学長・野風草だより

No.569

No.569 2015年4月1日(水)

新しい仲間を迎えて、入学式での式辞

 入学された新入生の皆さん、おめでとうございます。また、本日ご臨席賜りましたご父母、関係者の皆さまに対しましても、心からお慶び申し上げます。本日、ここに学部生・大学院生合わせて1945名の新入生を迎えられたことを、本当にうれしく思います。

 本学は、1932年の浪華高等商業学校に始まり、昭和高等商業学校、女子経済専門学校などを経て、1949年に現在の大阪経済大学となり、2012年に創立80周年を迎え、今年で83年になります。その間、私たちを見守ってくれたシンボルツリーがあります。J館とB館の間にある大きな楠です。あとでみんなで一緒に学歌を歌いますが、2番に「大樟の蔭は裕々、夏風そよぐ、・・・♪」とあります。80年を越える伝統は、これまでに9万人を越える卒業生を輩出し、社会で活躍しています。今日から皆さんはその伝統を受け継ぐ、大阪経済大学の学生です。大阪経済大学の学生であることに誇り、PRIDEをもって4年間を過ごしてください。

 今日の入学式にあたり、皆さんにお伝えしたいことは、3つです。まず第1に、本を読もう。図書館を利用しようということです。今はネットの時代、皆さんは全員と言っていいほどスマフォを持っていると思います。そうした時代に、本を読む、図書館なんて時代遅れかもしれません。だからこそ、本を読もうと訴えたいのです。
 D館の奥にある図書館のエントランスの庇に書かれている言葉は、何だかわかりますか?“Veritas liberabit vos”というラテン語です。新約聖書のヨハネによる福音書の一節で、「真理はあなた方を自由にする」という意味です。国会図書館などにも掲げられており、読書によって真理を獲得することで、人間としての自由な生き方を実現できるということでしょう。皆さん、スマフォで得られる情報、知識とはまた別の世界が開けてくることでしょう。どしどし図書館を利用して、本を読んでください。
 もちろん、映画のDVDもたくさん置いていますから、息抜きに入ってもいいですよ。

 第2にお願いしたのは、日本語で考えてみようということです。当たり前ですよね。私が話しているのは日本語、皆さんが聞いてわかるのも日本語だからです。でも今はグローバルの時代、英語を話せなくっちゃ。わざわざ日本語なんて時代遅れに思われるかもしれませんね。今、4冊の本を紹介しています。最近出たばかりの本です。流行りの日本バンザイ論を言っている本ではありません。『日本の感性が世界を変える』の著者である鈴木孝夫は、何か国語も話せる著名な言語学者ですが、日本の文明は2枚腰文明で、自然に対する節度や畏敬の念を持った古い古代的なアニミズム的な側面を基盤に持ち続けながら、西洋的な文明を受け入れてきたという特徴を持っていると言います。この2枚腰の日本文明の特徴は、今後の世界に対して有益な指針を与えられるだろうと述べています。

 長年にわたり科学雑誌の編集に携わってきた科学ジャーナリストの松尾義之氏は、『日本語の科学が世界を変える』で、古代から中国などの大陸文明を、江戸時代から明治時代には西欧文明を受容しながら、外国語の知を翻訳して日本語の知識体系に取り込んできたのが日本の科学の歴史的な特徴であると言います。今はグローバルだから何が何でも英語の時代だと錯覚しがちですが、私たちは日本語で科学をすることが可能であると言います。

 日本の倫理学を開拓した東京大学の和辻哲郎の学問の系譜をひく竹内整一は、漢語や翻訳語、カタカナ用語の氾濫でかくれてしまっている日本語、古くからのやまと言葉に込められている自然や他者への関わり方を見直してみようと言います。宮沢賢治の英語への翻訳者として知られるパルバースは、英語・ロシア・ポーランド語・日本語を使いこなしますが、日本語こそ「世界共通語」にふさわしいと言います。何故でしょうか。実際に読んでみて考えてみてください。私たちの根っこは、日本語、日本文化にあります。

 3番目。最後にちょっと難しい言葉を一つだけお伝えして、終わりにします。本学の前身である戦前の昭和高等商業学校の校長先生で、戦後1949年に本学の初代学長を務めた黒正巌博士の言葉に「道理貫天地」というのがあります。これは世界で、日本でオンリーワンの大経大オリジナルの言葉です。この言葉を刻んだ石碑がキャンパスにありますから、あとで学内を探検して見つけてください。
 道理とは何か、人の生きる道、理。いかに生きるか、いかに死ぬるか。道理は、世界をそして目に見えない天地をも貫いているんだ、と黒正博士は言われたのです。各人各様の解釈でかまいません。正解はありません。それが大学で学ぶということです。死ぬまでわからないかもしれません。それもおもしろいんじゃないかな。勉強しながら、本を読みながら、クラブやサークルをしながら、アルバイトをしながら、友達と話しながら、ぼっーと一人で考えながら、「道理は天地を貫く」、考えてみてください。大経大でしか学べないこの言葉、覚えていてほしいのです。

 あらためて新入生の皆さん、おめでとう。これから私たち教職員と一緒に大経大での学生生活を作っていきましょう。以上で、皆さんへのお祝いのメッセージといたします。ありがとうございました。