17歳からのメッセージReport2016

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17歳からのメッセージ2917歳からのメッセージグランプリ学生審査員賞金賞銀賞奨励賞学校特別賞応募参加高校一覧当たり前じゃない毎日山梨県立吉田高等学校(山梨県)勝俣舞さん私の祖母は六十歳の時、くも膜下出血で倒れた。三週間祖母は目を覚まさなかった。幸いなことに命は助かったものの様々な後遺症が残った。はじめはものを持つことも歩くこともできなかった。私はそんな祖母の姿を見てその時とても悲しくなった。私の両親は共働きで、幼い頃に私の面倒を見てくれたのは祖母だったからだ。私が手伝いをするとたくさんほめてくれて、何か悪いことをすると厳しく叱ってくれた。私はそんな祖母が大好きだ。だからこそ病気で倒れ、救急車で運ばれた時の姿は、今でも目に焼きついている。この体験から日常とは突然大きく変わってしまうことを学んだ。そして何気なく生活している毎日、これは当たり前にあるものではないと実感した。今年熊本で大きな震災が起きた。五年前には東北を大津波が襲った。突然水道の蛇口をひねっても水がでなくなり、家が倒壊したり、ましてや家族が亡くなってしまう。これは誰にでも起こりうることであるのだ。そう思うと時間を大切に過ごさなければならないと思う。私は時々すべてのことが辛くなり現実から逃げたくなる。これからはそんな時ほど前を向いてしっかり考えて行動したい。また学校に通えること、食事が三食とれること、帰る家があること、たくさんの友人がいることといった当たり前のことではないことを実感し、このことに感謝したい。「おかえり」北杜市立甲陵高等学校(山梨県)鈴木志歩さん「クソ兄貴」が大学受験に合格した。私は兄が家を出ることを大いに喜んだ。合格発表から一ヵ月、兄は静かに家を出ていった。兄のいなくなったある日、小さなサンダルを見つけた。玄関を掃除している時のことだ。幼い頃、一番のお気に入りにしていたピンク色のサンダルである。片方にだけやけに泥が付いている。一瞬にして遠い昔の記憶が鮮やかに蘇った。祖父の目を盗み川遊びをした時、右足のサンダルだけ流されたのだ。隣にいた兄は、泣いてる私を置いて全力で流されたサンダルを追いかけた。数分後、ピンク色のサンダルを片手に兄が戻った。裸足で川を走った兄の爪は全て剥がれ落ちて、血が流れ出ていた。もう十年も前の話だ。それなのに、その泥を見て涙を堪えきれなかった。私は兄が嫌いだ。不器用で間が悪くイケメンでもなければ、運動神経だって良くない。もっと自慢の「おにいちゃん」が欲しかった。それでも、毎日のようにケンカ出来る相手がいなくなったのは、ちょっとだけ寂しい。兄が私のためにと残した大量の参考書が、更に胸を締めつける。何より、「サンダル」のお礼が言えてない。LINEやメールじゃ意味のない「ありがとう。」を伝えてない。夏になれば兄が帰ってくる。「ありがとう。」は照れ臭い。だからせめて「おかえり。」と言ってみよう。「クソ兄貴」はどんな顔をするだろう。「ただいま。」と笑って言ってくれれば少しうれしい。夢とはなんなのか岐阜県立大垣養老高等学校(岐阜県)髙木璃音さん介護をする人が足りない、などと何度聞いてきたことだろうか。高齢化の今、そんなこと当たり前だ。当たり前?いや違う。私の周りには介護士になりたいという人がいる。人の役に立つ仕事をしたいという人がいる。ではなぜ、足りないと言われ続けているのだろう。私は進学希望なのでいろいろな学校のパンフレットを見る。その中でも保育系の学校を目指しているので、関連して介護などの内容もよく目を通す。ぱらぱら…あぁこの学校は実習がたくさんあって学びやすいなぁ。そう思っていても、結局お金が要るのだ。どれだけやる気があっても、社会が必要としていても、「それ」になるためにはお金が要るのだ。私の友達は介護士になりたかった。一生懸命勉強もしていた。だが、三年生になって、進路を考える授業の時にその友達は言った。「俺、就職にするよ。」と悲しそうな顔で言ったのだ。あぁこれが原因なんだと思った。やる気はあるのにお金がなくて夢を諦めるなんてどれほど悲しいものか。そんなの夢を叶えるというより夢を買うという表現の方が正しいのではないだろうか。特に福祉系は需要が高いのに学費も保育より高いのだ。それはおかしいのではないだろうか?「足りない」などと言う前に学費を安くしなければ足りないままだと社会は気付かないのだろうか。夢は努力すれば叶うなど、嘘っぱちだ。おばあちゃんの笑顔静岡県立静岡商業高等学校(静岡県)菊地真由さん私はおばあちゃんが大好きだ。このことを伝えたことはない。おばあちゃんはお母さんみたいな人。毎朝、雨の日も風の日も、片道十分かかる家から自転車で朝ご飯とお弁当を届けてくれる。相談にだって乗ってくれる。おばあちゃんは優しい人。毎日夕飯を作った私を褒めてくれる。検定に受かったり、テストでいい点数を取ると、自分のことみたいに喜んでくれる。おばあちゃんは強い人。すごいポジティブで、不満なんかまったく言わない。いつも笑っている。私のおばあちゃんはそんな人。おばあちゃんが泣いている姿を一度だけ見たことがある。私のお母さんが死んだ日、おばあちゃんは、自分が産んだ愛してやまない娘を失った。冷たくなったお母さんの前で、おばあちゃんは泣きじゃくっていた。それからの私の家は悲惨な状態だった。姉は家に帰らず、兄は引きこもり、父は毎日怒っていた。そんな状態でもおばあちゃんは笑っていた。辛いし、悲しいに決まってる。それでも私を元気づけようとしてくれたのだ。「お母さんの代わりでもなんでもしてあげる。だから安心しな。」その言葉がどれだけ心強かったか。嬉しかったか。今、おばあちゃんに伝えたい。私は素直じゃないから、ありがとうも言えなくてごめんね。いつも支えてくれてありがとう。おばあちゃんの笑顔が大好き。いつも助けられてるんだよ。