学長・野風草だより

No.785

No.785 2017年4月24日(月)

上宮智之先生のオックスフォード便り

 Greetings from Oxford! 経済学部の上宮です。
 2016年9月から1年間の在外研究期間をいただき、オックスフォード大学を形成するカレッジの1つ、ナッフィールド・カレッジ(Nuffield College)にアカデミック・ビジター(Academic Visitor)として所属しています。今から10年前に1週間の資料調査に来た時以来,ここでじっくり研究することを夢見てきました。 
 世界有数の大学があるオックスフォードは、世界中からさまざまな研究者と学生、さらには多くの観光客も集まり、まさに国際色豊かな町です。このような町で、海外生活ははじめての妻と1歳の娘と一緒に暮らしています。
(写真上)ナッフィールド・カレッジ
(写真下)ラドクリフ・カメラ(図書館)

(1)オックスフォードという町
 オックスフォードはロンドンから西へ電車で約1時間のところにあり、町のすぐそばをテムズ川が流れています。 
 この町には古くからカレッジ(College)という教育機関が集まり、大学を形成しています。有名どころでは、アダム・スミスが学んだベイリオル・カレッジ、『不思議の国のアリス』の著者ルイス・キャロルが数学者として所属したクライスト・チャーチ・カレッジなどがあります。
 ちなみに、ホグワーツ魔法学校の食堂のシーン撮影に使われたクライスト・チャーチなど、この町のあちこちに映画ハリーポッター・シリーズに関係する場所があります。 また、『指輪物語』の著者トールキンや『ナルニア国物語』の著者C.S.ルイスらが集まったパブ、The Eagle and Childなど、町のあちこちが名所となっています。
(写真上)テムズ川沿いの運河
(写真下)クライスト・チャーチ・カレッジの食堂

(2)ナッフィールド・カレッジとボードリアン図書館
 さて、私が所属しているナッフィールド・カレッジに話題を移しましょう。
 数百年の歴史をもつカレッジも珍しくないオックスフォードにおいて、ナッフィールドはわずか80年前(!)に創設されたばかりの比較的新しい、社会科学系(政治学、経済学、社会学)のカレッジです―大経大とほぼ同じ歴史です。
 ノーベル経済学賞を受賞したヒックスやセンも所属したことがあるこのカレッジは、自動車製造で財を成したナッフィールド卿(ウィリアム・リチャード・モーリス)の寄付によって創設されました。シンボルでもある高い塔は、図書館(カレッジのメンバーには24時間開放)の書庫になっていて、私の主な研究・調査活動の場となっています。 
 この図書館は、私の主な研究対象である経済学者エッジワース(1845-1926)の書簡や講義ノートなどを所蔵しており、今回の滞在の目的の1つがそれらのチェックです。日本でなかなか完成しなかった論文もここの貴重な資料のおかげで完成させることができました(年内に出版予定の論文集に掲載されます)。
 オックスフォード大学の中心的図書館であるボードリアン図書館(Bodleian Old Library)も私の研究の場です。エッジワースはオックスフォードで学生時代を過ごし、のちにこの大学の経済学教授となりました。 そこで、ボードリアン図書館にある100年以上も前の大学記録を用いて、彼や同時代の経済学者による経済学の講義内容も追跡しています—私の専門である経済学史、あるいは知性史と呼ばれる分野の研究になります。
(写真上)ナッフィールド・カレッジのキャンパス
(写真下)ボードリアン図書館の入口

(3)オックスフォードでの生活
 私が研究している間、妻子は買い物したり、公園で遊んだり、博物館へ行ったりするほか、大学の会話クラスや幼児教室にも参加しています。 オックスフォード大学は、研究者のパートナーや家族向けプログラムをさまざまに提供しています。また、オックスフォードの各教会も幼児教室を開いており、これらの機会を通じて、妻子には多くの友人ができました。とにかく子どもに優しいシステムは大変ありがたいです。昨年12月にはいくつかの教会の家族向けクリスマス礼拝にも参加し、本場のクリスマスを体験しました。
 私も、週に一度、セント・エブス教会が主催するThesisという「大学院生のための聖書を読む会」に参加しています(クリスチャンではありませんが)。とりわけ、この教会に所属する日本語が流暢な牧師、リチャードさんと奥さまの木綿子さん、そして、この会で知り合った日本人留学生の皆さんに仲良くしていただいています。科学と聖書の関係、英国国教会信者しか入学できなかった時代(エッジワースの学生時代も)のオックスフォード大学の制度、イギリスの文化などについて考えるうえでも貴重な会となっています。
(写真上)郊外にある公園
(写真下)リチャードさんやThesisメンバーと

(4)The other place=ケンブリッジ訪問
 ところで、英国にはもう1つ、同じようにカレッジが集まっている町があります。ご存知ですか?ロンドンから北東に電車で1時間ほどのところにあるケム川が流れている町、ケンブリッジです。オックスフォードとケンブリッジはライバル関係にあり、それぞれお互いのことを“the other place”と呼ぶのだと教えてもらいました。ちょうど4月初旬にロンドンで両大学対抗のレガッタ(ボートレース)が行なわれたばかりです(TVでも放送されていました)。 
 3月にそのケンブリッジに行き、J.M.ケインズが住んだ家を訪ねたほか,長らく神戸大学経済学部の教授たちが所蔵した1冊の古本をマーシャル図書館に寄贈するお手伝いをしました。どのようにして日本に渡ってきたのかは謎ですが、この本はケンブリッジ大学経済学教授マーシャル(1842−1924)の手書き注釈入りだとされてきました。今回、マーシャル図書館によって「本物」と鑑定され、この古本は同図書館に収められました。このときの模様は同図書館のブログ記事になっています。
http://marshlib.blogspot.co.uk/2017/03/the-return-of-alfred-marshalls-book-v.html
(写真)ハーヴェイロード6番地,ケインズの家

 この在外研究期間に出会った他分野の研究者をはじめ,さまざまな人びととの出会いのおかげで,ずいぶんと私自身の考え方も変わったように思います。リニューアルされた上宮にご期待ください。秋からはオックスフォードでの体験や成果を私のゼミや講義に反映させていきます。

ナッフィールド・カレッジ(People→Visitorsで私の名前も確認できます)
https://www.nuffield.ox.ac.uk/

オックスフォードの360度写真(Bicester From AboveのFacebook Pageより)
http://bit.ly/2oXxVhG