学長・野風草だより

No.562

No.562 2015年3月14日(土)

1516名の旅立つ卒業生・修了生へ

 午前中は生憎の小雨でしたが、午後からは晴れ上がりました。総代への卒業証書・学位記の授与では、私のゼミ生が地域政策学科の総代となり、やはりうれしかったです。26年前の初めてゼミを持った時の女子学生が経済学部の総代となって以来です。各人のコメント、卒業生代表の答辞など、厳粛に進められました。私の式辞の時、私語を注意しなければならなかったのは残念ですが。グリークラブ、吹奏楽総部の皆さん、ありがとうございました。以下は、私の式辞です。


“大経大PRIDE”のバトンを受け継ぐ
 各学部の卒業生の皆さま、そして各大学院研究科の修了生の皆さま、卒業・修了おめでとうございます。また、本日ご臨席たまわったご父母、学費負担者の皆さまに心よりお慶び申し上げます。4年間の学生生活はどうでしたか?満足出来たでしょうか。
 本学は、1932年の浪華高等商業学校に始まり、昭和高等商業学校、女子経済専門学校などを経て、1949年に現在の大阪経済大学となり、2012年に創立80周年を迎えました。卒業生は今日卒業、修了される皆さん1516名を加えて、91,810名と9万名を越えています。皆さんは81期生にあたります。80年、すごいもんだと思いませんか。先輩たちからのバトンをしっかりと受け取ってほしいと思います。そのバトンには、“大経大PRIDE”と書かれていると思います。これからは大経大の卒業生であることに誇り、PRIDEをもって生きていってほしいと思います。

長岡京室内アンサンブルの音楽を楽しむ
 最近、京都の長岡京室内アンサンブルの演奏会を聞きました。モーツァルトの弦楽曲2つとヴィヴァルディの「四季」でした。何よりもメンバーの皆さんが、じつに個性豊かに楽しく演奏されていることに驚きました。クラシックは、堅苦しいと思って、いつも「正座」して聞いている感じでしたが、演奏会では、リラックスして、聞くことが出来、楽しい感じを自宅まで持ち続けました。私は楽器をしているわけではなく、ただ好きでジャズや尺八とか、中島みゆきなどの音楽を楽しんでいるだけですので、音楽的にどうのこうのと評価はようしませんが、「自由」でいて、しかも「調和」がとれているなと感じました。私にはそれで楽しい音楽を味わえたということで十分幸せなひと時でした。
 音楽監督である森悠子さんの著書『ヴァイオリニスト 空に飛びたくて』(春秋社 2010)によると、長岡京室内アンサンブルは「地域ごとに独自の音色を持つオーケストラがあるヨーロッパのように、地域独自の音色・思想を持った演奏団体を育てたい」「日本一にとどまらず、世界に飛び出す合奏団」を目ざして、1997年以来活動を続けています。楽譜に捉われることなく作曲家が表現しようとした響きに乗っていくこと、その響きの中のある宇宙感を感じることで、自由でいながら自ずと調和のとれたアンサンブルが実現していくのだと言います。CD解説をされている大阪音楽大学の中村孝義先生は存じ上げていて、お聞きしたところ、長岡京室内アンサンブルのような演奏スタイルは日本では稀有ですが、海外ではよくあるらしいです。音楽を楽しむ、音楽を人生と置き換えたらどうでしょうか。自由に人生を楽しみながら、周りの人たちを気遣い調和を取っていく、そこに人生を生きていく妙味があるのかもしれません。

大沢文夫さんの飄々として学を楽しむ
 もう一つ、別の話をします。最近生物物理学者の大沢文夫さんの本『飄々楽学』(2005 白日社)という本を読みました。大沢さんは、夏目漱石の友人でもあった有名な物理学者である寺田寅彦の孫弟子にあたり、日本での生物物理学の開拓者の一人です。現在94歳でご健在です。飄々として学を楽しむことを強調されていました。
 新聞で、こんなことを言っていました。「いい研究をするにはまず損得勘定を捨てることです。早く論文が書けそうだとか、いい就職先が見つかりそうだとか。大切なのは、本当に面白いと思えるかどうか。です。」「たしかに、昔はのんびりしていた面もありますが、自分で考える時間が必要であることには変わりません。最小限のお金があれば、面白いことはいくらでもできます。それを探そうとするかどうか、です。そしてそんなことを見つけるような人を、きちんと評価することが大切です。」と述べられています。学問、研究を人生に置き換えても、同じことが言えるのではないでしょうか。

初代学長黒正巌博士の言葉「道理は天地を貫く」
 皆さんはこれから社会に旅立ちます。なかなか思うようにはいかないことが多いでしょう。大きな声で怒鳴りつける上司、平気でウソをつく同僚、最後は責任逃れする、おれがおれがの自分の欲得しか考えない、人の手柄を横取りする、まわりはごますり一筋、もう嫌になることばかりかもしれません。そんな時ふっと立ち止まって、人生にとって大切なことはいったい何だろうと、考えてみてください。長岡京室内アンサンブル、大沢文夫さんは、「人生を楽しむ」ということを教えてくれたように思います。皆さんもしんどい時、辛い時、逃げるのではなく、「人生を楽しもう」というスタンスを思い出してください。
 初代学長の黒正巌博士は、「道理は天地を貫く」と言われました。いろいろなことがあっても、結局は人の生きるべき道理はこの世界を貫いているのだと。そんなことあるかいと確信が持てないかもしれません。でもこれから人生を歩みながら、大経大オリジナルの世界で一つしかないこの言葉、「道理は天地を貫く」を覚えておいてください。きっと皆さんの人生を支えてくれること思います。

贈る言葉「おかげさま」
 最後に私から皆さんに、一つ言葉をお贈りします。「おかげさま」、私は故郷の松山で昨年数えの90歳で亡くなった母から教えられたこの言葉が日本語の中で一番美しいと思っています。おれがおれがの我の世界ではなく、「おかげさまで、何とかやれてます、生きて生かされています」と感謝し祈る。これが私にとって生き方の原点であり、研究や教育の基本軸です。今日帰ったら、大学に行かせてもらったお父さん、お母さん、学費を負担していただいた方に、卒業証書を見せて、「ありがとうございました、おかげさまで卒業できました。」と感謝の言葉を述べて欲しいと思います。
 私たち教職員は、皆さんとともに“大経大FAMILY”家族として過ごせたことを感謝します。ありがとう。大経大の卒業生であることを誇りに思って、“大経大PRIDE”を持って、これからの人生を生きていってください。そして大経大を第2のホームとして、母校を忘れないでいて下さい。卒業おめでとう。以上で学長としてお祝いのメッセージといたします。