学長・野風草だより

No.698

No.698 2016年6月18日(土)

保護者の皆さまに贈る言葉―教育の大転換―

 保護者の皆さまに大学の近況をお伝えし、成績懇談、就職懇談、学生生活相談などを行う第29回教育懇談会が開かれました。晴天に恵まれ、昨年とほぼ同じ407組、609名の方にご参加いただきました。成績懇談は昨年よりさらに20%増となりました。クラブ活動、一人暮らし、資格取得、インターンシップ、ゼミ、海外留学などの学生の体験談は、パワポを使ったわかりやすい説明で、好評でした。今年度は、学生による広報隊というのが組織されて、施設見学の案内をしてくれました。彼らの感想は最後にある通りですが、保護者の皆さんとも直接コミュニケーションが取れて良かったです。私からの話は以下の通りです。詳しいレジュメはこちら(PDF)から読むことができます。

 文部科学省 高大接続システム改革会議は、2016年3月の「最終報告」で、次のように言っています。現在新たな時代に向けて国内外に大きな社会変動が起こっている。これからの時代がどうなるのか、誰も予見できない。そのためには、幕末から明治にかけての教育の変革に匹敵する、抜本的な教育改革を進める必要がある。これからの時代に向けた教育改革を進めるに当たり、身に付けるべき力として特に重視すべきは、(1)十分な知識・技能、(2)それらを基盤にして答えが一つに定まらない問題に自ら解を見いだしていく思考力・判断力・表現力等の能力、そして(3)これらの基になる主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度である。これからの教育は、この(1)~(3)の全てを一人一人の学習者が身に付け、予見の困難な時代に、多様な人々と学び、働きながら、主体的に人生を切り開いていく力を育てるものにならなければならない。

 文科省の言うことにすべて賛成するわけではありませんが、この状況認識には全く賛成です。問題はまず、現在がどのような意味で転換期かということです。少子高齢化がすすむ2100年の日本社会は、どうなっているのでしょうか。 『人口減少社会という希望 -コミュニティ経済の生成と地球倫理- 』(広井良典 2013 朝日新聞出版)によれば、明治維新(1868)の時に3,300万人であった人口は、以後急激に増加して2004年に12,784万人でピークとなり、以後急減して、2100年には中位推計で4,771万人と推定されています。65歳以上の高齢化率は、2004年が19.6%だったものが、2100年には40.6%と推定されています。まさに少子高齢化の社会が進んでいくのです。
 この転換をさして有識者は、「長い21世紀」、「歴史の峠」、「下山の時代」などと呼んでいます。そして広井良典は、『ポスト資本主義 -科学・人間・社会の未来- 』 (2015 岩波新書)で、現在は超(スーパー)資本主義かポスト資本主義かの分岐点にあると述べ、第3の定常期を迎えるのではないかと予測しています。

 そのような転換期において、日本文明が世界に発信できるものは何でしょうか。米山俊直は、日本文明が世界でも稀にみる数千年前から現在まで長期に同一地域で永続してきた点に注目しています(『私の比較文明論』 2002 世界思想社)。私は、日本文明を支えてきた日本農業の歩みをこの40年ほど研究してきて( 「日本農業史からみる農業の未来」『大阪経大論集』第66巻第5号2016)、 ・まわし(循環)・ ならし(平等)・ 合わせ(和合)の3つの原理が、日本農法と日本文明の原理であると考えています。これらを21世紀の世界に発信し、自然・生命・人間社会の循環的・平等的・和合世界の実現を目指していくべきだと考えています。

 ところで、大阪経済大学の建学の理念は、「自由と融和」です。これを現在の世界史的課題からとらえなおせば、「多様性と共存共栄」ということになりましょう。まさに生物しての本質を言い表しています(本川達雄 『生物学的文明論』 2011新潮新書)。先ほど紹介した最終報告に言う「多様な人々と協働して学ぶ態度」とは、まさに生物種しての人類のあるべき姿なのです。そして 初代学長 黒正巌博士の言葉  「道理貫天地」とは、「主体的に人生を切り開いていく力」になっていくのではないでしょうか。
 私は長年の大学教育と農業研究を通じて、 教育と農業に通底する(ともに命を育む)の根本の哲学として 「そっと手を添え、じっと待つ」と言ってきました。西田幾多郎哲学の後継者である元学長鈴木亨博士は、「いのちの響き合い」「共響的世界」と言われています(『生きる根拠を求めて』1982 三一書房)。予見不可能な時代において、84年の大阪経済大学の教育の哲学、理念は、今後とも輝きを失うことはありません。

