学長・野風草だより

No.718

No.718 2016年8月7日(日)

日本美術の粋

 立秋となり、残暑お見舞い申し上げます。という時期ですが、まだまだ暑い日が続きますね。いかがお過ごしですか。7月中旬、次兄の一周忌で倉敷へ参りました。行きの新幹線から、真っ白な姫路城が見えました。3月27日に改修を終えた姫路城は、何だか真っ白なんです。よしっ、帰りに実際に見てみようと、姫路で途中下車しました。駅前から大手前通りをまっすぐ歩いていくと、姫路城がだんだんと大きくなっていきます。大手門から入り、本丸へと進んでいきましたが、天守閣は1、2時間待ちということで、外からゆっくりと眺めました。白漆喰の城壁は本当に白くて、「白鷺城」と呼ばれるのもむべなるかなです。外国人観光客が一杯いましたが、これが日本の城郭建築の白眉だと言いたくなりました。
 姫路駅への帰り道、三木美術館があり、入ってみました。美樹工業株式会社の創業者である三木茂克氏のコレクションで、その時は「青―近現代の青磁」の特別展でした。中島宏の作品を中心に展示されており、大胆な造形と青の微妙な色合いが、美しかったです。常設展では、牧進の日本画に目を奪われました。水連の黄色い花と緑の葉、水面下で泳ぐ鯉たちの「嘉日双鱗図」。入って良かったな。おなかがすいたので、6階のレストランSORA NIWAへ参りました。大きなガラス越しに、姫路城が真正面に見えるではありませんか。地元姫路の野菜をふんだんに使った料理を頂きながら、姫路城を堪能できました。

 8月7日のオープンキャンパス、とんでもなく暑かったのに、2,000人弱の方々に来ていただき、感謝です。終わってから、神戸三宮の神戸市立博物館へ「ボストン美術館所蔵 俺たちの国芳 私の国貞」の浮世絵展を見に行きました。江戸後期の人気絵師である歌川国芳(1797~1861)と歌川国貞(1786~1864)の作品、役者絵、美人画、ユーモアあふれる戯画など170件が、当時最大の娯楽である歌舞伎の演目になぞらえ、2幕13章で構成されて展示されています。色鮮やかな色彩、大胆な構図、意表をつく怪奇、ちょっと疲れました・・・。
 当時の浮世絵界については、河路和香の『国芳一門浮世絵草紙 侠風むすめ』全5巻(小学館文庫2007~2011)を読んでいましたので、よくわかりました。その後の事情は、梶よう子『ヨイ豊』(講談社 2015)でわかります。それぞれの作品がどのような状況で書かれたか、二人の確執と煩悶など。歌川広重、葛飾北斎は有名ですが、この二人の作品の実物を見れたのは幸せでした。すべてボストン美術館の所蔵ですので、明治期に大量に流出したのでしょうね。

 少し前になりますが、大徳寺の塔頭である聚光院へ、千住博の障壁画「滝」を見に参りました。本堂の障壁画は狩野永徳「花鳥図」など、父の松栄の「蓮池藻魚図」など、すべての国宝の46面を一挙に見ることが出来ました。京都国立博物館に寄託して修復していたのが里帰りしたそうです。千住博は、「花鳥図」をどこから見ても完璧な障壁画と絶賛していますが、正直よくわかりませんでした。
 お目当ては、2013年に落慶した書院の障壁画「滝」です。28面と床の間に2か所、群青と白を基調にして、落ちる滝の水、落ちた滝の水の広がり、廊下から座って眺めていると、滝の前に佇んでいる気持ちになってきます。どのように制作していたかは、『千住博の滝』(求龍堂 2007)を読んでいましたので、だいたいわかります。
 そして、一番良かったと思ったのは、狩野永徳・松栄、千住博の作品を実際の襖絵として、見ることが出来たということです。博物館でガラス越しに見るのではなく、そこに座って、広がる何十枚もの畳の仕切りとして、まっすぐに屹立する襖から見えてくる自然の風景、これが日本美術の粋です。ありがたいひと時を過ごせたことに、感謝するばかりです。