦正貴さんホタル自由課題兵庫県立姫路東高等学校(兵庫県)黒河拓也さん終戦岡山県立鴨方高等学校(岡山県)仙田倫太郎さん父と僕の場合