17歳からのメッセージReport2017

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応募参加校一覧17歳からのメッセージ3617歳からのメッセージグランプリ学生審査員賞金賞銀賞奨励賞学校特別賞一人で登校するとき、補聴器をつけた耳に入ってくる音―。風の音、鳥の鳴き声、ネコの甘える声、車の音、友人たちの話し声―、いろんな音を感じる。しかし、補聴器を取ったら、自分の世界が真っ暗になる。目に見える色の世界はそのままだが、ただ足を動かしているだけでいつ何が起こるか分からない。歩いていくうちに、ブラックホールにすいこまれてしまうのではないか。といつもヒヤヒヤする。うすい氷の上を歩いているような気分になる。私はこういう世界の中で生きている。同じ聴覚障がいのある友人にその話をしてみると、「補聴器がなかったら、周りの人たちが話している楽しそうな世界がどんどん遠のいて、自分だけが闇の中に取り残されたような感じになる。」と共感してくれた。私たち聴覚障がいをもっている人たちは少なからずとも真っ暗な世界を心に抱えている。しかし、音には太鼓のように体に響くものもあれば、ギターやドラムのように目に見えるものもあれば、波や雨のように肌で感じる音もある。音はいろんな形となって現れてくるのだ。だから私は耳だけでなく、体や心でも音を感じ続けていたい。これからも新鮮な音が出てくるだろう。音との出会い、音を感じる世界を補聴器とともに味わいながら生きていきたい。私は、小学生や中学生の健康診断について不思議に思うことがある。それは、なぜX線撮影が実施されないのかということだ。私がそう思うようになったのには、2つの理由がある。1つ目は、私自身が高校に入学してすぐに実施された健康診断のX線撮影でがんが発見されたからだ。見つかったとき音を感じる世界大阪府立だいせん聴覚高等支援学校(大阪府)廣田莉乃さん小学生・中学生のX線撮影について大阪府立富田林高等学校(大阪府)岡本鼓都里さんそして、母が「もう、この話聞いたときほんま泣きそうなったわ。」と言った。そうか、たったこれだけの話なのに母は思わず泣きそうになるほど嬉しかったんだ。ということは、それだけ数えきれない苦労があったんだ。ほんの数分、ほんの数回のやりとり、それがすごく深く心に響いた。母の苦労の多さとそれを上回る愛情の大きさが同時に伝わってきたのを感じた。私の記憶の中で一番古い時間は区役所で三歳児検診を受けたときのものだ。これより前にも色々なことを経験しているはずだが、覚えていない。この検診は、私と幼なじみとの一番古い思い出でもある。二人は、同じ年に同じ病院で生まれた。隣のベッドだった。私のほうが二カ月遅れて外の世界を知った。私の記憶にない頃から母親どうしは仲良くしていたらしく、何度か家にも行ったそうだ。もちろん私は覚えていない。二人が生まれてちょうど三年になる年、一緒に検診に行ったそうだ。順番待ちのとき、二人で体温計をいじっていたのを覚えている。お医者さんに「双子みたいだね。」と言われて嬉しかったのも覚えている。これが私の一番古い記憶だ。月日は流れ、二人は別々の高校に通っている。十何年共に過ごしてきて、一ヵ月以上顔を合わせないなんて初めてだ。何だか変な感じ。私の隣がぽっかりと空いているような。つい先週、二人は駅で偶然会った。しかし、なぜだろう。懐かしい、とか、久しぶり、とかいう気持ちには全くならなかった。まるで毎日ここで会っているかのように、ごく普通に「おはよう。今日の服かわいいね。」なんて言っていた。この先、また駅で偶然会っても、十何年後かに再会しても、同じように二人で笑えたらいいなと思う。記憶の中の二人大阪府立千里高等学校(大阪府)湯場くるみさんしても1つでも楽しいことがあれば過去をふり返った時、あの時は楽しかったと思える。私は高校2年生の時、1年間の半分以上学校に行きたくないと思っていた。むしろ学校に行きたいと思ったことはなかったかもしれない。特別にこれが嫌だということがあったわけではない。ただ、1年の時の方が楽しかった、と思っていただけである。でも高校3年生になった今、高校2年生も楽しかったなと思う。楽しくなかったことを思い出そうとすれば思い出せるが、パッと頭に浮かぶ思い出は修学旅行、調理実習、休み時間のマシンガントーク、全部全部楽しかったことばかりだ。このように人の記憶はいいように美化されるのだ。冒頭でも言ったように人は今が楽しいということに気づかない。今の楽しくない部分と過去の美化された部分を比べることを繰り返す。そんな人生楽しくない。人は嫌なことばかりに目が行きがちだが過ぎてしまえば全部いい思い出と変わるのだ。結局は今が一番楽しいということ。今そのことに気づける環境にいられる私は幸せ者だと思う。ついこの間、家庭基礎の授業で『親』について考える機会があった。その数日後に保護者懇談会があり、私のクラスの担任の先生がこう言ったそうだ。「この間の家庭基礎の授業で『親になるために必要なもの』について班で発表しましたが、誰一人一番に『お金』とは言いませんでした。みんな最初に『愛情』と言っていて感動しました。みんな愛があふれている家庭で育ったんだな、と思いました。」私は最初この話を聞いたとき、正直、どうしてこんなことに感動したのだろう、と驚いた。『親になるために必要なもの』と聞かれて『愛情』と即答できるほど、それがあたりまえだと思っていたからだ。しかし、よくよく考えてみると、そう思えることがどれほど幸せなことなのか身に染みて感じた。愛情大阪府立千里高等学校(大阪府)土橋梨夏さん