学長・野風草だより

No.413

No.413 2013年9月18日(水)

春学期の卒業式に贈る言葉

Ⅰ 元学長の鈴木亨先生の「響存的世界」
 おはようございます。卒業生、大学院修了生の皆さま、おめでとうございます。ご参列のご父母、学費負担者の皆さまにも、心よりお慶び申し上げます。
 本日大学に来られて気が付いたと思いますが、D館が竣工いたしました。この数年、80周年記念事業としてキャンパス整備をすすめてきましたが、その最後として、学生が講義やゼミで使うD館が完成いたしました。8階建て、地上45メートル、おしゃれなデザインの建物です。皆さんはもう卒業ですが、せっかくですので、覗いてみてください。

 1階の入り口の壁に、金色と黒色の大きな環が二つ重なるように掛かっています。これは本学卒業生で宝石ア-ティストである倉貫徹さんの作品です。「W至円」のタイトルで「つながる力」を表現しています。彼の座右銘は「人のまねをするな」で、地球の造形物で一番美しいと考えている宝石をアートするオリジナル作品を造っています。反対の壁には、京阪神の風景やバーの切り絵が10枚飾られています。これは同じく本学の卒業生で昨年急逝された成田一徹さんの作品です。38歳で会社員をやめて上京し、カッターで切る独自の作風を確立してきましたが、さあこれからという時の早すぎる死でした。

 お二人に共通するのは、学部や大学院で本学の元学長である鈴木亨先生に習ったということです。今90歳を越える鈴木先生は、西田幾多郎が体系化した日本哲学を創造的に発展させている大哲学者です。鈴木先生が今から40年前にオリジナルな学問を作り上げようと格闘する姿を目の当たりにして、当時の学生や院生たちは勉強していたんですね。オリジナルを生み出そうとするスタンスは、当然ながら伝染します。大きな声で学生を怒鳴ったり、ウソをついたり、オリジナルを追求せず他人のマネでお茶を濁している先生から、オリジナルを追求する学生が生まれるでしょうか。

 鈴木先生は、「響存」という言葉を発明されました。生きとし生けるものは、すべて響き合いながら存在し、繋がりあっている。今なら「共存」「共生」というかもしれませんが、ただ現象的に共存・共生しているというのではなくて、「存在者」はすべて「空」より「逆接」しながら生み出されているという、「存在者逆接空」の根源的な哲学です。『響存的世界』(1967・合同出版 『鈴木亨著作集』第1巻に所収 1996・三一書房)をぜひ読んでみてください。
 倉貫さんは、先生の影響で、「響存芸術論」という卒論を書いたそうです。20歳の芸術的構想を40年以上温め続けてきたんですね。倉貫さんも成田さんも、「「響存的世界」を身を以て示してくれました。それらの作品が新しいD館に飾られているんです。表現の違いがあったとしても、「いのち」の表現行為である点で、学問とアート、根っこは一緒なんですね。皆さんは、この学生時代に何を学んだでしょうか。もう一度、学生時代の生活をふりかえってみてください。

Ⅱ 初代学長の黒正巌博士の「道理貫天地」
 皆さん、4年半、いや6年、7年と大学に長くいた人もいるでしょう。どんな思い出が湧いてきますか?講義やゼミでの先生との語らいや仲間とのつきあい、クラブやサークルの活動、バイトの経験、ご両親との関係などなど。すべてが、皆さんを育ててくれたのだと思います。今、自分では気が付かないかもしれませんが、何かが必ず芽生えているのです。何か大切なもの、失ってはいけないもの。ここにいるすべての人、それぞれに固有のオリジナルなものがあります。これからの人生で、もっともっと大きく育てていってほしいと思います。
 「半沢直樹」、見てますか?9月22日の最終回、楽しみですよね。近藤さん、つらい決断しましたね。大和田常務、最後に土下座をするんでしょうか?半沢のように、YESだけでなく、NO!と言う勇気、持てるでしょうか。「倍返し」なんてカッコいいセリフ、言ってみたいですね。
 そのためにも、自分のなかに芯棒、背骨が欲しいですね。本学の初代学長である黒正巌博士は、「道理は天地を貫く」と言われました。オリジナルな生き方は、好き勝手、オレがオレがの「我」の世界ではなく、必ず人類の古今東西の知恵にたどり着きます。黒正博士は、世界で日本でただ一つの言葉で、知恵の泉を表現したのです。「道理は天地を貫く」とは、どういうことなのだろう?大阪経済大学が皆さんに贈るオリジナルメッセージです。

 最後に皆さんに一つだけ、お願いがあります。お家に帰ったら、卒業証書をお父さん、お母さん、学費を出してくれた方に見せて、「おかげさまで卒業できました。ありがとうございました。」とお礼を述べてください。すべては、「おかげさま」なのです。日本語で一番美しい言葉、「おかげさま」を卒業する皆さんに贈ります。卒業、おめでとう。