学長・野風草だより

No.532

No.532 2014年11月24日(月)

美術の秋は「鳥獣戯画」で

 東山七条の京都国立博物館での「国宝鳥獣戯画と高山寺」を見てきました。大評判になっていて、何時間待ちという噂でしたので、午後8時まで開館している金曜日の夜に出かけました。それでも入館するまで外で1時間半待ち、展示会場で30分待ちました。中高の教科書などでお馴染みですので、ほんまもんを見る機会は今日しかないと、せっかちの私にしてはよく我慢しました。兎や蛙たちが遊ぶ有名な甲巻は、わずか5分ほどの対面で終わりました。馬・牛などの身近な動物や麒麟・龍などの想像上の生き物が登場する乙巻、前半に人間が遊ぶ様子、後半に動物たちが人間のようにふるまう様子を描いた丙巻、いろいろな身分の人たちが様々な技比べをする丁巻は、ゆっくり見ることが出来ました。百聞は一見に如かずで、見れたことで満足満足!

 山口晃の『ヘンな日本美術史』(祥伝社 2012)の第1章を読むと、鳥獣戯画を「私たちが漫画的であると感じるのは、ある種の力の抜けた画調にあるのでしょう。」「このようにわざとふにゃっと描くと云うか、ちょろまかすと云うか、仕上げすぎないのは日本の絵の特徴です。」「別に技能を軽んじている訳ではないのですけれども、むしろそれに宿るものみたいな方に重きを置いていると言えましょうか。」と言われています。辻惟雄『日本美術の歴史』(東京大学出版会 2005)は、外来美術の影響を受けて目まぐるしく装いを変えながらも、その底にいつも変わらずあり続ける日本美術の常数として、「かざり」、「あそび」、「アニミズム」の3つをあげています。先入観で見てしまうのは良くないかもしれませんが、ナルホドナルホドの鳥獣戯画でした。

 新装なった平成知新館では、とくに平安・鎌倉期の高僧の書が興味深かったです。空海の流麗さ、最澄の几帳面さ、法然・親鸞の真面目さ、日蓮の奔放さと、それぞれの高僧の個性が滲み出ていました。谷口吉生の直線的な設計の建物が館前のライトアップされた池水に映り、遠くには京都の夜景と京都タワーが見えてきます。後ろを振り返れば、明治28年に建設された煉瓦造りの明治古都館がライトアップされて、美しく聳立していました。

 岡崎の京都市美術館では、「ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展」をやっていました。19世紀後半から20世紀初めにかけて、欧米の印象派の画家たちを魅了した日本の美を、ボストン美術館所蔵の浮世絵や工芸品で見せてくれます。とくに大胆な構図と色使い、装飾模様は西洋美術に大きな影響を与え、「ジャポニスム」という現象を生み出したのだそうです。マネやドガ、ロートレック、ルノワール、ゴーギャン、モネ、ゴッホなどの作品と並べて、日本の美の影響が具体的にわかるように工夫が凝らされています。チラシのモネ「ラ・ジャポネーズ」は代表的な作品です。

 その帰り、みやこメッセで開かれている「日本盆栽大観展」を覗きました。盆栽と言えば松とか、盆梅、皐月くらいで、お年寄りの趣味ぐらいの認識しかなかったのですが、正直、これが盆栽か!というほど圧倒されました。お恥ずかしい限りです。松でも五葉松、黒松、赤松、蝦夷松など様々あり、真柏、ぶな、もみじ、皐月、梅、一位など実に多くの種類があるのです。そして柿や、さんざし、まゆみなど実のなるものまであるのです。珍しい石の陳列があります。外国人の出品もあります。そして、見ていると、日本の自然がまぶたに浮かんでくるのです。不思議な体験でした。日本の文化として盆栽を堪能させていただきました。眼福です。
 ただし、ここまで仕立てるのには、大変な手間がかかるだろうなと思わずにはいられませんでした。横で即売会をしていましたが、大ぶりの立派な盆栽は、ウン百万円します。私も小さな小さなのでいいから欲しかったのですが、あきらめました・・・