17歳からのメッセージReport2010

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概要:
17歳からのメッセージReport2010

このテーマでは、自分を変えていきたいという今後に向けた決意、友達・先生・親など身の回りの他者との関わりの中で得た自分を変えるきっかけ、この2点に関する応募作品が多く寄せられました。このテーマは「自分」が軸となるキーワードの1つですが、自分の内面と向き合うというだけでなく、「人を理解したい、自分を人に理解してもらいたい」という真剣な思いを表現した応募作品が多く、大人に向かって変化をとげつつある成長の過程をみることができました。高校生が周りからいかに多くのことを感じ取りながら日々生活しているか、昔も今も変わらない感受性の強さやひたむきさといったものを、作品の審査を通じて再認識させて頂きました。中でも、グランプリや金賞の受賞作品では共通して、自分にとっての転換点となった出来事と、その出来事に接したことによる筆者の気持ちや考えの変化が、どちらも具体的かつ分かりやすく、過程として描き出されていることが大きな魅力の1つのように思います。このことによって、作品を読んだ人に、筆者が受けたインパクト(衝撃)の大きさが伝わるような、伝達する力の強い作品となっているのではないかと思います。さらに、これらの受賞作品では、「今までの自分」を「これからの自分」にしていくためのタイプの異なる行為が実践されています。グランプリ作品に選ばれた『小さい自分(匿名希望)』にみられる「他者と自分の行動対比からの気付き」、金賞に選ばれた石田祥大さんの『素手・素足のトイレ掃除』にみられる「清掃を通じた意識変革」、金賞に選ばれた戸川樹理奈さんの『自分ノート』にみられる「人および自分自身との対話のプロセス」は、いずれもそのまま「これからの自分」に向けて第一歩を踏み出したいと思っている人にとってのヒントになります。応募作品の中で、不安や悩みを抱えた高校生の方々にも出会いましたが、この受賞作品集を読んで何かきっかけを掴んで頂けたらと願います。本年度も非常に多くの作品が寄せられたが、「人とつながる・社会とつながる」のテーマでは主に2つの傾向が見受けられた。一方で、ある種の葛藤が中心に描かれた「親子」、「兄弟」、「友達」とのつながり、他方で、感謝の気持ちが前面に出された「教師と生徒」、「近所の人々」とのつながりである。「親子」のつながりでよく見られたのは、日常の親の言動に対して生徒たちの理解が深まる過程を描いた作品であった。普段は面倒くさく、あるいはやや不快に思われた親の言動が、生徒たちが何らかの経験をすることで、その表面上の厳しさの下に隠れた親の愛情や親子のつながりを実感していく記述に、感謝と照れの織り交ざった感情が垣間見えた。「兄弟」のつながりでは弟や妹に言及した作品が多かった。年齢がさほど変わらないにもかかわらず、お兄ちゃん、お姉ちゃんとして振る舞わなければならない我慢と、彼らに対する優しい愛情との葛藤が若々しく描かれていた。「友達」とのつながりは同級生との喧嘩が主なテーマであった。本当は仲の良い友達であるのに、些細なことで喧嘩して疎遠になってしまったとき、過去の写真や友達からのプレゼントを見て改めてつながりを実感し、「勇気を出して謝りたい」という内容で結ばれている作品が多かった。その後、そのつながりが修復されたかはさておき、この種の作品でも意地と後悔とが交差する、若者らしい複雑な感情が読み取れた。ところが、「教師と生徒」や「近所の人々」とのつながりを描いた作品では、感謝の気持ちにあふれた作品が多かった。たとえば前者の場合、中学校卒業式での先生の心温まる祝辞や同年代の友人には打ち明けづらい相談に乗ってくれたことなどに対する感謝が述べられていた。また後者の場合、小学生の時に登下校を見守ってくれた通学路のおじいちゃんおばあちゃん、あまり面識がないのに積極的に挨拶してくれた年配者に対する感謝の気持ちが綴られていた。こうした違いが生じるのは、彼らとのつながりが血縁関係ほど近しくなく、また年齢も離れているためだろうか。ほかにも、留学経験のある生徒から「国家間」のつながりに言及した作品や、インターネットを利用した「サイバースペース」でのつながりの是非を論じた作品も少なくなかった。このように、本年度も人や社会とのつながりについてたくさんのメッセージが寄せられたことに、この場を借りて心から感謝したい。自由課題の作品はどれも、感受性の高い青春の心の動きや、物事をまっすぐに受けとめる純粋さが伝わってくるものでした。毎年作品を読むたびに、みなさんが大人へと成長していく過程が、周りへの優しい眼差し、新しいものの見方、不安や悩みの増大とそれに打ち勝つ心の成長として綴られている作品を読み、何か安心する気持ちを感じています。若いみなさんもそれぞれに乗り越えねばならない課題を持っています。車いすの生活をしながら、自分「一人でやってみたい気持ち」を「親離れ」と題して表現してくれた作品など、障害を持ちながらも、それを乗り越えていこうとしている意志を語った作品には誰もが声援を送りたくなります。自分や家族や友人の闘病の中から自分の人生観を強く鍛えていった姿には、これからの健康を祈る思いです。「心の中でさ迷う思い。まるで月の光も届かない海底にいるよう」な大人への不安の中から、「海面へのぼりはじめた」自分の成長や、友人の一言で「自分の気持ちに素直でいいんだ。思ったことを口にだしても大丈夫なんだと安心できた」変化など、若いみなさんの大切な心の歩みでしょう。「私は学校がキライだ」というあなたは、「頑張って早く卒業しよう」というだけではなく、大勢の同じ思いの人たちのためにも、「学校がキライ」の理由や原因、あなたも楽しくなれる対応策など、もっと深く考えてほしい。「学校がキライな人」の個性にあった、別の道があるかもしれない。ある作品には、一番幸せを感じたのは、貧しかった時にアイスモナカを一つ買ってもらい、母と分け合って食べたほんの「ささやかな贅沢」を楽しんだときだったと書いてありました。自分の経験にもとづいて表現し、貧しくとも一緒に心からつながり合って楽しく過ごす大切さを教えてくれた作品です。自分の朗読を聞いて、厳しく冷たい視線で「お前、何語でよんでたんだ?」といって席を立ってしまった祖父の言葉の真意を、正しい言葉使いの大切さを教わった後になってはじめて気づいたという作品を読んだとき、私は娘との似たような会話の一幕を思い出しました。作品の多くは、父、母、あるいは祖父、祖母を見つめる中から、しっかり自分を見つめ直していく姿を表現していました。自分の内面の成長の証としての新しい発見、両親や友人への思い、自分の町や出来事に対する成長した理解を伝えようとする作品の中に、文章表現の点でも優れた作品がありました。自分の思いを表現するには、思いをそのまま書くだけでなく、何度も読み返して言葉を選び、つながりを工夫して、伝わり方を仕上げることが大切ですね。みなさんの心の歩みの記録としても、その時々の思いを書き残していってください。審査講評今までの自分、これからの自分1テーマ人とつながる・社会とつながる2テーマ今、伝えたいこと(自由課題)3テーマ小松亜紀子◎人間科学部◎担当科目消費者行動論/社会調査論三島重顕◎経営学部◎担当科目経営管理論Ⅰ・Ⅱ山田文明◎経営学部◎担当科目情報処理概論/経営情報実習17歳からのメッセージ??