学長・野風草だより

No.758

No.758 2016年11月19日(土)

日本語での「つながり」、17歳からのメッセージ

 16回目となった「17歳からのメッセージ」の表彰式が行われました。今回は全国から27,344作品の応募があり、グランプリが3、学生審査委員賞が1、金賞97、銀賞44、奨励賞93が選ばれました。こんなにも多くの作品を寄せていただいたことに感謝いたします。以下はパンフレットに載せた、私の63歳からのメッセージです。
 「9月の上旬、「写真甲子園」で有名な北海道の東川町を訪れました。23回目となる今年は全国から527校の応募があったそうです。展示作品を見ましたがウーン!スゴイ!!の連続で、写真を通じて高校生の感性が輝いていました。この「17歳からのメッセージ」は、今年で16回目となり、全国から370校、2万7千通を越えるメッセージが寄せられました。応募していただいた高校生の皆さん、ありがとう。ご指導いただいた先生方に心より感謝申し上げます。
 作品を読ませていただき、1200字の日本語の散文という表現を通じて、高校生の心情を感じ取ることができました。父母、祖父母、兄弟姉妹などとの家族関係、友人や近所などとの人間関係での愛情や葛藤、温かみが伝わってきました。そして自分自身の内面との対話。高校生が誰しも持つ恋心など、これまでよりも、型にはまらない率直な心情が吐露されてきだしたなと感じました。「つながり」は人間関係だけではありません。ペットなど動物や野菜など生き物たちと、食べ物や具体的な物を通じての関わり、さらには読書を通じての古今東西の文化とのふれ合い。様々な「つながり」が皆さんの感性を豊かにしているのを、作品から読み取ることが出来ました。

 もう一つ私が注目したのは、日本語の表現の美しさを感じさせる作品が多く生まれてきたということです。一語一語の選択、一文の熟成、全体構成の巧みさ、方言の使用、読んでいてこちらも楽しい気持ちになります。もっともっと日本の小説や詩、俳句や短歌などに触れていってほしいと思います。さらには美術や音楽、スポーツなどにも。そして高校生の皆さん誰しもが持っている原石を、光り輝くダイヤモンドへと磨いていってください。
 何千年、何万年と営まれてきた日本列島の文化の特徴は、好奇心・かざり・あそび・優美さ・アニミズムなどと言われています。皆さんの17歳からのメッセージは、これら日本文化の伝統と革新に「つながり」、21世紀の日本社会を創造していく若々しい原動力になっていきます。私たち大阪経済大学は、これからも「17歳からのメッセージ」を応援していきます。」

 当日は、次のようなお祝いの63歳からのメッセージを贈りました。「最終審査の時は、皆さんの手書きの作品を読ませていただきました。皆さんの個性、若いパワーが押し寄せてくる感じでした。今日の表彰式に向けて、パンフの活字になった作品を読ませていただくと、もう少し落ち着いてゆっくりと対話することが出来ました。17歳が書いた「文学作品」を読んでいる気持ちになりました。未熟だとしても生硬だとしても、日本語の「文学」への第一歩です。是非とも、この感覚を忘れないでいただきたいものです。
 それぞれの賞には、副賞が付いています。皆さん、何に使われますか?早めのクリスマスプレゼントで、好きな服を買うか、欲しかったゲームソフトにするか。親孝行して何かプレゼントするか。大経大を受験する時の受験料にするか、これはかなりおススメなんですが。私から一つ、楽しい使い道を提案したいと思います。

 池澤夏樹という小説家が編集している『日本語のために』(池澤個人編集『日本文学全集』第30巻 河出書房新社 2016)という本があります。2,600円です。安いでしょう。この本には、日本古代の祝詞、中国からの漢文、インドからの仏教経典、ヨーロッパからの聖書、そして沖縄の琉球語、北海道のアイヌ語、さらにはシェークスピアの「ハムレット」の一節「生きるか死ぬか、それが問題だ」の様々な翻訳。1300年にわたる日本語の豊かさ、美しさがこの1冊の満載されています。難しい漢字には、ちゃんとルビが振られています。
 皆さんは、今回の17歳からのメッセージで、日本語・日本文化の入口に立ちました。是非ノックして、ドアノブを回して、中に入ってください。『日本語のために』は、そのための水先案内人です。一人でじっくり味わって下さい。友達と一緒に、お父さん・お母さんと語り合ってみてください。おじいちゃん・おばあちゃんからは、思わぬアドバイスがあるかもしれませんよ。この一冊は、皆さんを古代・中世へといざなってくれます。皆さんを中国へ、インドへ、ヨーロッパへ旅させてくれます。是非、座右の書に加えてください。本日は、皆さん、おめでとうございました。」