学長・野風草だより

No.731~740

No.731 2016年9月10日(土)

ネクタイが結ぶご縁

 私は所用や私的な旅で各地を訪れた時、ネクタイを買うのを楽しみにしていることは前に書きました(野風草だよりNo.559628)。最近、浜松に準硬式野球部の応援に参りましたので、遠州地方のネクタイを買ってきました。右の写真に6本、買ってしまいました。一番上が「ざざんざ織」の正絹、下のカラフルな5本が遠州綿紬です。
 これで日本の伝統工芸織りのネクタイが、ちょうど50本!になりました。うれしいですね。1本1本に旅の思い出があり、首に結ぶたびに、いろいろな思い出が甦ります。北は北海道のエルム・ユーカラ織、南は沖縄の久米島紬です。多いのは、中四国の織物です。岡山のデニム生地のネクタイもあります。今はもう作られていなくて、入手できないものもあります。愛着が深いのは、やはり故郷の伊予絣ですね。

 遠州綿紬は、「ぬくもり工房」の作品です。ネットで調べていると見つかり、お電話すると、前に注文でたくさん作ったのが数本残っているということでした。それでは、お訪ねしますということになりました。担当されている岸田明日美さんとネットで連絡していると、もし生地からお作りになるのでしたら、注文してくださいとのこと。生地から好みの色と柄で作れるなんて初めてのことで、舞い上がってしまいました。どうしてもその場で買うと、伝統的な藍染め系のものになりがちなのです。
 生地のカタログをネットで送っていただきました。そして選んだのが、上の写真です。下から夜富士(紺色)、伝遠州縞大正1年(茶色)、絣紬・葛(赤茶色)、なないろ紬・若草(うす緑)、綿紬・銀杏(黄色)です。とくに明るい色のは少ないので、あえて作ってみました。夜富士の紺色の変化なんて素敵です。「夜富士」というネーミングも、富士山を想起させていいですね。
 ぬくもり工房では、岸田さんから直接お話を聞くことが出来ました。ショップ兼仕事場には、たくさんの反物生地が並べられていて、見ているだけでも楽しくなりました。着物、洋装、和装小物などがたくさん作られていました。欲しいものがありましたが、ネクタイ5本で満腹感一杯でしたので、ガマンしました。伝統がこうして革新されながら受け継がれていくのは、心強いことです。ぬくもり工房、岸田さん、素敵なプレゼント、ありがとうございました。

 その後、ざざんざ織の「あかね屋」さんをお訪ねしました。「ざざんざ」というのは、浜松に「諷々(ざざんざ)の松」という有名な松があり、そこから名付けられました。糸は、節のある絹の玉糸や紬糸を使うので太さや細さの変化、ムラがあります。染は、厄介な草木染で落ち着きと深みがあります。そして織は、昔ながらの手機(てばた)手織りです。こうした実に大変な手間をかけて作りあげられているのです。本当にありがたい作品です。
 当主の平松久子さんからお話を伺うことが出来ましたし、仕事場で実際に高機を見せていただくこともできました。ニコニコと笑いながら、機織り作業をしていただきました。昔はもっと盛んだったのが今は私とこの1軒だけになった。私で終わるかもしれないし、息子さんがひょっとしたらなどと、これまでの苦労話などをお聞きしました。平松さんの思いの詰まったネクタイ、大切に結んでいきます。こうしてお会いできたご縁に感謝します。

 ネクタイ余談。私が応援している広島カープが25年ぶりの優勝!。記念のネクタイを注文すると、注文が殺到していて、入荷待ちでした。これもまた、ネクタイが結んでくれるご縁です。次がまた25年後だと・・・・