学長・野風草だより

No.676

No.676 2016年1月27日(水)

日本経済研究センターのセミナーに参加

 公益社団法人・日本経済研究センターは、ホームページに、1963年に日本経済の発展に寄与することを目的に事業を開始した非営利の民間研究機関です。学界、官界、産業界との幅広いネットワークを持ち、内外の財政・金融・経済・産業・経営などの諸問題について、調査・研究をしています、と紹介されています。本学もアカデミー会員になっており、セミナーなどの案内をいただいております。本学教員の研究内容と関りが深そうだと、先生方にいかがですかと紹介して、出席していただいています。
 1月は、私が2つ出席いたしました。1月8日は、大阪大学社会経済研究所の大竹文雄先生による、「日本経済の課題と展望―経済学で再考する」というお話でした。大竹先生は『日本の不平等』(2005 日本経済新聞社 日経・経済図書文化賞などを受賞)など多数の著作があり、2012年よりNHKテレビのEテレ「オイコノミア」に出演されて、行動経済学の立場から解説をされています。
 この日は、財政赤字の実態、税制改革の方向性、実質賃金が上がらないのは、の3点を図表でわかりやすく説明していただき、次いで行動経済学のさわりを私のような門外漢にもわかるように紹介していただいて、どのようにしたら経済政策に活かせるのかをお話しいただきました。新年のセミナーということで、最後に『「幸せをお金で買う」5つの授業』(エリザベス・ダン/マイケル・ノートン著 2014 KADOKAWA/中経出版)を紹介していただきました。①経験を買う②ご褒美にする③時間を買う④先に支払ってあとで消費する⑤他人に投資する。さて、いかがですか?お年玉として?大竹先生の『経済学のセンスを磨く』(2015 日経プレミアシリーズ)を50名ほどの出席者全員にプレゼントしていただきました。

 1月27日は、神戸大学経済経営研究所の髙槻泰郎先生による、「リレーションシップバンキングの源流に学ぶ―江戸時代大坂両替商の融資戦略―」のお話を聞きました。髙槻先生のことは、本学の客員教授をしていただいたことのある宮本又郎大阪大学名誉教授からお聞きしたことがあり、『近世米市場の形成と展開―幕府司法と堂島米会所の発展』(2012 名古屋大学出版会 日経・経済図書文化賞)などの著作があります。また、本学の髙橋亘教授からも科研でご一緒しているつながりから、若手の素晴らしい研究者ですよとご紹介されていました。
 当日は、江戸時代をいかに見るか、大坂米市場の取引制度、米切手を軸とする金融の展開、大名金融とは、リレーションシップバンキングの成立を、豊富な史料とわかりやすい図表でお話しいただきました。私は農業史が専門ですので、米市場のことは興味深く拝聴しました。経済史・金融史の視点から、幕末の西南雄藩の活躍などの政治史を見通せないかという研究の展望を語られましたが、とても新鮮な視点でした。そして、髙槻先生が大変楽しそうにお話しされているのが印象的でした。お話の中で出てくる大坂の豪商「加島屋」は、ちょうど朝ドラの「あさが来た」のヒロイン広岡浅子の嫁入り先です。何となく身近に感じられます。この朝ドラの監修には、宮本先生のお名前が出てくるんですよね。

 講演終了後、しばしお話をさせていただき、私が感じた疑問点などについてお考えを聞きました。私がちょうど読んでいた澤田瞳子の『若冲』(2015 文芸春秋)の最後に、監修者としてお名前が出ていますよねと言うと、澤田さんは熱心な方で京の青物問屋などについてよく調べていて、わからないことがあると質問されてくるんですよと言われていました。こうしたセミナーに参加させていただくことで、専門外の最先端の研究に触れることが出来、「井の中の蛙」「専門バカ」を脱して視野が広まっていくのは、ありがたいことです。