学長・野風草だより

No.801~810

No.801 2017年7月7日(金)

鈴木隆芳先生のパリ便り

 パリに留学中の鈴木先生より、近況を知らせていただきました。もうすぐ留学も終わりです。無事にお戻りください。なお、鈴木先生は、ホームページの「つながるブログ」に留学生活を連載されています。そちらも是非ご覧ください。



 ただ今戦闘中!?――鈴木隆芳先生のパリだより――

クイズ! 駅に設置されたこのスタンド状の機器、さて、これは何でしょう? 

ぼんじゅー♪ 
 今回はフランス留学中の鈴木がパリよりお送りいたします。
 昨年9月よりパリの社会科学高等研究院(EHESS)に来ています。ここには、さまざまな分野の研究者が在籍していて、中にはフランスの知性を担う超ビッグネームもいます。
  留学ですから、はい、ちゃんと学んでおります(笑) 先日、こちらで研究発表をしました。
 この研究会は様々な分野の研究者が会する一風変わった会合で、私はそこでスイスの言語学者ソシュールの話をしました。写真はその試合風景です。右手の白シャツ、老眼鏡を手にディスカッション。これね、写真が暗いんじゃなくて、部屋が暗いんです。フランスってこうなんです。

 こうした発表会のスタイルで、日本と大きく異なるのは、質問者が長く話すということです。もう少し正確に言うと、質問じたいは比較的シンプルなのですが、そこに至るまでにいろいろな紆余曲折があって、最後にようやく質問に至るといった感じです。だから、答える方も答える方で、それに報いないといけません。Yes or Noであっさり答えるのは無粋ってもんです。これって日本とはずいぶんちがいますね。フランスでは問いをきっかけに議論や対話を発展させることが重んじられます。西洋古典哲学の対話の伝統なのでしょうか。でも、まあ、それにしても、みさなん話が長いこと長いこと(;^_^A
 私の時も、聴衆からの質問があったのですが、なんと発表者の私を差し置いて他の先生が答えるという、まさに乱戦?! こんなこともめずらしくありません。
 あと、それから、パワーポイントをだれも使っていません。それどころか、中には配布資料なしで勝負する先生もいます。喋りオンリーです。日本では万能のプレゼンテーション・ツールの感のあるパワポにも向き不向きがあって、グラフやデーターの提示には便利なのですが、ある程度のまとまった文章を掲示すると見にくくなりませんか? 他にも、パワポには、ぼんやりと見ているだけでもわかった気になってしまう、という困った点があります。議論に参加するためには、やはり身を入れて話を聞くことが肝要なようです。

 お昼はカフェですっかりご馳走になりました。そこはなんと言ってもフランスですから、前菜→メイン→デザート→カフェと2時間以上もかけてしっかりランチです。
 ここでは異分野どうしの交流も盛んです。異なる分野の発表を聞いていると「なるほど」とか「へー」と感心することもあるのですが、その一方で、ものの考え方のちがいから「ん?」と疑問に思うことや、さらには話の通じないことさえあります。
 それでも、説明を聞いていくと、やがて他の分野の研究者が大切にしている価値観や世界観が見えてきます。全然見えてこない時もありますけど(涙)
 この日も、違和感からはじままり、やがては共感に至る、そんな経験ができました。ほとんどの大学教員は自らの専門に即した学会に所属しています。それは日仏とも同じなのですが、今回のような他分野との交流試合は日本ではあまり経験したことがありません。
 発表を終えると、本学でのZEMI-1グランプリに近い感覚を覚えました。
 フランスには個性や多様性を重んじる文化があると言われますが、まあ、それはそうとしても、でも個性って、自分で「私ってこうなの」というように、自己申告できるものじゃなくて、社会や世界との関わりを通して、はじめて獲得できるものだと思います。良いお父さんになるには、家族に優しくしたり、会社にも行かないといけないしね。無関心や逃避からは何も生まれない。今回の留学で改めて感じたのは、フランス社会がこうした他者への働きかけをいまだ大切にしていることです。我が大阪経済大学の「つながる力」というキャッチフレーズにもつながる理念です。

 あっ、あやうく忘れそうになりました。冒頭のクイズの答え。あの機械は短編物語ディスペンサーです。短編よりもっと短いから掌編かな。1、3、5のボタンを押すと、それに応じた長さの物語が毎回ランダムで出てきます。3のボタンを押せば3分で読めるサイズのお話が出てくるという具合に。
 わざわざ紙にしなくても、携帯にダウンロードすればいいのにって思うでしょ。でも、それじゃあ味気ないんだな。この日も、幼児が面白がってずらずら引き出した「物語」をお母さんが読んであげている光景を見かけました。
 ここの駅には、この他にもピアノが置いてあったので、さっそく弾いちゃいました。写真中のハッシュタグは「駅のピアノ」ね。

 こんな留学中のことを、本学ホームページ上の「つながるブログ」に書いています。最新タイトルは「貪欲ウサギ飼育罪」!
http://blog.osaka-ue.ac.jp/teacher/author/author108/