学長・野風草だより

No.811~820

No.811 2017年8月15日(火)

ボクシングの山中慎介の世界タイトルマッチ

 ボクシングは好きです。本学のボクシング部の練習を激励したり、試合の応援にも何度か行ったことがあります(野風草だよりNo.233365603)。最近読んだボクシング小説は、モハメド・アリの4つの試合を描いた佐藤賢一の『ファイト』(2017 中央公論新社)、4人の元ボクサーが若者を世界チャンピオンに育てていく沢木耕太郎の『春が散る』(2017 朝日新聞出版)です。
 過日ある方からボクシングの世界タイトルマッチのチケットを頂きました。山中慎介(帝拳)選手のWBC世界バンタム級の13度目の防衛戦です。2011年から6年間防衛を続け、今回防衛できれば、具志堅用高の13度の日本記録と並びます。会場は島津アリーナ京都(京都府立体育館)なので、すぐです。前日のテレビでは、それまでの12度の防衛戦の様子や、子供たちからの紙製の手作りのペンダントを首にかけている様子が紹介されていました。相手は同級1位のルイス・ネリ(メキシコ)で、23勝17KO無敗の22歳の若者です。山中の「神の左」と言われる左のストレートを間近で見れると思うと、ゾクゾクしてきました。会場は、1階、2階とも超満員です。7,8千人はいるでしょうか。滋賀県湖南市生まれで南京都高校出身ですので、まさに地元です。揃いの法被やTシャツを着た応援団が、たくさんの幟を振っています。

 「カーーン」、ゴングが鳴りました。山中の右ジャブから左ストレートが時折、当たります。ネリの大ぶりな左が時に、山中を捉えます。一進一退で3回までが終わりました。4回、相手のパンチが当たります。そしてラッシュをかけてきます。山中がロープにもたれ、ネリが顔面にボディにと連打してきます。「慎介」「慎介」のコールが、会場全体に響き渡ります。突然、セコンドから黄色いタオルが投げ入れられ、セコンドがリング内に入ってきました。4回2分29秒、TKO負けとなりました。「カーン、カーン、カーン」。初めての敗戦。会場の歓声が悲鳴に変わります。そして静寂。再び、「慎介」コールの大合唱です。
 山中選手は赤コーナーに戻り、最初はボーとした状態でしたが、やがて泣いていました。それでもリング中央に戻り、満員の観衆に向かって丁寧にお辞儀を繰り返していました。チャンピオンベルトではなく、子供さんからもらったペンダントを首にかけながら。引き揚げる時には、号泣していたそうです。
 この日のために、どれだけ苦しい練習をして来たのだろうか。6年間、チャンピオンベルトを守り続けて来たことは、大変なことです。しかし、勝者がいれば、敗者がいます。残念だけど、山中選手、ありがとう。