17歳からのメッセージReport2012

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6 17歳からのメッセージグランプリ学生審査員賞金賞銀賞奨励賞学校特別賞応募参加高校一覧17歳からのメッセージ学生審査員賞今、これだけは言いたい!(自由課題)テーマテーマ3大分県立佐伯鶴城高等学校(大分県)原田可奈子さん父と軽トラ「あっ、雨。」窓の外からはポツポツと雨の落ちる音が聞こえ始めた。曇った空とは裏腹に私の心は少し晴れる。なぜならいつもは自転車で約二十分かけて帰る家路が〝車の迎え?になるからだ。決して、高級車が迎えに来るわけじゃない。でも、ある意味世界に一台しかない車。「ヤ原田商店」とでかでかと書かれた軽トラだ。今でこそ軽トラだと自転車も積んで帰れるから便利だと思う。しかし、確か私がまだ小学生の頃、この車で迎えに来られるのがイヤでイヤでたまらなかった。軽トラで待つ父のもとに行くのが何となく恥ずかしかった。「何でコレで来るん、恥ずかしいけぇイヤだ。」不機嫌にそう言った私は、次の瞬間、激しく父に叱られた。「うるせぇ、そんなにイヤなら歩いて帰れ。父ちゃんの仕事が恥ずかしいんか。」私はすぐに謝った。同時にすごく反省した。父の仕事を恥じた事は一度もなかった。まだ幼かった私だが、そんな事はもう二度と言わないと決めた。なぜなら父と父の仕事は私の自慢だから。放課後、いつものように父に電話をする。「雨降りだしたんやけど、迎えに来て。」しばらくしてから、いつものように「ヤ原田商店」の軽トラで待つ父のもとへ駆け寄り、助手席へ乗り込んだ。グランプリ作品にも選ばれました。学生審査員賞学生審査員賞1作品今までの自分、これからの自分テーマテーマ1佐賀県立佐賀西高等学校(佐賀県)渡辺美咲さん「未来の私」宛てのメール作品は、P.5グランプリに掲載しています。●学生審査員講評●私たちの世代は「ゆとり」と呼ばれる時代を生きてきた。少し弱さを見せれば甘えだと言われて強く生きざるを得ない、そんな状況に置かれている。しかし、いつの時代でも十七歳前後の少年少女が複雑な心を持っていて悩みが絶えないことは変わらない。この作品はそんな狭苦しい今の時代に生きる人々の気持ちを代弁してくれている作品ではないかと思う。狭苦しさを感じているのは私たちの世代だけでなく、社会に出て働いている大人も同じはずだ。一人ではどうしようもないけれど誰に話していいのかわからない、それでも乗り越えていかなければならない。そんな悩みを放り投げてただ忘れてしまうのではなく、問題に対して向き合っている姿勢もこの作品の良さだ。そして携帯電話を利用するという発想もこの時代ならではのものである。誰かに相談するのが難しいならば最初は携帯電話の向こう側にいる自分自身に、そこから誰かに話すことで少しでも気が楽になるのだと気づけば誰かに相談する勇気も湧くのではないだろうか。どうしてよいかわからない悩みに出会ったときに逃げるのではなく、この作者のように問題と向き合って成長の糧としてほしい。そして携帯電話の向こうに話す自分から誰かを頼ることができる自分に成長してほしい。そんな願いも込めてこの賞を贈りたい。人間科学部2年生田中瑞穂さんグランプリ