学長・野風草だより

No.476

No.476 2014年6月20日(金)

地域文化論でアフリカのセネガルにふれる

 地域文化論は本来私の担当科目ですが、今は中村香子先生に非常勤講師をお願いし、おもにアフリカ地域の文化や社会を教えていただいています。日頃接することが少ない地域だけに、受講生にとっては興味深いことでしょう。昨年はエチオピアの方に来ていただきましたが(野風草だよりNo.378)、今回は西アフリカのセネガルのパパさんに来ていただきました。専門は農学、植物学で、博士号を九州大学大学院で取得されています。日本語も堪能で、広い教室でたくさんの学生が熱心に聞いていました。こうして世界各地の異文化に触れることが、「多様性」を実感していくことにつながると確信します。
 後日、京都で中村さん、パパさんと食事をしました。イスラムの教えで肉やアルコールとかがダメなので、京野菜の店で楽しいひと時を過ごしました。農学が専門なので話が合い、アフリカ、セネガルの農業について一杯聞くことができました。前にも書きましたが、私はアフリカを訪ねたことがありませんので、いつかこうしたご縁にすがりながら行ってみたいと思います。パパさん、中村さん、ありがとうございました。
 一番下の写真は、サン=テグジュペリの『星の王子様』に出てくるバオバブの木です。

○地域文化論担当の中村香子先生のコメント
 6月6日(金)の地域文化論の講義は、京都大学で研究をしているセネガル人のパパ・サリウ・サール先生にセネガルについて語って頂きました。西アフリカのセネガルという国。日本人にはあまりなじみがありませんが、色鮮やかなアフリカン・プリントの衣装や、ビートのきいた音楽など、アフリカの魅力が凝縮している国です。講義では、セネガルの地理、歴史、農業、文化など広くお話いただきました。国の94%がイスラム教徒というセネガル。イスラム教は、1日5回のお祈りや食事規制がありますが、それを守りながら日本で暮らす苦労も楽しく語ってくれました。また、ほんの少しだけダンスも交えてセネガル音楽も紹介いただきました。「本当はすごく一緒に踊りたかった!」という感想を書いてくれた人もいました。200人以上いる教室では、ちょっと照れますね!
 「セネガルはぜんぜん貧しそうではなかった」とか「アフリカのイメージが変わった」という感想が多くありました。日本でよく報道されている、「貧しく危険なアフリカ」は、アフリカのほんの一面にすぎません。パパさんも、日本のとても偏ったアフリカについての報道には、いつもがっかりしているそうです。みなさんからの質問が多かった、「日本とセネガルの違い」について、パパさんに答えてもらいました。「TERANGA」というのは、セネガル人のホスピタリティーのことです。突然遊びに行っても大歓迎して何日でも泊めてくれるそうです。「パパさんの講義を受けた」と言ったら、パパさんのご家族は大喜びして家族として迎えてくれるでしょう!

○Papa Saliou SARR Center for African Area Studies, Kyoto University

A look of the Japanese society from a Senegalese angle

 I was born and grow up in Senegal until my late twenties before a divine struck took me at Fukuoka (Japan) some 8 years ago. This stay is an amazing experience that made me realize the beauty and the amazingness of the Japanese society in many aspects. The culture is rich and even richer than what one would expect before arriving. Although it is a modern society with a highly developed technology, the country still keeps its strong cultural tradition. Yet it could be referred as a “hybrid” society where modernity
(beautiful architecture, technology, human capital) and tradition (traditional festivals, the ceremonies, lot of conserved heritages such as temples in Kyoto) are tightly linked. It is not rare to see top country leaders including the Prime Minister being part of traditional festival events.  All the difference with Senegal where highly educated and leaders tend to think that taking part of such traditional events is a sort of regression of their status. Hence, even if they participate, often they come dressed in European style to show their modernity; while the Japanese Prime
Minister would come dressed in a Kimono Style. Years in Japan have let me understand that culture is the base of any development. “Believe on yourself and don’t count onto others, respect your culture; soon or later, development will come to great you”. This strong Japanese culture that covers every side (respect of time, clean environment, respect of customers etc…) makes the country amazing. I believe Senegal needs to do lot of efforts in those aspects, although we nowadays can notice positives signs.

 Yet, coming from Senegal (a developing country), I am also concerned about some aspects of the Japanese society and believe there are lessons Japan could learn from Senegal. A big difference would be in the human-relationship. It appears from my eyes to be stronger in Senegal than in Japan where people tend to live separately with less communication. In Japan, a family composed of the two parents, the two grand-parents and the 3 children can all be leaving separately in the same city, while in Senegal they would stay in the same house. Having such a group life-style
strengthens the human relationships between family members and constitutes the base for having stronger relationships with others. In Senegal, it is not rare to see a foreigner staying at someone’s house for weeks or months without being asked any contribution. This is known in the famous word “TERANGA” in Senegal.
 However, Senegal and Japan share some similarities, especially about the nowadays “late marriage” of young people, due to the need to secure a fix job first. The food habit is very close as both countries are great riceconsumers.

(日本語訳)
○パパ・サリウ・サール(京都大学アフリカ地域研究資料センター)さんのコメント

セネガルからみた日本社会

 セネガルで生まれ、セネガルで育った私にとって、8年前からの日本滞在は、驚きの経験でした。日本文化の豊かさは想像を超えていました。科学技術がこれほど発達しているにもかかわらず、伝統をつよく維持していて、美しい近代建築、科学技術、人的資源といった現代的要素と、祭り、儀式、京都に多くある神社仏閣などの伝統的要素が相互につよく結びついた、まさに「ハイブリッド」な社会です。首相など、国のリーダーが伝統的な祭事に参加することは、日本ではよくありますが、セネガルでは高い教育を受けたリーダーが伝統的な行事に参加すると、「遅れている人」とみなされてマイナスになってしまいます。ですから、もし、参加するとしても、そういった人たちは必ず、自分たちは「進んだ」人間であることをアピールするために洋服を着て参加し、伝統的な衣装を身につけません。でも日本では、首相が着物を着ることも珍しくありません。日本に滞在するうちに、私は、いかなる発展にもその基盤には文化があるということを思い知っていきました。つまり、「自分自身を信じ、人に頼らず、自らの文化に誇りをもつ。すると、発展はおのずとやってくる」ということです。時間を守ること、環境美化、顧客を大切にすること、などといった日本の強い文化的な特徴は、この国を驚くほど発展させています。セネガルにも近年、発展の兆しが見えてきてはいるのですが、私はセネガルにも、日本のようなやりかたで、努力して欲しいと思っています。

 セネガルという発展途上国から来た私にとって、日本社会のいくつかの点については少し心配なこともあります。ひょっとしたらこの点は、日本がセネガルから学ぶ点があるかもしれません。それは、人と人との関係です。人々が離ればなれに住み、お互いにあまり交流しない日本にくらべて、セネガルでは人と人はずっと強い結びつきをもっています。たとえば、両親と祖父母と3人の子供たち、これらの人々が、同じ市に住んでいるにもかかわらず、それぞれの家に分かれて住むということは、セネガルでは考えられません。大人数で一緒に住むというライフスタイルが、家族間のつよいつながりをつくり、そのつながりが他者との関係をつくる上でも基礎になっています。セネガルでは、外国人を家に何週間も、何ヶ月も泊めることも珍しくありません。もちろんお金もとりません。これは、現地の言葉では、「TERANGA」とよばれます。
 セネガルと日本は、似ているところもあります。仕事の安定を優先させるため、若者の結婚が遅くなっているところや、米をたくさん食べるところも同じです。