学長・野風草だより

No.559

No.559 2015年2月22日(日)

東京への旅、富士山のご利益

 東京へ新幹線で出かけました。京都をあとにすると、琵琶湖が見えてきます。遠方の比良の山々に雪が積もっている姿をしばし見入りました。学生時代に友だちに誘われて登ったこともありました。遠くに小さく彦根城が見え、「ひこにゃん」に会ったことを思い出しました。伊吹山、木曽三川、浜名湖、天竜川、大井川、静岡の茶畑を過ぎると、いよいよお目当ての富士山です。晴れていても見えるわけでもなく、雪をかぶった富士山が見えると、ラッキー、今回の旅はうまくいくと思えます。
 最近、青山文平の時代小説を読んでおり(『約定』、『鬼はもとより』など)、この日の車中は『かけおちる』(2012 文藝春秋)でした。カバーがとんぼの江戸小紋の甲府印伝でした。一昨年、全国大会に出場するハンドボール部の応援で甲府に行ったことを思い出しました(野風草だよりNo.441)。たまたまですが、この日に締めていたネクタイが甲府で買ったとんぼの柄の甲斐絹(かいき)でした(写真の右から2つめ)。その時に見た富士山は身延線からでしたので、この日の富士山とは趣きが違っていました。甲府印伝はとんぼの印鑑入れと波うろこの筆入れを買い、愛用しています。今回は印伝にご縁があるのだと思い、浅草へ行って、写真の左端のとんぼの扇子入れを買いました。因みに写真の右端の富士山の柄(地は小桜)の甲斐絹は、富士山が世界遺産に登録された記念に作ったそうです。

 銀座をぶらりぶらり、2013年に新しくできた5代目の歌舞伎座へ行ってみました。夜の部で「一谷嫩軍記」(いちのたにふたばぐんき)のうち熊谷陣屋の前段の「陣門・組打」を、熊谷次郎直実を中村吉右衛門、無冠太夫敦盛を尾上菊之助で観劇しました。最上階ですのでオペラグラスです。近くから大向うの「播磨屋!」、「音羽屋!」の声がかかります。吉右衛門は「俊寛」を見て以来ファンになり(野風草だよりNo.232)、口跡がよく立ち姿も立派で今回もしびれました。菊之助は初めて見ましたが、美しい!!!

 その後、「神田祭」で尾上菊五郎も初めて見ました。今回の観劇は、尾上菊五郎・菊之助父子を見るのが一つの目的でした。失礼ですが、菊五郎さんもお歳ですので。最後は、河竹黙阿弥作で「水天宮利生深川」(すいてんぐうめぐみのふかがわ)です。松本幸四郎が没落士族の悲哀、狂気、正気を見事に演じ、親子の情愛、周りの温情、水天宮のご利益を描いていきます。明治初期が舞台というのは新鮮でした。
 十分に満足して、近くの銀座ライオンでビールを飲みながら、公演のパンフを開けて余韻を楽しみました。表紙は100歳の長寿で梅を描き続ける郷倉和子の「紅白梅」でした。3月から御影の香雪美術館での「郷倉和子 百寿の梅」を見に行くつもりです。これもまたご縁です。

 翌日は、新橋駅近くの博品館劇場で、仲代達矢と白石加代子、益岡徹のストリンドベリ原作「死の舞踏」を観劇しました。白石加代子の一人芝居がすばらしかったので(野風草だよりNo.436493)、仲代達矢との共演でさらに白石加代子ワールドを堪能しようという目論見です。「こんなひどい夫婦見たことがない、夫、傍若無人、傲慢不遜の暴君(仲代)、妻、辛辣無比、凶暴過激の悪魔(白石)、その間に挟まれて、一見いい人、でも食えない奴(益岡)、かくして三つ巴のバトルが始まる、ほとんどコメディ、ああ面白い、ああ楽し、人の不幸は蜜の味、毒を出して、心さっぱり、心すっきり」。

 3人のセリフだけで進行するドラマリーディングですが、飽きることなく終盤まで笑わせながら、人生の愛憎、表裏をえぐりだしていきます。最後に3人が正装してワルツを踊って、大団円となります。椅子が並べられている舞台でのセリフだけの進行ですが、3人の表情、しぐさ、絡みを見ていくことで、様々な状況がイメージ出来ていくのです。役者っていうのはすごいんだと、実感させられました。ナマの仲代達矢(82歳!)を見ることが出来たのも良かったです。上映予定のドキュメンタリー映画「仲代達矢 役者を生きる」も見てみよう。
 大満足の東京の旅、富士山のご利益かな・・・