学長・野風草だより

No.711~720

No.711 2016年7月4日(月)

初夏の京都

 右の写真、何だかわかりますか?巣の中で3匹、何かを求めて懸命に首を伸ばしています。黄色い口の中、首の周りには産毛が見えます。卵から孵化した赤ちゃんツバメです。親ツバメは、餌を探しに飛び回っています。いつもお酒を買っている吉田東通りの「佐野酒店」の軒に、今年もツバメが巣を作りました。実は5月頃には飛来して、6月下旬には第一陣は巣立ちをして旅立っているのです。お話を聞くと別のツバメがやってきて、前の巣を利用して少しばかり巣ごしらえをして、卵を産んだのだそうです。
 私は松山から上京した18歳、この吉田東通り(昔は吉田本通りと呼んでいた)から吉田山に上がる神楽坂に下宿していました。その時からこの酒屋さんでお酒を買っていましたので、かれこれ45年ものお付き合いです。その頃は、たくさんのツバメが飛んでおり、ここかしこの軒にツバメの巣がありました。しかし床が糞で汚れるので巣を壊したり、カラスが来るやらで次第に少なくなってきました。また学生が郊外の1ルームマンションに住みだして、通りもさびれていきました。それが最近、通りの活気が復活しつつあり、8月27日に行われる「夜市」は今年で6年目となります。何やらツバメの数も増えたと思うのは、気のせいかな?

*右の2つ目の写真は、あれから2週間ほどたった子ツバメです。こんなに大きくなっています。親ツバメは、すぐ近くにとまって、見守っています。

 玄関の鉢におしろい花を植えました。夕方から朝にかけて、たくさんの紅色の花を咲かせてくれます。去年の種を播いたら、今年もしっかり育ってくれました。松山に住んでいた頃は、近くの石手川の土手にびっしりと咲いていたのを思い出します。花を取って高いところから投げて、落下傘のように落ちていく遊びをしていたように思います。黒い種を割って白い胚乳で「おしろい」のようにつけた記憶はありません。庭には一つだけ季節違いの白い玉すだれが咲いていますが、これも故郷の家の通路に植えていました。井戸のそばにはミョウガが生えていて、初夏には地面からよくもぎ取ったものです。日陰のじめじめしたとこに、一昨年に苗を植え、今年は初めて収穫できました。酒屋さんで売っている「服部豆腐店」(南禅寺御用達の豆腐)の冷奴に、刻んで味わいました。故郷松山の原風景を、京都の我が家の庭で再現しているような気がします。

 7月4日、建仁寺の塔頭である両足院へ参りました。我が家の半夏生については前に紹介しましたが(野風草だよりNo.695)、ここの庭の池のほとりでは、800本ほどの半夏生が白く変化していて、まことに涼しげで見事です。縁側に腰かけて、ゆっくりと楽しみ、京都の初夏を感じました。京都で半夏生の庭を謳っているのは、おそらくここだけではないでしょうか。祇園祭が終われば、やがて京都の猛暑がやってきます。