学長・野風草だより

No.649

No.649 2015年10月22日(木)

音楽アラカルトで楽しむ

 初秋の雨上がり、紅葉の葉にアゲハチョウが飛んできて止まっています。動きません。どうしたの?以前にもアゲハチョウを紹介しましたが(野風草だよりNo.616)、こうした昆虫たちが庭に来るのは、自宅で仕事をしている時、楽しみになります。秋にはメジロやヒヨドリが来ますが動きが早すぎて、写真にはよう撮りません。トカゲやヤモリもいますし、吉田山の麓ですのでイタチやヘビも出てきますが、こちらが撮る気になりません。こうして季節が夏から秋、そして冬へと動いていくのを感じます。

 ここんとこクラシック音楽にちょっかいを出しています。8月には、中之島のフェスティバルホールへ、小林研一郎指揮の大阪フィルハーモニー交響楽団の「3大交響曲の夕べ」を聞きに行きました。シューベルトの「未完成」(交響曲第7番)、ベートーヴェンの「運命」(交響曲第5番)、ドヴォルザークの「新世界より」(交響曲第9番)です。いずれもチョー有名ですが、今まで一度も生演奏では聞いたことありませんでしたので、これはお得と思い、そしてお釣りがくるくらい満足して帰りました。最前列で聞きましたので、75歳とは思えぬコバケンの激しいタクトの振り、髪を振り乱してのパフォーマンスを堪能できました。そして馴染みのある3つの交響曲でしたので、すんなりと聞き入ることができました。アンコールは、定番のダニーボーイでした。
 「炎のコバケン」のHPには、次の言葉が書かれていました。「指揮者は作品と対峙したとき、作曲者や作品のさまざまな背景を探求し、一つ一つの音に秘められた謎を、行間の宇宙を解き明かそうとします。そして作品と自らの感性がまさに融合しようとする瞬間、新たなる世界の発見に心の高まりを覚えるのです。それをタクトで表現しえたとき、音楽が色彩豊に奏でられ、仲間たちと至福のひとときを共有することができるのです。」

 9月には、東京混声合唱団をいずみホールで聞きました。人間の声が、響きがすばらしいと思うようになったのは、ベートーヴェンの第9(野風草だよりNo.547)やオペラ(野風草だよりNo.591618)を聞いてからです。本学のグリークラブも素晴らしいですが、プロの合唱団を一度聞いてみようと思いました。1956年に創立された日本を代表する合唱団らしいです。この日の指揮者は大谷研二、ピアノは斎木ユリ、ソプラノ・アルト・テノール・バスの4声で34名の混声合唱。三善晃作曲、高田敏子詩の「嫁ぐ娘に」(1962)と、三善晃作曲、谷川俊太郎詩の「クレーの絵本 第2集」(1980)が歌われました。この日の歌声、クレーについては、9月の卒業式の時にお話しさせていただきました(野風草だよりNo.634)。高田敏子詩の「かどで」、「あなたの生まれたのは」、「戦いの日々」、「時間(とき)はきらきらと」、「かどで」と歌い継がれていくのを聞きながら、じーんと胸に広がってくるものは何でしょうか。三善晃は、「ひとに『倖せに』と、祈りの言葉を言うとき、私の中で、神の意志と人間の罪がなじみ合う。」と言っています。
 後半のプログラムは、「この20年、愛された日本の合唱曲選」のテーマで、10曲が歌われました。1970年代から今日に至るまでの代表的な合唱曲を取り上げながら、時代相、歌に込められているメッセージを考えてみようという意欲的な試みでした。合唱曲に縁遠い私には、知っている曲が一つもなく、ぴんと来なくてちょっと残念でした。素人なりに良かったなと思ったのは、谷川俊太郎作詞・鈴木輝昭作曲「きみ」(1994)、谷川俊太郎作詞・松下耕作曲「信じる」(2004)でした。ステージの団員たちの歌う喜びが客席まで伝わってきました。

 長岡京室内アンサンブルには惚れています(野風草だよりNo.553)。CDでもよく聞いています。第6集「裸の島・四季」の林光作曲の「3つの映画音楽」、第4集「東洋と西洋」の武満徹作曲の「3つの映画音楽」、何度聞いても飽きません。やはり日本人の感性が共響するのでしょうか。10月には、長岡京室内アンサンブルでバイオリンを弾いている高木和弘を聞きに、京都コンサートホールへ出かけました。総監督の森悠子が教えているくらしき作陽音楽大学の若手メンバーを中心とした弦楽合奏団との協演です。N.パガニーニ作曲・松崎国生編の「ヴァイオリン独奏と弦楽オーケストラのためのグランドファンタジー1027」。松崎国生は団員の一人です。42歳の若さですが、高木和弘の素晴らしいテクニックに酔いました。続いて有名なA.ヴィヴァルデイの「四季」が、森悠子も入って演奏されました。20歳の若手もおり、若々しいキレのある演奏でした。ステージで音楽を演奏する喜び、客席で音楽を聞く喜び、共有できる演奏会に巡り合えて、この日も幸せでした。クラシックと言っても、私はフォーマルでかしこまった雰囲気ではなくて、こうしたリラックスして喜び合えるスタイルが好きなのでしょう。

 クラシック音楽もいいですが、ジャズもいいですよね。山下洋輔のステージはこれまで2回ほど見ましたが(野風草だよりNo.574)、1988年以来メンバーを変えていない山下洋輔ニューヨーク・トリオを聞きに、10月22日兵庫県立芸術文化センターに参りました。ここは音響がいいので大好きです。ベースのセシル・マグビーは、何と80歳です!ドラムスのフェローン・アクラウは60歳の若手?ドヴォルザークの「新世界より」の第4楽章が演奏されて、ちょいといい気分でした。大フィルのコバケンもいいが、73歳の山下もいいね。昨年12月にはここで、ビッグバンドを率いて「新世界より」の全楽章を演奏したらしいです。聞きたかったな・・・CDも発売されています。

 定番の「クルデイッシュ・ダンス」、「スパイダー」や、あんたがたどこさのジャズ版である「仙波山」など、軽妙なトークで進行させながら、演奏になると一心不乱にピアノと格闘するというか、酔いしれているというべきか。今宵も音楽の喜びに浸ることができて、大満足でした。ふだんよく聞いている、私の好きな能管・笛奏者の藤舎名生が加わっているN.Y.トリオのCD「パシフィック・クロッシング」(2003)と結成25周年記念のCD「グランディオーソ」(2013)を持参して、終了後にサインをいただき、これまた宝物が増えました。次の演奏会の時には、山下が加わっているテナーサックスの武田和命のCD「ジェントル・ノヴェンバー」(1979録音)にサインしていただこう。