学長・野風草だより

No.659

No.659 2015年11月30日(月)

紅葉の秋に琳派・クレー

 今年の京都の紅葉は、イマイチだったとの噂です。近くの吉田山、真如堂あたりを紅葉狩りしましたが、そう言われたらそうかなというくらいです。我が家の庭のいろはもみじは、植えて4年になりましたがやっと根付いて馴染んできたのか、今までで一番きれいな紅葉でした。山法師の葉が真っ赤に色づき、白木蓮の葉が茶色になっています。風や雨のあとは、一面落ち葉だらけです。故郷で子供の頃、父親と庭で落ち葉焚きをしたのを思い出します。
 ベランダの物干し竿に、スズメバチがやってきて、じっとしています。どうしたの?

 琳派誕生400年ということで、京都では各所で琳派展が開かれています。京都国立博物館では、有名な俵屋宗達の「風神雷神図屏風」のホンマモンが見られるということで、出かけました。建仁寺の本坊を上がったところのものは、高品質のコピーですので、是非とも本物をと思った次第です。でも、コピーのほうが色鮮やかでしたね。それと、尾形光琳、酒井抱一の模写が同時に見られるというのが、今回の展覧会の目玉でした。古田亮『俵屋宗達』(2010 平凡社新書)によれば、この3点が同時に陳列されるのは、1903、1940、2006以来4度目だそうです。3人の画家の意図、評価などは、是非古田の本をお読みください。

 琳派の国宝、重文などがずらりと展示されています。茶碗、焼物、硯箱、蓋物、小袖、屏風、色紙などなど、圧倒されます。私が感じ入ったのは、本阿弥光悦書・俵屋宗達画「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」(重文)、俵屋宗達筆「蓮池水禽図」(国宝)、尾形乾山作「松波文蓋物」(重文)、酒井抱一筆「夏秋草図屏風」(重文)などです。どちらかというと、琳派にしては地味系のほうがしっくりきました。金粉・金箔を使ったのもいいですが、好みですかね。
 京都国立博物館の公式キャラクター「トラりん」登場!。モチーフは尾形光琳の「竹虎図」からとっており、名付け親は佐々木丞平館長で「虎+琳派⇒トラりん」らしいです。京博は次々と新しい機軸、試みをしていきます。私が度胆を抜かれたのは、2003年のスター・ウォーズ展でした。あれから京博は走り続けていますね。

 パウル・クレー(1879~1940)の絵については、東京混声合唱団で聞いてから(野風草だよりNo.649)、卒業式、17歳からのメッセージなどでもお話ししています(野風草だよりNo.634657)。実物を見ようと、神戸の脇浜海岸通りの兵庫県立美術館へ出かけました。「パウル・クレー~だれにもないしょ。~」。あれから、谷川俊太郎の『クレーの絵本』(1995 講談社)、『クレーの天使』(2000 講談社)など、幾つか読んできました。でも、正直、頭がこんがらがりました。最近の研究によって、作品の下塗りの層や裏側にもう一つの別のイメージが組み込まれたりなど、クレーが自らの作品にしかけた暗号が明らかになってきたそうです。今回の展示は、その謎、暗号を解き明かしてくれる展示になっているそうです。
 作品は制作年代順ではなく、「1.何のたとえ、2.多声楽―複数であること、3.デモーニッシュな童話劇、4.透明な迷路、解かれる格子、5.中間世界の子どもたち、6.愚か者の助力」と、テーマごとに展示されています。「だれにもないしょ。」のサブタイトル通り、私にはちょっと難しかったです。

 クレーの孫のアレクサンダー・クレーは、カタログの中で次のように述べています。「とりわけ晩年の作品には、日本人が慣れ親しむ要素が目にとまります。簡潔さのうちに本質だけを際立たせ、ときには禅画と似たような感情を伝える、黒い太線や墨で描かれた作品群です。・・・彼は無意識のうちに、俳句の精神に通じていたのだとわたしは思います。なぜなら俳句もまた、受け手が読み込むことで、初めて作品として完成するからです。わたしは、こうしたクレーのうちに、日本人が重んじる繊細さを見い出します。」
 クレー展を見た方から、見てると何だか気持ちよく眠くなったという感想を聞きました。私は、何とか暗号を解き明かそうと気張っていたのかもしれません。もっとスッーと作品に入り込めば良かったかのしれません。谷川俊太郎などは、どんな風に鑑賞したのだろう。その後、前田富士男・宮下誠・いしいしんじ他『パウル・クレー 絵画のたくらみ』(2007 新潮社)などを読みながら、何とか暗号を解き明かしたいと躍起になっているのであった・・・