17歳からのメッセージReport2004

17歳からのメッセージReport2004 page 9/40

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17歳からのメッセージReport2004

17歳からのメッセージ[受賞作品集]??金賞?7の商店街の中に私の祖父母が経営しているお店がある。小さい頃からずっと親しんできたこの商店街の看板は小さい頃から青と黄色だった。ところが最近その色が茶色に変わってしまい、私はその色を見るたびに悲しい思いを抱いている。だから私が働くようになったらお金を貯め、この看板の色を元に戻したい。これが私の密かな願いである。祖父母の店は古くから続く刃物を取り扱っている店である。包丁を研ぐ祖父、話上手で商売上手な祖母、この2人の働く姿は私の大好きな2人の姿である。すごく生き生きと働いている感じがするし、働くことが長生きの秘訣なのかとも思う。しかし以前祖母に昔の話を聞く機会があったが、昔は育児と仕事の両立に大変苦労していたらしい。今私は将来どのような職業に就くか明確には決めていない。きっとこの先色々な転機もあるだろう。しかし、どのような職種であろうとも、働くということは苦労があると思う。けれどその苦労を乗り越え、祖父母のように生き生きと働くことのできる女性になりたいと思う。そして、いつになるかわからないけれど、私の働いてきた証として、看板の色を青と黄色に戻したいと思う。仕事から帰ってくる父は、いつも不機嫌でひどく無口だ。私はそんな父が少しも理解できず、むしろ逆に私がいらだって父に大声を上げた日もあった。連休に、父は私に「バイトやらへん?」と聞いた。大工をしている父は、こまごました仕事を私にまかせておこづかいをくれると言う。私は手伝うことにした。5月の太陽は元気に私と父から汗をしぼった。私は父の指示に従い父をサポートした。父は大きな積み木を組み立てるかのように、ガレージを素早く組み立ててゆく。仕上げに父はシャッターを取り付けた。80キロのシャッターを肩に担ぐ父の額に深い皺が浮かんでいた。一日だけのアルバイトは私に多くのことを残してくれた。アルバイト代も、体の疲れも、そして父の深く濃い額の皺の意味も。皺は私に、仕事帰りの父の態度の理由を十分すぎるほど伝えてくれた。働く、ということ。それは深く何かを体にしみ込ませてゆくことのように思える。私はそれが「技術」などではなく、「苦労」なのだということを知らされた。パスカルは「人間は考える葦である」と言った。日本は古来、葦が豊かで稲穂が実る「豊葦原瑞穂国」と呼ばれていた。しかし、21世紀になった今日では「考える葦」はほとんど姿を消し、「瑞穂国」と称えられた気高さはもう感じられない。いったい何が変わったのだろう。かつて、勤勉な日本人は一生懸命働き、税を納め、皆で社会を支え、発展させてきた。働くことを通して生きる目的や意義を考え、真摯に働くことを快しとしていた。子供たちは社会の手厚い庇護の中で成長し、その恩恵に報いるべく、一層熱心に働いた。こうした連鎖が「働くこと=社会に恩返しすること」という構図を作りあげたのだ。しかし、ここ数年におけるこの構図の崩壊は目に余るものがある。若者を中心とした個人主義がはびこる中で、働くことは収入を得るための手段になり下がってしまった。崇高な理想を抱いて働く意味などなくなってしまったのか。否、そんなことはない。ただ原点に戻って考え直せばいいのである。次代を担う私達が変わることで、きっと世の中は変えられるはずだ。そして再び恩返しをしたくなるような社会にすればいい。私達が率先して「考える葦」となり、働くことの素晴らしさを認識・実践すれば、社会は動く。再び「豊葦原瑞穂国」と呼ばれる日を迎えるには、新しい風を呼ぶ私達の若い力が必要不可欠なのである。「働く」ことは最終的な私の目標だ。最終的な目標というと、遠い未来をあらわしているように聞こえると思う。私は、全く眼が見えないから、一般の人よりも働くための準備が必要で、時間がかかる。また、全く目の見えない人たちがつける職業は限られている。希望する職業があって、実際にその職業についても仕事が難しかったり、生活を支えるほどのお金が手に入らなかったりするから、なかなか職業を選べない。新しいジャンルへの進出もたくさんの人が考えているのだが、それも視覚障害者たちのかなりの努力と周りの人たちの理解が必要だ。しかし私は、どんなに時間がかかっても、働きたい。たくさんの人の相談にのって、力になりたい。働けば、自分の生活を支えられるし、生き甲斐にもなるからだ。現実に、弁護士、幼稚園の先生など新しいジャンルを開拓し、活躍している人たちがいる。私は開拓者たちの共通点は、周りの人たちを元気付けるようなパワーと、強い意志の持ち主だと思う。そしてなによりも皆さんそれぞれに輝いている。「働く」ということは人間の精神的、社会的、経済的自立と、社会への貢献の証拠だ。だから今、私は輝いた働く人を目指したい。言葉は何でも縛りつけてしまう。自分の考えや他人の思いなど、ちょっとした言葉で簡単に縛りつける。どんなに小さなことでも、大きな鎖と化してしまう。時に言葉は、強力な刃となって人を傷つける。それは時に、一生治らない爪痕を残して消え去る魔物となる。言葉を刃とするなら心は盾だろう。それも、とてつもなく厚い鉄の盾から紙と同じくらいの厚さのガラスの盾まである。言葉の刃は最も強力な「見えない刃」であると同時に、最も弱く脆い刃でもある。一度使ったら折れて二つになり、一つはどこかに消え、もう一つは使った相手に一生残るか、その折れた刃も消えてしまう。刃は無限にあるので、いくらでも交換できる。しかし、盾はそうはいかない。盾は人によって強さもちがえば、傷つきやすさもちがう。例えば、相手に悪口を言う。この悪口が刃になり、相手を切りつける。このとき、相手の盾はどうなるか。もし鉄のような盾の持ち主なら、刃を弾くか、壊してしまうだろう。逆に、同じ鉄の盾でも、錆びた盾なら砕けやすいだろう。つまり、心が傷つきやすいのだ。言葉はそれだけ強い力を持っている。しかし、傷つけるばかりではない。「ありがとう」といった、ごく当り前の言葉で、何よりも強い「言葉の鎖」を壊してしまうこともある。言葉の力は、本当に強いのである。先生の帰りのあいさつが言い終わらない間に、私は誰よりも早くイスに坐る。帰る支度もしない。そんな日が時々ある。『早くみんな帰ってよ』頬づえをついてそんなことを考えている。教室から誰もいなくなるまで自分の席でため息をつきながら、私はじっと待っている。その理由は、誰もいなくなった教室を掃除するためだ。大して教室が汚れているわけでも、誰かに頼まれたわけでもないけれど、私は一人残って掃除をする。掃除をする時、私はその日一日の自分の言動を振り返る。大体は後悔するようなことばかりだ。あの時、あんなこと言うんじゃ三重県立宇治山田高等学校(三重県)中村紀后子さん父の額近畿大学附属和歌山高等学校(和歌山県)森有沙さん『豊葦原瑞穂国とよあしはらのみずほのくに』島根県立盲学校高等部(島根県)尾島栄子さん私の目標自由課題?テーマ?新潟県立小出高等学校(新潟県)小山佳朗さん言葉の力静岡県立気賀高等学校(静岡県)中村和世さん誰もいない教室を…