17歳からのメッセージReport2010

17歳からのメッセージReport2010 page 6/44

電子ブックを開く

このページは 17歳からのメッセージReport2010 の電子ブックに掲載されている6ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
17歳からのメッセージReport2010

その日、私は学校であったささいな出来事からとてもイライラしていた。家に帰ると、学校では抑えていた怒りが爆発して、扉を乱暴に閉めたり、母に八つ当たりしたりと、とにかく荒れていた。夕方になってもその怒りは収まらなかった。しばらくすると父が帰ってきた。父は暗い顔をして疲れきっていて、母が何かあったのかと尋ねると、父は「部下を叱ってきた。」と答えた。その話を聞いて私の中にあった怒りや不満が一気に消えていった。父はバスの運転手をしている。その日、父の部下が運転中に事故を起こし、相手に大ケガをさせてしまったらしい。「一歩間違えたら死んでいた。」と言って、父は部下を怒って帰ってきたのだ。その時、私は何だか父をとても遠くに感じていた。他人を怒って気分を害している父とささいな事で怒って周りに八つ当たりしている自分。私は、自分のことをとても小さく感じ、まだまだ子どもなんだとすごく情けない気持ちになった。私はあと数年もしたら父と同じ社会人になる。その時私は今よりも大人になっているだろうか、成長しているだろうか。できることなら、小さなことで怒るよりも他人を怒って落ち込むことができる、そんな大人になりたいと思った。私は、中学校卒業間際に友達とケンカをした。理由は今考えれば小さなどうでもいいこと。けれど、互いに何かが気に食わずギクシャクとした関係になってしまった。すぐに謝って前の一緒に笑って泣けるような仲に戻りたかったが、謝る、という小さな勇気がその時の私にはなかった。そしてずるずる引きずったまま卒業式の朝になってしまった。ふと、もう家を出ようと自分の部屋のドアノブに手をかけたとき、一瞬壁のリボンが視界に入った。このリボンはそのケンカした友達からの誕生日プレゼントの包装紙についていたものだった。飾っていたのはプレゼントがうれしかったのも一つあるが、それ以上に、もらったという事実が素直にうれしかったからだ。しばらく直していなかったので蝶々結びにしていたリボンはほどけかけていた。すっと端を引いてほどいて直す。するとゆがんだ蝶々結びになってしまったのでまたほどいて直す。何度か繰り返してきれいに整った蝶々結びが出来たとき、私は、はっと気が付いた。私と友達の関係はこの蝶々結びのリボンと同じではないか。作るのは難しい上に時間がかかる。リボンの端を引くのと同じように何かの引き金を引くと一瞬で崩れてしまう。だが、時間をかけてきれいに丈夫なものをつくると中々ほどけない。私は、この数分でこれからの友達との接し方を学び、ケンカした友達に謝るための小さな勇気をもらったと思う。今までの自分、これからの自分1テーマ人とつながる・社会とつながる2テーマグランプリ4点匿名希望滋賀県小さい自分福永薫さん愛媛大学附属高等学校(愛媛県)私と人と蝶々結び0517歳からのメッセージ17歳からのメッセージグランプリ学生審査員賞金賞銀賞奨励賞学校特別賞応募参加高校一覧