学長・野風草だより

No.721~730

No.721 2016年8月6日(土)

中小企業・経営研究所での講演会

 8月に入り、厳しい暑さが続きます。朝起きると、もみじ葉の琉球アサガオが咲いてくれています。プランターに植えていたものが、蔓が伸びて伸びて2階のベランダまでたどり着き、花を咲かせてくれています。日本アサガオ、西洋アサガオなどいろいろなアサガオを楽しんできました。やはり夏の花と言えば、アサガオですね。小学校の時、アサガオの押し花を作ったことがかすかに思い出されます。夏休みの宿題だったのかな?

 3大学交流が終わり、中小企業・経営研究所が開催する第5回中小研セミナーに参加しました。本学の「通商政策講座」でお世話になっている産経新聞大阪本社の前編集委員で本学の客員教授である巽尚之(ひさゆき)さんの講演でした(野風草だよりNo.368)。巽さんには幅広い人脈を活かして、通商政策講座に多彩なゲストスピーカーをお呼びいただいたうえ、産経新聞に必ず記事を書いていただいています。「鉄腕アトムを救った大阪の中小企業経営者~手塚治虫『どついたれ』の真実を明かす~』の興味深いお話に、C31教室は150名を越える参加者で埋まりました。
 巽さんには、『鉄腕アトムを救った男―手塚治虫と大阪商人「どついたれ」友情物語』(実業之日本社 2004)の著書、高校の同級生であるラサール石井氏との共著『人生で大切なことは手塚治虫が教えてくれた』(PHP研究所 2011)があります。手塚の大阪を舞台にして戦後の混乱期を描いた『どついたれ』は、育児用品メーカーであるアップリカ葛西の会長の葛西(かっさい)健蔵さんがモデルです。そして葛西さんらは、手塚が経営する虫プロダクションが倒産した昭和48年から、その再建のために尽力するのです。

 講演では、こうしたエピソードを紹介しながら、大阪の中小企業経営者の生き方が紹介されていきました。それとともに、巽さんは手塚治虫の作品の魅力を存分に語ってくれました。「火の鳥」、「ブラックジャック」、「陽だまりの樹」、「アドルフに告ぐ」、「グリンゴ」、「ネオ・ファウスト」などなど、全部で700タイトルにものぼる手塚ワールドが巽さんにより広がっていきます。巽さんに後ほど、手塚作品の中で何が一番好きですかとお聞きしますと、いろいろあるが、「四谷快談」なんかいいですねというお答えでした。
 高校生の頃でしょうか、松山の本屋さんで『COM』に連載されていた「火の鳥」を立ち読みしていたことが思い出されてきました。もう一つ立ち読みしていたのが、『ガロ』の白土三平の「カムイ伝」でした。店の人にハタキでバタバタされて、追い出されたものです。
 中小研は50年以上の歴史をもち、大阪・日本・東アジアの中小企業・経営研究のメッカとして、活動を続けてきました。今回のセミナーは、こうした研究活動の一端を広く学外に伝えていくものです。今後とも、こうしたセミナーを続けていってほしいものです。

○巽尚之さんのコメント
  漫画の神様とされる手塚治虫氏が経営する虫プロダクションは昭和48年、4億円の負債を抱えて倒産。手塚氏は債権者に追われ全国を逃げ回ることになるのだが、その手塚氏を救った中小企業経営者がベビーカー製造、アップリカ葛西(現アップリカ・チルドレンズプロダクツ)の創業者、葛西健蔵氏であった。そのことがきっかけとなり、手塚氏は後に戦後の大阪を舞台にした異色作「どついたれ」を執筆することになる。手塚作品には感動を呼ぶ名作も多く、戦災孤児を主人公にした短編「四谷快談」や親孝行を題材にした「ブラック・ジャック」の「おばあちゃん」、恋愛と性をシニカルに描いた「アポロの歌」など心を打つ作品は枚挙に暇がない。