学長・野風草だより

No.369

No.369 2013年5月24日(金)

鴨川をどりと能の世界へ

 京都に住んではや40年を越えました。南座の顔見世は昨年暮れに見ることができ(野風草だよりNo.311)、下鴨神社の流鏑馬には今年のGWに出かけました(野風草だよりNo.361)。お恥ずかしい限りですがちょっと京都づいています。5月17日、今度は舞妓・芸妓さんの踊りを楽しみに、先斗町の歌舞練場に「鴨川をどり」を見に出かけました。先斗町はけっこう(夜に)通っていますが、歌舞練場は初めてです。祇園甲部の「都をどり」は京舞井上流で、上七軒の「北野をどり」は若柳流で、この先斗町の「鴨川をどり」は尾上流の振り付けだそうです。そしてストーリーのある舞踊劇になっているのが特徴です。

 今回は「女舞忠臣蔵」で、第1幕では浅野内匠頭の死から大石内蔵助らが討ち入りを果たして自刃するまでを4場でセリフ入りの踊りで見せていきます。ストーリーを知っているだけに、まさに日本の伝統的な踊りを修業してきた舞妓・芸妓さんたちによる舞踊劇を堪能できました。失礼かもしれませんが、まるで宝塚歌劇じゃないかと思いました。もっとも宝塚歌劇を直接見たことありません。これもいつかチャレンジしたいと思っています。
 第2幕では、歌舞伎や文楽の「仮名手本忠臣蔵」の名場面を見立で、華麗に踊っていきます。「おかる・勘平の道行きの段」では、いのししの傘を何人もの舞妓さんがくるくると回しながら楽しませてくれたのは、ご愛敬でした。たまたま昨年暮れの顔見世で片岡仁左衛門と中村時蔵が演じていたのを見ていたので、ああこんな風にして楽しむのもありなんだなと思いました。

 最後には桜満開の花の清水寺に舞台をうつして、出演者全員が華麗な踊りを見せてくれます。客席に舞妓さんたちがサイン入りの手拭いを投げ入れていたのに、ちょっとびっくりでした。ええなー。私は2階席でしたので、届きませーん。この第2幕では、三味線、お囃子、長唄を芸妓さんたちが演じているのも見ることが出来ました。笛や鼓の作調は藤舎名生、藤舎呂船さんがされていました。私は、藤舎名生さんのCD「四季の笛―一管」、「静寂―古都の瞑想」「日本の心と笛―月山」などを愛聴していましたので、へー、こんなところで藤舎名生さんの名前が出てくるとは驚きでした。長年にわたり指導されているのだそうです。いつか直接演奏をお聞きしてみたいものです。京都を満喫したひと時でした。

 24日の夜には、京都造形芸術大学の春秋座で、世阿弥生誕650周年記念として観世流宗家の観世清和師による「翁」を見せていただきました。「能にして能にあらず」と言われて神聖視されている曲で、芸能の始原的な魅力を思わせるものだと紹介されていました。恥ずかしながら能はいつもは眠たくなってしまうのですが、今回はけっこう踊りも変化があり、お囃子も賑やかで、舞台に注目し続けることが出来ました。狂言は茂山千五郎師をはじめとする茂山家の方々で、めでたい「末広かり」でした。
 最後は片山銕之丞師による「高砂―祝言之式」でした。「高砂や、この浦舟に帆を上げて・・・」と言うのは結婚式などで昔よく聞いたものですが、初めて終わりまで聞き、勇壮な舞にお祝いの雰囲気があふれてるのだと感じました。銕之丞師の舞は、昨年の瓜生山での薪能でも見せていただきました(野風草だよりNo.217)。こうした古典芸能の粋を拝見させていただいた京都造形芸術大学の皆さまに感謝いたします。