学長・野風草だより

No.498

No.498 2014年8月25日(月)

未知の藝術活動を垣間見る

 歌舞伎は最近よく見ていますが、中村勘三郎(1955~2012)を直接見ることが出来ませんでした。2012年12月の南座での息子の勘九郎の襲名披露の時には(野風草だよりNo.311)、すでに入院中でした。彼の活躍の様子が、10年間密着取材してドキュメンタリー映画になっているとのことで、四条烏丸の京都シネマに見に行きました。「死ぬまで走り続け、夢を見続けていたい」。コクーン歌舞伎や現代劇への挑戦。ニューヨーク・ベルリンなどの海外公演。全国の芝居小屋を訪ねる旅、内子座は行ったことがありました。江戸時代の芝居小屋を模した平成中村座の仮設劇場での公演。壮絶ともいえる彼の生き様が、ナレーションなしで、勘三郎の肉声で語られていきます。90分があっという間に過ぎました。「死ぬまで走り続け、夢を見続けていたい」。この言葉通りの役者人生でした。直接見たかったな。

 見終ってから、COCONの地下で軽く食事をして、さらにもう一本「ジプシー・フラメンコ」を見ました。以前に東中一矩さんのフラメンコの踊りに感激して(野風草だよりNo.492)、本場のフラメンコを見たいと思ったからです。不世出のフラメンコダンサーであるカルメン・アマジャ(1913~1963)の生誕100年を記念してのドキュメンタリー映画です。彼女の実の姪とその娘が、バルセロナを舞台に、アマジャの血と魂を受け継ぎながらフラメンコを踊っていきます。そのステップの見事さ、激しさに息を呑みます。スゴイの一言。合わせてかわいい少年が舞台に立つことを夢見ながら、街角で踊り、母娘の舞台を見つめています。「藝」にいのちを賭ける姿を、2本の映画で堪能させてくれました。パコ・デ・ルシアのフラメンコギターをCDで聞いています。

 京都コンサートホールは、京都の北山通りにあって自宅から自転車で20分ほどで行けますし、音響も素晴らしい施設です。NHK交響楽団の演奏会があったので、急に思いついて行きました。N響は2回目です(野風草だよりNo.493)。クラシックは何となく敬遠していたのですが、まあ聞かず嫌いもなんなんで、まずは直接聞いてみようというところです。この日の演奏曲は、チャイコフスキーの交響曲第4番と、堤剛のチェロによるドボルザークのチェロ協奏曲でした。堤剛さんは日本を代表するチェリストで、ドボルザークのチェロ協奏曲もチョー有名らしいです。チェロの響きというのは、なんか身体と共鳴し合う感じで、気持ちよく家路に着きました。そして、ロストロホーヴィチ、小澤征爾指揮のボストン故郷楽団のCDを買って聞いています。すぐに影響を受けるんですね。次は、バッハの無伴奏チェロ組曲とベートーヴェンの第9交響曲をかじってみるつもりです。

 京都・岡崎の京都国立近代美術館で開かれていた「うるしの近代―京都、「工芸」前夜から―」を見ました。ここも自転車でひょいです。これまで漆器のみの展覧会を見たことはなかったのですが、漆器の美しさと巧妙さに圧倒されました。明治から大正・昭和にかけて、京都の漆藝が西洋文明の影響も受けながら、伝統を革新しさらに新しい美を創造していく姿を目の当たりに出来ました。洋画家としての浅井忠は知っていましたが、図案家として「京都高等工藝学校」(現京都工芸繊維大学)で活躍していたこと、琳派として名高い神坂雪佳が漆器のデザインにも貢献していたことなど、驚きでした。会場を何回も往復して、「漆藝」に魅せられました。疎水沿いに有名な漆器の店「象彦」がありますが、覗いただけで手が出ませんでした。
 8月の夏休み、多くの未知の藝術活動に触れることが出来ました。ありがたいひと時でした。