学長・野風草だより

No.388

No.388 2013年6月26日(水)

卒業生の生きざまを新入生に伝える、熱く!

 今年の新入生特殊講義も卒業生などに来ていただき、大学4年間の過ごし方、これからの生き方を考えてもらおうと思って進めています(野風草だよりNo.373)。6月19日には、宝石デザイナーの倉貫徹さんにお越しいただきました。学生たちの80周年企画のパンフでお名前を知り、展覧会にも出かけて親しくお話しさせていただきました(野風草だよりNo.362)。
 何とこの日は、倉貫さんのお誕生日でした。最初に学歌を歌った後、YOU TUBEでハッーピーバースデーをみんなで歌ってお祝いしました。倉貫さんにとって、きっとサプライズだったでしょう。当日は、黄鉄鉱、水晶、ダイヤモンドなどの宝石をデザインした作品、古今の名画を倉貫さんなりの解釈で写真加工した作品を数十点持ってきていただいて、学生たちにじかに触れさせていただきました。本学が生んだ世界的哲学者である鈴木亨先生の「響存的世界」を、倉貫徹さんの「響存的芸術」を通して、学生たちに共響させられたことは、本当にありがたいことでした。すぐにピンと来なくても、胸のなかにため込んでもらえたら、うれしい限りです。あとで『風水庭園』という作品集を頂きました。倉貫さん、本日はありがとうございました。

○倉貫徹さんのコメント
 65歳の誕生日に、学生を前にして初めて講演をさせてもらいました。美術家としては、見て、感じてもらうことが一番なので、直接作品を見てもらいながら話をさせていただきました。学生の感想文には、初めて見る世界に感性を揺さぶられた人が多かったようで、大変うれしく、講演させてもらい本当に良かったと思っています。また、話の中で学生が興味を持ってくれたのは、僕が学生の時のゼミの先生であった鈴木亨先生の「響存的世界」とい独創的な哲学体系に出会い、「万物、本来のあり方は、すべてのものが相互に貫いて響き合うもの」という根本理法が、「地球のアートとコラボする」という、僕の作法の原点にであるという話だと思います。鈴木亨先生は、大経大が世界に誇る哲学者だという話だと思います。今、僕が創造する世界は、地球のアートとコラボし、貫いて響き合い、新たな価値を創り出すことです。

 翌週の26日には、私のゼミ12期生(2000年度卒業)の額賀潤二さんに来ていただきました。彼には、2010年の4月21日の新入生特殊講義にも来ていただいています。卒業して10年ぶりに連絡があり、これから奥さんと二人でキリスト教の宣教師として北タイに入ると聞いて、本当に驚いたものでした。それから3年、休暇をもらってしばらく帰ってきているとのことで、早速お会いしました。元気な額賀夫妻の姿を見て、本当にうれしかったです。キリスト教の宣教師、そして日本ではなく北タイでの布教、学生たちにとってこのような生き方は、2重の驚きだったのではないでしょうか。しかし、そんなに特別なことではなく、目の前の卒業生が当たり前のように実践しているということを知ってもらいたかったのです。
 私は講義において、初代学長黒正巌博士の「道理は天地を貫く」という言葉について、在学中、そして生きてる限りどういう事なのか考え抜いてほしいと話しています。そして、私は母から教えられた「おかげさま」という言葉こそが、日本文化の根本だと話しています。額賀夫妻はキリスト教信仰ですが、天地を貫く根本道理は変わらないと、私は考えています。額賀夫妻の活動は、能勢川キリスト教会をはじめとする「額賀宣教師夫妻を支える会」への浄財によって支えられています。今は北タイから南タイのプーケット島で宣教をしています。額賀夫妻の活動が成就されることをお祈りいたします。そして何よりも体に気をつけて下さいね。後日、京都を堪能してもらうために、夕食をともにしました。
 倉貫さん、額賀さん、こうした卒業生が各方面で活躍されていることは、大経大にとって「誇り」です。心から感謝申し上げます。

○額賀潤二さんの言葉
 高校生の頃、フィリピンのマニラにあるスモーキーマウンテンと呼ばれるゴミ山に行きました。そのゴミ山のふもとに廃材で家を建て、毎日ゴミを拾って生活している戸籍の無い子供たち出会ったことで私の人生観が一変しました。「私と彼らは同じ人間なのに、生まれてきた国や環境が違うだけで彼らには人権すら無いのか」。2001年に大経大を卒業し自動車整備会社に就職し整備技術を学んだ後、宣教師という進路を選び、現在タイのプーケット島でキリスト教の教会を助けたり、貧困層の村に行き聖書や英語、物を修理する技術などを子供たちに教えています。
 貧困層の家庭に生まれたタイの子供たちと接する度に昔に訪れたマニラのゴミ山で出会った子供たちを思い出し、「平等」や「人権」について考えさせられます。しかし一方で物質的には恵まれていない生活であっても、その日その日をのんびり楽しく村人と協力し合いながら暮らしている彼らの「心のゆとり」に惹かれます。タイ生活3年目を迎えた今、人と人とのつながりの大切さついて、現地の方々より学ばされています。

○額賀ひとみさんの言葉
 タイという異文化の地で最初は言葉も分からず戸惑う日々が続いた。外に出るのが怖いと感じる日も多かった。それでも与えられた環境の中で楽しく過ごしたい!だからどうすれば楽しく過ごせるのかを考えていた。言葉が分からない私に周囲の人々が助けてくれた。孤独からの解放、安心感、喜び、感謝へと気持ちが変化した。人は支え合って生きている。力を与える存在であり、受ける存在である事を改めて気付かせて頂いた。物に溢れた日本の社会の中で欠落していた感性は現地の子供達によってじわじわと蘇って来た。そうだ私も昔はこんな風に人間らしく生きてたなと、彼らを見ていつも思う。誰かに言われたからではなく、感じるままに、美しい物は“美しい”、嫌いな物は“嫌い”...。
 私が今している活動は、肉体的にとてもキツイ。しかし、関わる人々から力を受け、学ばされているという事への感謝と喜びに気付く事で、心の負担が軽くなり、精神面はとても穏やかで楽しい毎日が過ごせている。気付かせてもらえている周囲の人々の存在に心から感謝します。人は存在そのものに価値がある事を私は信じています。明日は、私の存在も誰かの力になれますように。