学長・野風草だより

No.492

No.492 2014年8月1日(木)

大経大関係者の芸術家の魂

 6月9日、卒業生の倉貫徹さんの個展に、福島区のラッズギャラリーに行ってきました。テーマは、「溶融 変容 そして響存」。昨年もお伺いしてびっくりしましたが(野風草だよりNo.362)、今年は新しく板ガラスに水晶などの鉱物を挟んで電気窯で焼いたものを展示されていました。焼きあがってみないとどんなになるかわからないので、それはそれで面白いと言われていました。昨年からの西洋の古典名画をモチーフにしたものもあります。倉貫さんの作品は、D館の1階に大きな2つの輪があります。「W至円」です(野風草だよりNo.413)。 藤井匡『現代彫刻の方法』(2014 美学出版)に「呼び寄せられた思考と造形」と題し、倉貫さんの紹介があります。、彼の作品には一貫して「つくる」ことへの問いが存在し、素材や技法を横断させながら「移動」し続けると特徴づけています。そこらあたりの考えを倉貫さんに書いていただきました。

○倉貫徹「現代美術?」
 現代美術はよくわからない、役にたたないし、おもしろくもなければ、感性も刺激されない、心も豊かになるとは思えない。このように考えている人は、普通だと思います。実は現代美術の世界も、工学や化学の世界と同様に発明、発見の世界であり、見たことないものや、新しい視点を提示することに意味と価値を見い出す世界なのです。だからそのことに価値を見い出す、純粋に新しいものを喜ぶ意識がないと、わからない、おもしろくない世界なのです。そのことを理解すれば、それ以上に深くおもしろいのです。
 よく本物そっくりに描いた作品があります。完璧な構図とそれ以上にリアルな描き方、うまいとしか言いようのない絵画があります。しかし、発明、発見のないうまいだけの作品は、技術に対する評価以上には評価はされません。芸術としての評価とは別次元の話なのです。
 もちろん世界の評価は価格に反映します。以前に白髪一雄という作家の作品を買ったときの話です。世界では誰も考えなかった、ロープにぶら下がり足で描く作家です。1962年の作品を、1970年頃10万円でわけてもらいました。1990年に1200万円で売りました。ぼろもうけですね?そして昨年ヨーロッパでのオークションで、同じ頃の作品が2億円以上です。僕の予想では10年以内に10億円以上になると思います。おもしろい世界です。

 6月29日、岡山での教育懇談会の帰り、JR芦屋で降りて、東仲一矩さんのフラメンコ舞踏研究所の生徒発表会「アンダルシアの夜」を見に行きました。昨年のマンドリンクラブ50周年祝賀会での東仲さんの踊りに圧倒されて(野風草だよりNo.442)、是非もっと見たいと思ったからです。生徒さんたちの踊りは華麗で、群舞、2人、4人での踊り、男性の激しい踊り、娘さんの東仲マヤさんのキレのある踊り、いずれも見事なものでした。そしてカンテ(歌い手)の有田圭輔、松木匠さんの腹の底から響き渡ってくる歌声、そして手拍子、ギターの國光秀郎、松井高嗣さんの陰影のある表情豊かな響き、カホン(打楽器)の中村岳さんのリズム、感動してしまいました。最後のアンコールで、ちょっとだけ東仲さんの踊りを拝見することが出来ました。

 東仲さんは、今年の神戸新聞の文化賞を受賞されています(2014年5月3日付)。おめでとうございます。フラメンコは「“瞬間の真実”の芸術。いかに自由で濃密な宇宙をつくれるか」、スペインの土壌に根ざした芸術と東洋人である自分との距離感、「異邦人」としての葛藤の末、「国籍は関係ない。一人の人間として踊る」「僕は僕自身であるために踊るんだと思う。」、「僕は一生、思春期。フラメンコに恋しているから。」

○東仲一矩さんのメッセージ “El Sueno Del Bhemio”(ボヘミアンの夢)
 25歳の最初のスペイン留学から40年が経ちました。早い時の流れ。合計すると15年近くのスペインでの生活。「パスカルの賭け」のように、フラメンコの絶体性に人生を賭け、その世界と私を「一元化」することを求めてやってきました。「99%」の「自己嫌悪」と、残った「1%」の「光」、その「光」を信じ、いつか来るはずの“Un Momento de Verdad”(真実の瞬間)を求めて、また踊り続けて行くでしょう。“Viva Flamenco”

 本学の図書館の入り口、J館の1階の壁(野風草だよりNo.182)に日本画の大作がかかっています。藤原郁子さんによるものです。高槻で個展が開かれていましたので、7月7日にお訪ねしました。ちょうど藤原さんもいらっしゃいましたので、親しく「絵心」を聞かせていただくことが出来ました。いただいた絵葉書の裏にこう書かれていました。「この度は藤原郁子日本画展「季節の贈りもの」にお越しいただきありがとうございました。高槻にご縁をいただいてはや50年、西武様での個展も9回目を迎えます。これからも四季折々の感動を大切に、心に残る作品が描けますよう精進してまいります。今後ともご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。」そのお言葉通りの日本画が並んでいましたが、私はハスの絵がいいなと思いました。