学長・野風草だより

No.683

No.683 2016年4月1日(金)

新入生に贈る言葉

 入学された新入生の皆さん、おめでとうございます。また、本日ご臨席賜りましたご父母、関係者の皆さまに対しましても、心からお慶び申し上げます。本日、ここに学部生・大学院生合わせて2026名の新入生を迎えられたことを、本当にうれしく思います。
 本学は、1932年の浪華高等商業学校に始まり、昭和高等商業学校、女子経済専門学校などを経て、1949年に現在の大阪経済大学となりました。2012年に創立80周年を迎え、今年で84年になります。皆さんが35歳ころになる2032年には100周年を迎えます。これまでに9万3千人を越える卒業生を輩出し、社会で活躍しています。今日から皆さんはその伝統を受け継ぐ、大阪経済大学の学生です。大阪経済大学の学生であることに誇り、“大経大PRIDE”をもって4年間を過ごしてほしいと思います。

陽光桜に込められたメッセージ
 今日はみなさんに3つのことをお話しします。まず第1。春はやはり桜ですね。スクリーンに映っているのは、陽光桜という桜です。私はしぶい脇役で有名な笹野高史さんが初主演した「陽光桜」という映画をみて、初めて陽光桜のことを知りました。愛媛県の高岡正明さんという方が、作り出したものです。本当にあった話です。
 高岡さんは第2次世界大戦中に青年学校農業科の教員を務め、死地に向かう教え子たちに「お国のために戦ってこい。またこの桜の木の下で会おう」と見送りました。多くの教え子たちが戦死し、敗戦後に自責の念に苦しんだ高岡さんは、亜熱帯のジャワから極寒のシベリアまで各国で散っていった教え子たちへの慰霊の思いと、忌まわしい戦争を二度と繰り返してはならいとのメッセージを届けようと、教え子たちが戦死した異国の気候でも咲く新種の桜を作ることを決意しました。私財を投げ打った約30年間に及ぶ試行錯誤の末に、30度の暑さにも強く零下30度の寒さにも耐えられる「陽光桜」を生み出したのです。そして、高岡さんは無償で国内外に約5万本に上る陽光桜を届けたそうです。
 紅吉野とも言われて美しく、厳しい環境でも咲いてくれます。私の故郷愛媛県で開発された桜ということもあり、早速ホームセンターで探しました。やっと1本見つけて買い、鉢に植えたところ、今年もう咲いてくれました。右の写真です。高岡さん、ありがとうございます。いい花見ができました。

黒正巌博士の「道理貫天地」
 2つめ。本学の前身である戦前の昭和高等商業学校の校長先生で、戦後1949年に本学の初代学長を務めた黒正巌博士の言葉に「道理は天地を貫く」というのがあります。戦前に学徒出陣で戦地に向かう学生たちの卒業アルバムに書いたものです。いかなる状況があろうと、道理は天地を貫いているんだ。そして、「生きて帰ってこいよ」と言って、送り出したのです。
これは世界で、日本で、オンリーワンの大経大オリジナルの言葉です。スクリーンに映っているように、この言葉を刻んだ石碑と黒正巌博士の胸像がキャンパスにありますから、あとで学内を探検して見つけてください。
 道理とは何か、人の生きる道、理。いかに生きるか、いかに死ぬるか。道理は、世界をそして目に見えない天地をも貫いているんだ、と黒正博士は言われたのです。各人各様の解釈でかまいません。正解はありません。それが大学で学ぶということです。高校までのA、B、C、Dの選択肢4つに必ず正解がある問題から、答えがなければEをマークする問題です。死ぬまでわからないかもしれません。それもおもしろいんじゃないかな。勉強しながら、本を読みながら、クラブやサークルをしながら、アルバイトをしながら、友達と話しながら、ぼっーと一人で考えながら、「道理は天地を貫く」、考えてみてください。大経大でしか学べないこの言葉、覚えていてほしいのです。

長田弘『世界は1冊の本』
 最後にもう一つ、皆さんに言葉を贈ります。「世界は1冊の本」である。私の好きな詩人である長田弘の詩です。スクリーンに映っているのをご覧ください。知っている方もいるかもしれませんね。全文を読んでみます。

本を読もう。
もっと本を読もう。
もっともっと本を読もう。

書かれた文字だけが本ではない。
日の光、星の瞬き、鳥の声、
川の音だって、本なのだ。

ブナの林の静けさも
ハナミズキの白い花々も、
おおきな孤独なケヤキの木も、本だ。

本でないものはない。
世界というのは開かれた本で、
その本は見えない言葉で書かれている。

ウルムチ、メッシナ、トンブクトゥ、
地図のうえの一点でしかない
遥かな国々の遥かな街々も、本だ。

そこに住む人びとの本が、街だ。
自由な雑踏が、本だ。
夜の窓の明かりの一つ一つが、本だ。

シカゴの先物市場の数字も、本だ。
ネフド砂漠の砂あらしも、本だ。
マヤの雨の神の閉じた二つの眼も、本だ。

人生という本を、人は胸に抱いている。
一個の人間は一冊の本なのだ。
記憶をなくした老人の表情も、本だ。

草原、雲、そして風。
黙って死んでゆくガゼルもヌーも、本だ。
権威をもたない尊厳が、すべてだ。

200億光年のなかの小さな星。
どんなことでもない。生きるとは、
考えることができるということだ。

本を読もう。
もっと本を読もう。
もっともっと本を読もう。

 皆さん、これからの大学生活で古今東西の知恵の塊である本を読んでみませんか。そしてこれから新しく経験するすべての世界が、本なのです。世界は1冊の本です。皆さんの青春を、本を読んで過ごしてみませんか。
 あらためて新入生の皆さん、入学おめでとう。これから私たち教職員と一緒に大経大での学生生活を作っていきましょう。以上で、皆さんへのお祝いのメッセージといたします。ありがとうございました。