学長・野風草だより

No.537

No.537 2015年1月5日(月)

新年互礼会での挨拶は、「あいさつ」

 新年の雪が融けて、黄色く咲いた蝋梅にヒヨドリがやって来ました。「ピーヨ、ピーヨ」と鳴きながら、花を突っついています。冬来たりなば、春遠からじ。
 大学では、仕事始めで、新年の互礼会がありました。全員での「明けましておめでとうございます」の唱和の後、理事長と私の新年の挨拶、そして学歌の斉唱で締めくくりました。そして20年、10年の永年勤続者の表彰を行いました。今年は30年の方はいらっしゃいませんでした。以下は私の新年挨拶の概略です。

 昨年末、ヤンキースの黒田博樹投手が広島カープに復帰することになりました。大リーグでの約20億円の契約延長を蹴って、4億円のカープを選んだのです。カープファンの私にとってはうれしい限りです。いろいろ事情があろうかと思いますが、彼の談話では、これまで育ててくれたカープ、そしてファンへの「恩返し」と述べていました。マネーだけではないようです。昨年90歳で引退した文楽の浄瑠璃語りの竹本住大夫は、『人間、やっぱり情でんなぁ』(2014 文藝春秋)と、大坂発祥の古典芸能である文楽の神髄をこのように言われています。
 昨年99歳で亡くなったチェリストの青木十良は、「音楽の仕事、芸術の仕事をしながら、自分が何を求めているんだろうと、ずっと考えてきたわけです。それが『エレガンス』なんだと、つい最近やっと発見しました。」(バッハ 無伴奏チェロ組曲No.4)。
 昨年もじたばたと生きてきましたが、「恩返し」「情」「エレガンス」など、味わい深い言葉に出会えたことは、ありがたいことでした。60なんぞは、まだまだひよっ子かも知れません。迷いながら、悩みながら、天地を貫く道理を求めて歩いていくしかありません。
 昨年、一年間学生さんと接してきて、確かな変化を感じます。皆さんは、いかがですか。ゼミや講義はもちろん、新入生キャンプ、教育懇談会、オープンキャンパス、クラブ・サークルの課外活動、ZEMI-1グランプリ、奨学論文、ビブリオバトル、きさんじ塾、だいけいだい塾、キッズカレッジ、マナーアップキャンペーン、産業セミナー、インターンシップ、就活塾などなど、あげればきりがありません。
 明るくなった、活き活きしてきた、外へと発信できるようになった、そんな感想をもった一年でした。「ゼミの大経大」、「マナーの大経大」、「就職の大経大」が確実に根付き始めていると思います。サポートをしていただいた教職員の皆さん、ありがとうございました。心より感謝申し上げます。

 2015年、この一年、皆さんにお願いしたいこと、私が率先して実行したいこと、それは「笑顔であいさつ、声かけをしよう」ということです。2011年の新年互礼会でも、「あいさつ」を呼びかけましたが(野風草だよりNo.28)、改めて「あいさつ」で学内の雰囲気を家族的な温かいものに変えていこうではないですか。たかがあいさつ、されどあいさつ。大上段に大事を振りかざすのではなく、すべては小事から。7500人の中規模大学だからこそ出来ることです。
 哲学者の上田閑照は、「私は、私ならずして、私なり」という日本哲学の根本は、お辞儀をする挨拶に表現されていると言われています(『私とは何か』2000 岩波新書)。京大総長の山極寿一は『「サル化」する人間社会』(2014 集英社インターナショナル)で、サルは個体の欲求を優先する序列社会であり、ゴリラは相手と共感して勝ち負けのない平等社会である。霊長類の系統樹から言えば、ヒトはサルよりもゴリラに近く、もともとは平等のゴリラ的社会であったが、近年サル的序列社会に変わってきているのではないかと警鐘を鳴らしています。
 相対してまずは目と目を合わせるあいさつは、「恩返し」「情」「エレガンス」の共感の始まりではないでしょうか。これから、あいさつを通じて、学生たちにとって大経大を「第2のホーム」にしていきませんか。