学長・野風草だより

No.339

No.339 2013年3月4日(月)

春はもうすぐ 柿沼康二★★★書の情熱

 弥生3月、三寒四温の日々が続きますが、差し引き一つずつ温かくなってきています。庭の花さんたちは、そんな季節の動きを感じ取っているようです。福寿草が一つ咲いてくれました。朝見た時と昼になってから見たのと花の向きが違うので、おおっどうしたんだろう?早速花の図鑑で調べたら、ヒマワリと一緒でお日様の動きに合わせて動くんだったんですね。ご苦労様です。梅は一日一日と蕾を膨らませていき、やっと一つ開いてくれました。ありがとう。これは、1987年3月15日に長浜の盆梅展で買ったもので、25年も我が家の庭で生き続けてくれたことになります。私の恩師である三橋時雄、飯沼二郎、岡光夫先生らと、近畿農書読む会で湖北を訪ね、帰りご一緒に長浜城へ盆梅展を見に行ったことが懐かしく思い出されます。春は、もうそこまで来ている感じです。

 新聞で書家の柿沼康二さんのことが紹介されていました。たまたま改装なった阪急うめだ本店で大規模な個展が開かれていたので、覗いてみました。私は全く知りませんでしたが、NHKの大河ドラマ「風林火山」の題字やBOSE社のCMで使われた「一」を書いたりして、有名な書家らしいです。170坪の巨大ギャラリーに100点を越える作品が展示されていて、圧巻でした。芸術、アートとしての書を目ざしていると宣言している通り、何回か見たことのある書の個展とは趣を異にしていました。「雷神 風神」は俵屋宗達の有名な絵画をイメージしながら、書として表現しているそうです。一方で、徹底した臨書(古典の書の模倣作業)を一日5時間は必ずやっているそうです。
 彼の『柿沼康二 書』(2009 東洋経済新報社)に、こうあります。「5歳から筆を持ち、書にすべてを捧げて突っ走ってきた。馬鹿のひとつ覚えのように古典だ臨書だと、朝から晩まで気の遠くなるような時間と労力をかけ、書の真理を身体に染み込ませるように探究してきた。決して器用な生き方ではなかった。暗闇の中、独り荒野を彷徨い、幾度も挫けそうになった。この先にはもう進めないと、拳を地面に叩きつけ泣いた夜もあった。しかしそんな時、尊敬する3人の書家の生き様が、そっと強く道標を与えてくれた。『そう焦ることはない、1ミリずつでもいいから昨日から前へ進みなさい。それが上品なアヴァンギャルドだ』。
 トークショーがあり、2時間たっぷり聞かせていただきました。現在の書道界と戦い、芸術・アートとしての書を完成させるという情熱がずんずん伝わってきます。しかし、言葉の激しさはあるものの、お人柄はとても優しい方だなと感じました。会場の質問にも丁寧に軽妙に答えられていました。至福なひと時であるとともに、私自身の研究が十分に出来ておらず、恩師にも顔向けできないなと恥じ入りました。