学長・野風草だより

No.763

No.763 2016年12月18日(日)

わだばゴッホになる―世界の棟方志功

 あべのハルカスが高い、高いというのは聞いていましたが行ったことがありませんでした。棟方志功(1903~1975)の名前はよく聞いたことがありますし、作品もテレビや本などで見たことはありましたが、本物は見たことがありませんでした。そんなこんなで、あべのハルカス美術館へ棟方志功展を見に参りました。16階でもやはり、高い、高いでした。そして、本物の「板画」は、やはりスゴイ、スゴイでした。満足しました。有名な「二菩薩釈迦十大弟子」が揃っています。「大世界の柵」、縦1.754m、横12.84mの乾・坤の作品が、壁一面に展示されているのです。ふくよかで色彩豊かな「弁財天妃の柵」など、次々と展示されていきます。17mもある「禰舞多(ねぶた)運行連々絵巻」がガラスケースに入って、見ることが出来ます。「板画家への道のり―戦前・戦中」、「世界のムナカタ―戦後」、「津軽―晩年」と回顧展風に60点、棟方ワールドの豊饒さと真摯さが伝わってくるすばらしい展示でした。

 少しだけ彼の言葉を引用します。「やっぱり、板画というものは板が生まれた性質を大事にあつかわなければならない、木の魂というものをじかに生み出さなければダメだと思いましてね。他の人たちの版画とは別の性質から生まれていかなければいけない、板の声を聞くというのが、板という字をつかうことにしたわけなんです。」「身体ごと板画にならなければ ほんとうの板画が生れて来ない。わたくしを化物にされて欲しいという 心持で板画を生まして行くのです。」制作風景のビデオ放送がされていましたが、まことにこの言葉通り、鬼気迫る感じでした。笑うと好々爺でしたが。

 棟方は有名で作品を目にすることも多いので、違和感は薄れがちですが、こうして実物の板画を見ていると、何かしら「異界のアート」という気がしてきました。美術というものは、美を追求して表現したものでしょうが、棟方の作品から伝わってくる何かは、私が今まで慣れ親しんできた型にはまったというか、お行儀よくしている「美」とは違うような感じなのです。棟方の内面から表現しようとする何かが、私に押し寄せてくるという感じでしょうか。瀬戸内の温和な気候とは違う東北の厳しい風土の違いなどと、安直に済ませられない何か。根源的な農耕文化と狩猟文化の違いだろうか。ユーモアを交ぜながら、原初の神々や女神の生臭さ、獣や鳥たちの臭いが立ち込めている・・・答えはまだないけど、うーーーん、おもしろい!!!