No.503

No.503 2014年9月1日(月)

JICAのイラク研修で日本農業と水利を語る

 この2年、JICAの技術プロジェクトに協力して、イラクの水利や灌漑に携わるイラク共和国の関係機関職員に対し、日本の農業と水利の歴史を講演してきました(野風草だよりNo.271)。本年は、奈良で行いました。イラク共和国というと原油産出国として有名ですが、ティグリス川とユーフラテス川により形成された肥沃な沖積平野を有する農業国でもあります。GDPの約10%、労働人口の約20%を占めています。近年は近隣諸国でのダム開発などによる国内への河川流入量の減少などで、灌漑排水施設の維持管理技術や節水技術の導入などが課題となっています。

 本年の研修は、8月18日から9月19日までの1か月に及び、東京での研修はもとより、北海道、愛知、奈良、鳥取での灌漑施設の実地見学と研修が行われました。奈良盆地では、白川溜池と広大池の見学を行って、実際に利用している農家から話を聞きました。やはり現場に出向いて直接話を聞くのが一番です。私からは、下のように、アラビア語に訳したレジュメを使いながら、奈良盆地を中心とした江戸時代から戦前までの農業と水利の歴史をお話ししました。もちろん、日本語です。江戸時代の絵農書や奈良盆地の近代の灌漑施設の写真なども見せながら、ヴィジュアル的にイメージできるよう工夫しました。大切なことは、日本には日本の、イラクにはイラクのやり方があって、それぞれの地域風土に合わしたやり方を工夫しなければならないこと、そして現場の農民たちの知恵や経験から素直に学ぶこと、決して上からの強制、トップダウンでは成功しないことを強調しました。さて、どこまで伝わったかな??