学長・野風草だより

No.396

No.396 2013年7月21日(日)

京都白河院でのプロジェクトいのちの研究合宿

 「いのち」について考えるプロジェクトいのちを明治国際医療大学の渡邉勝之さんらと立ち上げて、はや4年が過ぎました。毎年夏にはすごいゲストを迎えて研究合宿を行っています(野風草だよりNo.124253)。今年は、『人は死なない-ある臨床医による摂理と霊性をめぐる思索-』(2011 パジリコ)で話題となった矢作直樹東京大学大学院教授をお迎えして、救急医療現場から見た「いのち」のお話をうかがいました。他にも『人は死なない。ではどうする?』(中健次郎との共著 2012 マキノ出版)、『死ぬことが怖くなくなるたった一つの方法』(坂本政道と共著 2012 徳間書店)、『神(サムシング・グレート)と見えない世界』(村上和雄と共著 2013 祥伝社新書)、『魂と肉体のゆくえ-与えられた生命を生きる-』(2013 きずな出版)などなど、次々とお考えを発表されています。

 会場は京都の白河院で、私学共済の宿泊施設です。ここは藤原家が建てた六勝寺の一つである法勝寺があった地であり、大正時代に呉服商の別荘として建てられ、有名な庭師の7代目小川治兵衛が作庭しています。年月を感じさせる数寄屋造りの別館で会議をし、池泉回遊式の庭園を眺めながら食事をします。夜はちょうど満月で、散歩すると何ともいえぬ日本情緒を感じます。早朝には米澤沙智絵さんの指導でヨガ体操が行われました。私は前夜の酒で寝過ごしてしまいました。

 人体科学会との共同開催による公開講演、「医療現場からみる日本人の死生観-いのちに向き合って30有余年-」や、鮎澤聡筑波技術大学准教授、棚次正和京都府立医科大学教授、杉岡良彦旭川医科大学講師とシンポでは、少々話がほぐれませんでしたが、終わって夕食になると緊張も解けて、いろいろなお話を伺うことが出来ました。写真の私の左が矢作先生です。
 お話してて、私がとくに印象に残ったのは、今回の研究合宿のテーマとは離れますが、医療現場では何が起こるかわからず、いつもそれまでの医療技術を総動員しながら「現場合わせ」をして対応している。これこそが救急医療のカン所だと言われたことです。農業の現場も「合わせ」です。理屈ではなく、作物の状況に合わせてどれだけ適切な対応が出来るかです。「まわし」(循環)、「ならし」(平準)とともに「合わせ」(融和)が日本農業の原理だと思いますが、教育もそして医療もまた同じ原理で成り立っている。なぜなら「いのち」と向き合い、育んでいるんだから。これが四季折々の日本列島の風土と何万年の歴史で培われた「日本文化」の神髄なのでしょう。「死生観」、「霊魂観」もまたそこに根ざしているのではないでしょうか。

○神戸でヨガ治療をしている米澤沙智絵さんの感想
 矢作先生は、近くにいると体感温度が少し上がるように感じるくらい、とてもあたたかな雰囲気に包まれた方でした。合宿2日目の「目覚めのヨーガ」にも参加してくださり、清浄な空気に包まれ朝日を浴びながら皆さんと共有したひと時は忘れがたい思い出となりました。
 先生のメッセージで心に残ったのは「愛と調和」。その言葉通り誰に対しても愛を持って接し、そして旅館の中庭の鯉や木々、空の雲の様子ひとつひとつに心を向け楽しんでおられました。きっとこの世界は、それを見る人の心がどうあるかで、見える風景が変わってくるのだと思います。生命あるもの全てを平等とみて、それぞれに尊さを見出すことのできる先生のお人柄に触れ、私も少しだけ、その世界観を垣間見させていただいたような気がしています。