学長・野風草だより

No.403

No.403 2013年8月13日(火)

演劇三昧の夏休み

 猛暑が続く夏休み、8月3日、日本橋の文楽劇場で「妹背山婦女庭訓」を見てきました。2時から5時半までかかる長丁場で、ストーリーはかなり複雑です。蘇我入鹿の横暴、藤原鎌足の入鹿誅伐、それにかかわりながら引き起こされる親子・恋人同士の別れを描いた王代物の傑作らしいですが、解説書を読まないと筋がつかめません。旧暦の七夕の風物を背景に、大和地方に点在する名所旧跡や伝説を題材にして、酒屋の娘お三輪の恋の行方と入鹿退治に不可欠な品の入手を巡る物語が表裏一体となって進行します。有名な一幕、二幕だけを取り出して演じるのではなく、4段目を通してやっていただいたので、見応えがありました。とくに桐竹勘十郎の操るお三輪が表現豊かで細やかで、哀れを誘いました。

 翌日は、本学卒業生の斉藤幸恵さん(野風草だよりNo.362No.373)が出演する「ちらりほらり」を観に、天満橋のドーンセンターへ行きました。「浪花人情紙風船団」第13回公演で、原作は日向鈴子(ミヤコ蝶々)の「母桜」です。母親と4人の娘との葛藤、からみ、「人情」を笑いあり、涙ありの連続で見せてくれます。斉藤さんは、四女の役で好演されていました。それにしても母親役の座長の「紅萬子」さんの存在感、芝居上手に圧倒されました。いきなり客席の通路から、ど派手な衣装と大阪弁の大声でのしゃべくりで登場してくるのです。そして次々と役に合わせて千万変化しながら、芸達者の皆さんとともに、演じていくのです。大阪の「人情」を堪能できた舞台でした。

 14日には、上本町の新歌舞伎座で、3代目市川猿之助(現猿翁)が始めたスーパー歌舞伎の「新・水滸伝」を楽しみました。これまで、まあ正統な歌舞伎を見てきましたので、正直度胆を抜かれましたね。市川右近、笑也、猿弥、笑三郎、春猿ら21世紀歌舞伎組が、舞台狭しと暴れまわります。「宙乗り」やアクロバティクでスピード感あふれる「立ち廻り」、ケレン味あふれるアクション、華麗な衣装、斬新な舞台美術という宣伝文句に偽りなしです。花道近くの通路座席が取れたので、とても身近で役者さんを見れましたし、3階からの宙乗り、通路での立ち廻りなどは近すぎて怖いくらいでした。江戸時代の歌舞伎小屋はこんな感じで、観客は笑ったり泣いたりして楽しんでいたのかと思いました。
 文楽、人情劇、スーパー歌舞伎、夏の暑さを忘れさせてくれました。