 本学は教学の目標として、人間的実学に基づく「多彩な職業人」の養成を掲げ、 84年(1932~)の伝統と実績を誇り、 9万3千人を超える卒業生を輩出し社会で活躍してきました。私は2010年の学長就任以来、 教育の方法、内容として・「ゼミの大経大」(学力・社会力) ・「マナーの大経大」(人間力・教養力) ・「就職の大経大」(社会人基礎力・就業力)の3つを重視して教育改革を進めてきました。これらによって培われ開発されていく学生たちの能力は、最終報告にある(1)十分な知識・技能 (2)それらを基盤にして答えが一つに定まらない問題に自ら解を見いだしていく思考力・判断力・表現力 等の能力、 (3)これらの基になる主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度を、育てていくものなのではないでしょうか。
 少子高齢化が進む21世紀を担っていく若者たちを育てていくのが、私たち高等教育機関の社会的使命です。この教育の大転換期においてこそ、長年の歴史と伝統、ぶれない教育哲学ときめ細かな学生目線の教育方法が活きてくるのです。それこそが時代が求めている抜本的な真の「教育改革」です。保護者の皆さまとともに、今後ともご一緒に若い世代の教育に携わっていくことをお願いいたします。

○広報隊 経営学部2年 香川由紀乃さんのコメント
 今回参加して人前で説明する力をつけることができたとともに大学施設について知ることができました。次回はより深く施設のことを知った状態で案内できたらと思います。また、学生が原稿を作った施設見学で二つのエリアにわけて行うとより学生らしい施設案内が保護者様に多く伝えるツアーを行いたいとおもいました。来年も是非参加したいです。

○広報隊 経済学部4年 木村まやさんのコメント

 予想より人数が多かったり初めてのことでグダグタしてしまったところがあり、保護者の方にご迷惑をおかけしてしまったことが反省点だと思います。また、原稿にとらわれすぎて退屈をさせてしまった部分があると思います。せっかく学生がしてるので、次回からもっと楽しく説明ができるようにしたいです。個人的には少人数でまわってもらったほうが保護者の方とお話もでき、案内もできていいと思います。
案内するなら全部の館をしたかったです。

○広報隊 経営学部3年 堀 幸宜さんのコメント

 今回のツアーで正直原稿はいらないと思いました。保護者が知りたいのは原稿に書いてある歴史的なことよりも、子供がどんな教室、環境で勉強しているのか、生活しているのかで、そこが本質だと感じました。実際、ほとんど原稿を読まずに大学生活で自分が感じたもの、思うことを話していたら、自然と保護者から質問も出てきて、大学について一歩深く知ってもらえたかなと思います。失礼に当たらない程度であれば、もっと学生らしさを出してもいいんじゃないかなと思いました。また今回のようなツアーのパッケージを作る際、広報隊の提案も一部組み入れてもらえれば、より動きやすくなると思います。

○広報隊 経営学部3年 奥山数真さんのコメント
 普段話すことのない保護者の方と施設案内という形で交流が出来て、とてもいい経験になりました。施設見学として周る館を増やすと同時に、個人的には大経大はゼミを推しているので、ゼミ室も回れたらいいなと思います。自己紹介で多くの人がゼミに触れたのに、実際の教室を周らないのは寂しく感じます。原稿も歴史をずらずら述べた定型文のような感じじゃなく、大経大で学生生活を送っている私達だから話せることを盛り込んいく方が、定型文のようなことを話すより大経大への理解が深まるかと思います。また、施設案内をしてることがわかるような旗を持ったりすれば雰囲気も出て、私達も保護者の方もより楽しめるのではないかと思いました。

○広報隊 情報社会学部4年 高井未来さんのコメント
 今回のツアーで自分自身大学のことをより深く知ることができたこと、また保護者の方と関わることができたのはとてもいい経験でした。ツアーの流れとしては、予想以上に保護者の方が多いにも関わらず、臨機応変に動けたことは良いことだと思いますが、せっかく事前に決めたペアや時間の意味がなかったなと思いました。1チーム20人は多いかもしれないです。最大でも15人ぐらいの方がいいかもです。上でも話している子もいますが、施設案内する上で保護者の方が知りたいのは歴史とかではなくて、学生の授業教室の様子であったり、出席システムだったり、そういうところに保護者からの質問もあったので、次回はもっと学生の生活に密着している場所の案内もしてみてはいいかなと思います!

○広報隊 人間科学部4年 上野勇哉さんのコメント
 今回の教育懇談会でのキャンパスツアーを通じ、在学生の親御様がどのようなことに疑問や不安を感じているかということを学ぶことが出来ました。その中で、私が感じたのは、親御様たちは学生から就職活動のことを聞きたいのではないかということです。私が4回生だとお伝えすると、就職活動ではどのようなことをしていたかなど、就職活動の内容のご質問が多数ありました。「学生が語る就職活動」というようなブースを4回生が主体となって設置してもいいなというように考えました。

○広報隊 経営学部2年 中村聡美さんのコメント
 普段勉強してるところに、お母さんお父さん方が来られたことは、恥ずかしさもあり新鮮さもありました。教育懇談会で直接お母さんお父さん方と話してみて、私達のことを心配されてる保護者の方が多かったので、今回のこの教育懇談会みたい、にもっと保護者の方に大学のことや学生生活のことを知ってもらう機会が増えたらいいなと思いました!

○広報隊 経済学部3年 羽田のどかさんのコメント
 私たちが普段過ごしているキャンパスについて、自ら案内をするということが出来て楽しかったです。こういった形で保護者の方と関わることが出来て、とてもいい経験になりました。またもう少しこのような機会があれば参加したいと思います。