17歳からのメッセージReport2004

17歳からのメッセージReport2004 page 5/40

電子ブックを開く

このページは 17歳からのメッセージReport2004 の電子ブックに掲載されている5ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
17歳からのメッセージReport2004

17歳からのメッセージ[受賞作品集]??審査講評?少年犯罪が多発し、「17歳の心の闇」が問題視された時期がありました。しかし最近の研究では、少年凶悪犯罪の件数は長期的に見れば激減しており、少年犯罪の凶悪化や低年齢化などと一般にいわれることも、かなりの程度まで神話にすぎないことが明らかになっています。逆にいえば、「17歳の心の闇」というイメージは、大人の側の不安を投影したものにすぎず、世代間の対話の欠如が生みだしたものなのかもしれません。今年で4回目となる「17歳からのメッセージ」が、そうした対話の場として着実に発展していることを、これに携わる者の一人として嬉しく思います。?「今までの自分、これからの自分」というテーマには、今年も多数の作品が寄せられました。全体として、自分を中心に家族や友人など身近な世界に目を向けた作品が多く、重苦しい日常を生きる若者たちの不安を実感しました。しかしそのなかでも、身の周りの小さな出来事をきっかけにして、自分自身をあらためて見つめなおし、新たな一歩を踏みだしていく姿を描いたものが、とくに心に残りました。受賞作品には、そうした成長の軌跡が真摯かつ丹念につづられています。?わずか400字あまりの文章に「自分」を凝縮することは、容易なことではありません。閉塞感を強める今の時代、新たな自分を思い描くことさえ困難になっているのかもしれません。それにもかかわらず、自分自身とそれを取り囲む世界を直視し、明日への希望や夢を探ろうとする姿勢には、大きな感動を覚えます。「17歳からのメッセージ」が、新たな自分に向けての一歩となることを期待しています。?「今までの自分、これからの自分」講評?田野大輔?●人間科学部?●担当科目?社会学入門/現代社会論/?メディア社会論/人間科学研究法Ⅱ?テーマ?「人とのふれあい」という言葉で、皆さんが思い浮かべる「人」とは誰でしょうか?今回、多くの方が親・兄弟・祖父母、そして学校の仲間のことを取り上げてくれました。高校生になって、人に対して今までとは違う見方ができるようになった時、その自分の変化に誰もが戸惑い、うまく対応できないもどかしさを感じます。それは行きずりの人の優しさに気付き、意外な一面を見せた友達を想い、また薄っぺらな付き合いに苛立つ気持ちを書いてくれた方も同じだと思います。それぞれのふれあいへの真摯さが伝わってきました。?年老いた祖父母に優しい言葉をかけてあげたいのに、と嘆いた人、がんばって働く母親を「守って上げたい人No1」と感じた人、地元の人との挨拶にほっとする人。なかでも、「絶対口に出しては言えないけれど」「こんなこと書いてるとは夢にも思わないだろうな」と書いてくれた、たくさんの皆さん。でも、あなたの感情は言葉にしたことで、あなたの中に根付いています。そのことがあなた自身を少しずつでも変えていきます。大丈夫、きっと伝わります。?ただ最後に、考えてみてください。私達の周りにいる「人」は、今ふれあっている人だけでしょうか??遠く離れた場所で、まだふれあわない、もしかしたら一生会うことのない「人」もいます。身近な人だけでなく、遠い世界の人とのふれあいをも夢想する、そんな考えの広がりを持つこともまた、ふれあうこと、のひとつではないでしょうか。?「人とのふれあいの中で…」講評?近藤直美?●人間科学部?●担当科目?文学入門/日本の文学/日本文化論/?日本語表現/人間科学研究法Ⅰ/?日本文学Ⅰ?テーマ?働く、ということは、高校生のみなさんにとっては実感のわきにくい問題のようです。しかし、多くの作品が、自らのアルバイトの経験や、インターンシップでの体験などをふまえて、働く、ということのきびしさやたいせつさについて語ってくれました。また、自分の父母や兄姉の姿を見て、そこから働く、ということの意味を考えるという作品もありました。とくに、金賞をうけた大野桐子さんの作品のように、祖父母の働く姿をとおして、働くことの尊さを実感するという作品に、印象深いものがありました。?働く、とは、まずお金を稼ぐことだと、多くの作品は書いています。しかし、それだけでなく、多くの人が、働く、とは、人間としての自立と成長にとってなによりもたいせつなことだと考えています。そして、人に役立つこと、人に喜ばれること、社会に貢献することが、働くということの本質であるととらえています。?職業選択への心構えがまだできていないという感じの人が多かったのですが、なかには看護師、保育士、介護福祉士、あるいはダンサー、パティシエなど、将来への夢をもち、その実現にむけて着々と努力をかさねているという人もいます。ただ、働く、ということのイメージのほとんどが、サービス業や、いわゆる事務系のサラリーマンであり、農林漁業や「物づくり」を想定した労働のイメージがほとんど欠けていた点は、評者としてはやや気がかりな点でした。?いずれにせよ、働く、ということに正面からむきあい、真剣に考えぬいた作品をおよせいただいたみなさんに心から感謝いたします。?「働く、ということ」講評?重森曉?●経済学部(京都大学経済学博士)?●担当科目?地方自治論/地方財政論?テーマ?白紙の原稿用紙に自分自身の思いを綴る。いざ原稿用紙を目前に手は沈黙・・・。「何を書いたらええんかな?」「格好良く立派な文章書かなあかん」って。大人でも沈黙することがあります。いや、もしかすると大人の方が沈黙するのかもしれません。?「なぜ戦争は終わらない?」「わが町の環境は大丈夫?」「あの子は私のことをどう思っているのだろう?」「素敵な家族がいてくれて私は幸せ」など、高校生が真直ぐな視線で見つめている10679もの世界を垣間見たような気がしました。今回グランプリに輝いた”トマト“という戦争をテーマにした作品は、にんげんとトマトの類似性を巧みに使いながら読み手の想像力を掻き立てる好作品でした。作者にそのような意図があったかどうかは別として、原稿用紙に敷き詰められた字数以上のメッセージをそこに感じることができました。他にも、イラク人質事件や北朝鮮拉致問題についてとりあげた作品が数多くあり、国際情勢に対するいまの高校生の関心の高さが窺えます。?もっとも自分の切実な思いが込められていたのは、社会と自分との距離について考える作品でした。「普通ってなんだろう?」「いまの自分は偽りの自分」「かつてのイジメがいま自分に返ってきた」「大人であることを証明したい」「自分は何のために存在しているのだろう?」これらのメッセージは”ほかの誰かに伝えたくて“というよりむしろ”自分自身に伝えたくて“そこに書き記しているメッセージのように感じました。時折悩みながら前へ進み、暫くしたらまた悩む・・・。このプロセスを経て、今回メッセージを寄せてくれた高校生の皆さんも成長していくのではないでしょうか。?「自由課題」講評?藤原忠毅?●経済学部?●担当科目?国際経済論/外国書講読(英語)テーマ?3