学長・野風草だより

No.436

No.436 2014年2月10日(月)

一人芝居・時代劇映画・歌舞伎顔見世

 今まで見た舞台は、何人か、何十人でやられるものばかりでした。一人芝居というのがあるのは聞いていましたが、どんなのか想像がつきませんでした。たまたま近くの京都府立芸術会館で、白石加代子の「百物語」があったので、出かけてみました。1992年から始まり、「恐怖」をテーマに明治から現代までの小説を中心に、三遊亭円朝の怪談話、、宮沢賢治、筒井康隆、宮部みゆきなど多彩な演目です。
 当日は、昭和の大女優の杉村春子が演じた林芙美子の「晩菊」をシリアスに語り、山田五十鈴が演じた北条秀司の「狐狸狐狸ばなし」ではコミカルに語り爆笑の連続でした。とても一人でやっているとは思えないほど、舞台で複数の人間像がイメージされてきます。次は、98、99話でファイナル公演となり、是非見たいと思います。22年間やり続けてきた白石さんの役者魂に感動します。「百物語」には100話目はないんだよ!

 時代劇映画「蠢動」を見てきました。山田洋次監督の「たそがれ清兵衛」「隠し剣 鬼の爪」「武士の一分」は見たことありますが、これは50年前の「切腹」「上意討ち」「仇討」に連なる、徹底してリアルで、緊迫感と殺陣が連続する本格正統時代劇です。昨年10月に上映されましたが見逃していて、今回東寺横のみなみ会館でアンコール上映があったので見てきました。前半は「静」で、後半は一転して「動」で、長回しの手法で途中で切れることなく雪中での斬り合いの連続です。音楽はなく、後半は和太鼓の響きだけです。
 監督の三上康雄さんは、1982年に自主映画で「蠢動」を作りましたが、33年がたって本当に自分で観たい時代劇映画を作りたいとのことで、自営の会社をたたんで資金を作り、制作したそうです。あまりにも浮世離れした話なので、2月2日に監督自身の舞台挨拶を聞くために、2回目を観に行きました。今度はスートリーがわかっているので、こまごましたところまで目が行きました。雪中の殺陣のシーンで、なぜ血が吹き出ないのかと疑問に思っていましたが、実際は血は服に浸み込んでいき、テレビや映画でよく見るような血しぶきは出ないのだそうです。最後に嵌められた若い藩士が息を吹き返して「ウッヲォーー」と叫んでエンドなのですが、それは「武士道」と「人間道」の相剋ではなく、相生を表現したかったとのことでした。冒頭に「陽子へ  三上康雄」というクレジットがあります。2年前に亡くなられた奥様へのメッセージでした。

 一昨年に引き続き(野風草だよりNo.311)、昨年末には南座で顔見世を観ました。3代目市川猿之助が2代目市川猿翁を、市川亀治郎が4代目市川猿之助を、「半沢直樹」の敵役で有名となった香川照之が9代目市川中車を襲名する披露公演の最後の舞台でした。襲名披露口上では、猿翁は椅子に座って登場し、しゃべれませんでしたが猿之助が話すことにフムフムとうなずいていました。下の写真は真ん中が猿之助、右が猿翁、左が中車です。
 夜の部で「元禄忠臣蔵 御浜御殿綱豊卿」、「黒塚」、「道行雪故郷 新口村」を観ました。「黒塚」は能の「黒塚」を素材にしていて、安達が原の鬼女でよく知られている演目でした。猿之助は、童心に返った老女のけなげさ、裏切られたと知った鬼女の憤怒の凄味を巧みに演じ分けていました。私はすっかり猿之助のファンになり、次は猿之助ら澤瀉屋一門と佐々木蔵之介が共演するスーパー歌舞伎Ⅱ「空ヲ刻ム者」を観るつもりです。