17歳からのメッセージReport2016

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17歳からのメッセージ1417歳からのメッセージグランプリ学生審査員賞金賞銀賞奨励賞学校特別賞応募参加高校一覧変わりゆく世界の中で京都教育大学附属高等学校(京都府)小池朋佳さん電車にて、読んでいた本から目を離し顔を上げると、スマホの操作に夢中になっている人のあまりの多さに、いつも少し驚く。私は想像する。もしもこの世にスマホがなかったなら、この人たちは一体今何をしていたのだろうと。彼らは、読書をしたかもしれないし、眠りに落ちて夢をみたかもしれない。或いは、考え事に思いを巡らせたかもしれない。スマホに夢中になることよりも、それらの方が価値ある行為だと定義づけることはできない。しかし電車内での現実を、寂しいと思う自分は確かにここにいる。スマホ世代ど真ん中の私だが、この感覚を維持している自分に、僅わずかな喜びを感じている。様々なことやモノは目まぐるしく変わり、人はそのあとをついていく。その時私たちは、その変化に全てを委ねてしまうのではなく、持ち続けてきた感覚や大切にしてきたものを、心に留めておくべきだと私は思う。これは非難ではない。ただ、スマホに夢中になる時間の裏で、他の多くの可能性、つまりは、本の中での感動や、夢の中での驚き、そして突然のひらめきといったものを得る可能性が、打ち消されているのかもしれないことに気付かずにいるのは、どこか人間らしさを失ってしまっているようで、どうしようもなく寂しいのだ。満員の電車の中、名前も知らない人たちに、顔を上げてほしいなあと願う。広がる世界京都市立塔南高等学校(京都府)松本仁さん「小川のせせらぎにも、草の葉のそよぎにも、耳を傾ければそこに音楽がある。」これは英国の詩人ジョージ・ゴードン・バイロンの残した言葉だ。みなさんは音楽に心をうごかされたことはないだろうか。音楽を聴いて元気が出た、涙があふれたという人も少なくしれない。しかし、人生の節目などの書類や大切な人へ送る手紙を手書きで行うときに字は絶対に美しく書かれていた方が良いはずだ。だからこそ、私は自分の持っている書道の力を生かし情報化社会で育つ高校生に字を書く楽しさを教えていきたい。手書きだからこそ通じる心の会話は、今の世界に足りない真心をきっと補ってくれるはずだ。これから何十年先どんな便利な世の中になっても、手書きの良さを忘れない人を育てられる教員に私はなる。変化愛知県立半田農業高等学校(愛知県)滝本晟也さんあれ、俺って何のために生きているんだろう。ふと、そう思った。何でこんなことを思ったんだ?自問自答してみる。今日、先生に怒られたからか。部活が上手くいってなくて、落ち込んでるからか。もう、そんなことどうだっていい。ただ怒られただけなら心の中で先生の悪口を言っておしまいなのかもしれない。ただ部活が上手くいかないだけならもっと頑張って練習してやる!そう思ってまた努力すればいいのかもしれない。少し前の自分だったなら……。最近、自分自身が変わったと思う。周りからは何も言われない。気付いてないのか、気付いても言わないのか、もしかしたら自分の上辺の心が、変わった自分を深く深くへと追いやっているのか。分からない。分からない。分からない!何もかもが分からない!そんな感情が心の中で渦巻いて全てを嫌にさせる。巨大な蛇と化した負の感情が、以前の自分を締めつける。きつくきつく締めつける。光を蝕む影となりて。闇の中で、もう消えてしまいそうなほど朧げな灯火が、助けてくれと言うように弱々しく揺らめいている。終わりを告げるいつもの音が響き、私は蚊柱を浴びながら帰って行く。これが私の日常だ。あまりにも平凡で、ついパラレルワールドを妄想してしまう。スズメのさえずりで目覚めた私は、朝からステーキを食べる。歯は常に清潔を保てるよう特殊な加工がされており磨く必要がない。そして、ゆずの香りがする石けんで顔を洗う。学校に行くため外に出ると、色取り取りのチューリップがそよ風に揺られ、私の目に飛び込んでくる。昼ごはんのサンドイッチを持ってタクシーに乗ったら、あっという間に校門だ。居眠りOKの授業を難なくこなして、またタクシーに乗って帰る。晩ごはんは私の大好きな寿司を食べる。そんな最高なシチュエーション。でも、これが毎日だったらつまらない。私は普通の中から最高を見つけることが好きなのだ。そう考えると未来が楽しくなる。なにもないことがありがたく思える。帰り道、今日は自転車をこぐスピードがいつもより速い。なぜなら、今晩のごはんが久しぶりの寿司だからだ。手書きの良さを伝えたい愛知県立木曽川高等学校(愛知県)原千尋さん今、私には夢がある。高校の書道の教員になることだ。私は小学四年から書道教室に通っている。その教室は週三回、四時間正座でひたすら筆で字を書き、夏休みの課題やコンクール前になると数え切れない程書き直しをさせられ、とても厳しい教室だった。しかし私はその厳しさがなんとなく好きで、自然と上手くなる字を学校で褒められることも嬉しかった。なにより、毛筆の一度書いたら直すことのできない一発勝負という魅力に惹かれた。毛筆は、小学三年から始まる。しかし、小中は国語の授業の中で、数時間教科書を写すだけだった。高校生になると選択者だけが授業を受け、作品を作るための印なども作成し、歴史や様々な書の違いを学んだり本格的だった。今、スマートフォンが普及し持っていて当たり前の世界の中で、字を書く楽しさや美しく書く気持ち良さが忘れられている。普段は書くよりも機械で文字を打つ方が楽なのかも