学長・野風草だより

No.405

No.405 2013年8月20日(火)

科研の離島調査で徳之島へ

 本学の藤本高志先生をリーダーにして、渡邉正英先生と3人で、科学研究費による離島調査に出かけました。一昨年は与論島と久米島、昨年は五島列島に行きました(野風草だよりNo.263)。今年は、鹿児島県の徳之島へ行き、徳之島の伊仙町を対象に、農業をベースとする産業振興について調査を行いました。以下は、藤本先生が書かれた調査報告書をもとに、私が少しだけアレンジしたものです。
 最初に、農産物直売所「百菜」の活動の調査を行いました。野菜や果物はもちろん、黒糖をはじめとした加工品も数多く扱っています。また、島で採れた島みかん,島バナナ、ベニフウキ茶、黒糖を素材にジェラートの製造も行っています。地産地消の推進を目的に設立されましたが、農業法人「伊賀の里モクモク手作りファーム」、ふるさと便、インターネット直販を通じて,島外への販売も行うようになっています。組合員に対して、島の食材を知ってもらう活動や6次産業化塾を開催するなど、付加価値の高い農産物生産やその加工の技術支援を行っています。その結果、「百菜」の店頭には、多様な農産物やその加工品が並ぶようになりました。また、徳之島は長寿・子宝の島として有名ですが、多様な食材を生かし、健康づくりをキーワードにした商品づくりが進んでいます。ここでの試みは、新たな離島農業の形の模索と言えるでしょう。

 次に高付加価値の農産物およびその加工品の生産に関する調査を行いました。徳之島へIターンした吉玉誠一氏は、国産コーヒーの生産・加工・販売に取り組んでいます。彼は若いころ、大経大の近くに住んで働いたことがあり、学食でもよく食べたとのことで驚きでした。収穫された島コーヒーは吉玉氏が経営するカフェで楽しめます。
 福留ケイ子さんは、有機農法による果樹生産(タンカン・マンゴー・グアバ・パパイヤ)と、果樹ジュースやグアバ茶・枇杷茶の加工を行っています。その場でマンゴやパパイアをご馳走になりましたが、とてもおいしかったです。グアバ茶・枇杷茶は有機JASの認定を受けています。元々はサトウキビ農家だったのですが、サトウキビだけでは300万円の年収が限界であることを知り、昭和50年代から果樹経営とその加工・販売に取り組むようになりました。伊仙町役場もこのような活動を支援するため、マンゴー生産のための施設の建設に補助金を出したり、長命草やコーヒーの苗を農家に供給しています。離島地域の農業は、輸送コストが割高になるというハンディを抱えています。また、サトウキビ、子牛、馬鈴薯などの一次産品の生産だけでは、地域が獲得する付加価値は小さいものです。しかし、農業以外の産業が島に立地する可能性は低い。このような課題を乗り越え、地域の雇用と所得を拡大するためには、農産物の高付加価値化が最も重要な取り組みと言えるでしょう。

 最後に、島の基幹産業であるサトウキビ、肉用牛、馬鈴薯の調査を行いました。サトウキビを中心とし、肉用牛や馬鈴薯を組み合わせた農業が営まれています。最近では、広い土地条件を背景に経営拡大志向の農家が現れるようになりました。訪問した肉用牛農家は、繁殖牛を120~130頭持ち、飼料畑を約10ha経営しています。サトウキビは、高い関税と交付金により、何とか生産が維持されています。経営規模拡大は一定の成果をあげていますが、コスト削減努力には限界があり、内外価格差を考えると根本的な解決策にはならないでしょう。政府の保護なしには、離島の農業の維持は難しいと言えます。
 なお、右の写真は、徳之島で盛んな闘牛用の牛さんです。島の人たちにとって、自分とこで飼った牛を大会に出場させて勝つのは、何よりの喜びだそうです。