学長・野風草だより

No.190

No.190 2012年3月13日(火)

学園から社会へ巣立つ卒業生たちへ

フレアホールで2011年度の卒業式が行われました。10時からは経済学部・大学院、人間科学部・大学院、昼の1時からは経営学部・大学院、経営情報学部・大学院の卒業生・修了生を見送りました。いつものことながら、喜びとともに一緒に4年間過ごした学生たちとの別れに一抹の淋しさもおこります。以下は、当日の私の式辞です。なお、最後の私の写真は、卒業アルバムに載せたものです。ちょっと雰囲気を変えてみました。

Ⅰ 80年の樟
おはようございます。各学部の卒業生の皆さま、そして各大学院研究科の修了生の皆さま、卒業おめでとうございます。本日ご参列いただいたご父母、学費負担者の皆さま、心よりお慶び申し上げます。
本学は、1932年の浪華高等商業学校に始まり、昭和高等商業学校、女子経済専門学校を経て、1949年に現在の大阪経済大学となり、創立80周年を迎えます。卒業生は今年卒業される皆さん1530名を加えて、8万7千名にものぼります。先輩たちからのバトンをしっかりと受け取ってほしいと思います。そのバトンには、“大経大PRIDE”と書かれていると思います。これからは大経大の卒業生であることに誇り、PRIDEをもって生きて行ってほしいと思います。

この大経大で80年の風雪に耐えて生き抜いたものがあります。何だかわかりますか?この4年間で、キャンパスもすっかり変わりましたね。新しい体育館、学生会館、そして体育館跡には事務・研究棟であるJ館がこの3月に出来ました。そのJ館とB館の前に、1本大きな樟がありますよね。あれなんです。あとでみんなで学歌の2番に「学徒師弟が幹負い持ちて諸汗に しっかと植えた融和のシンボル」とありますが、まさにこの樟なのです。近くの菅原の古い家から移したものです。80年間、ずっと見守ってくれていたのです。帰りにそっと触れて下さい。「ありがとう」と声をかけてください。生きてるんです。きっと皆さんの感謝の気持ちは伝わります。
今年の夏からは、皆さんが慣れ親しんだ今の図書館や事務室がある本館を取り壊し、大きくて高い大経大のシンボルとなるような教室棟を作ります。2013年の秋には、大経大の建物はすっかり変わっています。昨年から学園祭の期間中に、ホームカミングデーというのをしています。卒業した皆さんが母校に帰ってきて、友達やお世話になった教職員と再会する日です。是非、お越しください。大経大FAMILY、教職員、在学生のみならず、卒業生も含めてみんなが家族、FAMILYのように一体感をもって、母校である大経大を育てていこうじゃないですか。100周年は2032年です。20年後、皆さんは45歳くらいでしょう。子供たちも大経大に入学させて、一緒に入学式に来て、あの大樟と再会しませんか。樟は大経大のメモリアルツリーとして、その時もきっと生きています。

Ⅱ そっと手を添え、じっと待つ
私は大学院の時以来、もう35年間も農業の歴史や経済・経営を一筋に研究してきました。そして日本や東アジア、欧米の農家とたくさん話してきました。情けないかもしれませんが、他の事は知りません。しかし、研究者の道を歩めたことは後悔しておりませんし、多くの先生、仲間の方々のご支援をいただきながら、ここまで研究者としてそれなり歩めたことに感謝しております。農業の名人たちから教えられたことは、地域が違い育てる作物が違っても、農業の極意は「作物にそっと手を添えてあげて、無事にそだってくれよと祈りながら、作物が育っていくのをじっと待っている」ということでした。自分の欲に駆られて自分の思い通りに育てようとしたり、金が欲しくて早く早くと待てないで急がすと、作物は歪んでくるということでした。作物はイノチあるものとして、自らが生きようとしているのです。それに依拠するしかないのです。作るのではなく、育てるのです。

私はこの大経大に33歳の時から勤めて、はや27年がたちました。最初は無我夢中でやっており、当時の学生さんには申し訳ない気持ちです。今もまだ暗中模索をしておりますが、最近思いますのは、農業も教育も極意は同じなんじゃないかなということです。「そっと手を添え、じっと待つ」。当たり前ですが、皆さんもそして私もイノチある生きものです。大脳、前頭葉が発達したのが人類だとしても、根底はイノチある生きものに変わりはありません。とりわけ若者である皆さんは、生きる力に満ち溢れています。私たちの仕事は、知識や教養を皆さんに伝えるだけではなく、皆さんの瑞々しい生きる力を十全に伸ばしていくことだと、さいきんつくづく思います。大経大の教育を「そっと手を添え、じっと待つ」ものにしていきたいと、学長としての私は念願しています。
しかし、大脳、前頭葉が発達したが故に、また人類は社会を構成するが故に、私たちは心のなかに「暗闇」を持つようになりました。この暗闇を無視することは出来ません。ただし、暗闇を直視できるのも、生きる力があってこそです。皆さんの目の前にあるのは、絶望ではなく希望です。挫折ではなく夢です。皆さん、これから社会に出ても、生き物に本来的に備わっている生きる力を、さらにさらに伸ばしていって欲しいと思います。

Ⅲ 2つのお願い
最後に皆さんに2つだけお願いします。今すぐ出来る事、一生かかってする事、2つです。一つ、今日帰ったら、大学に行かせてもらったお父さん、お母さん、学費を負担していただいた方に、卒業証書を見せて、「ありがとうございました、おかげさまで卒業できました。」と感謝の言葉を述べて欲しいと思います。ケジメです「おかげさま」、私はこの言葉が日本語の中で一番美しいと思っています。今、皆さん、心の中で、言ってみて欲しい。「おかげさま」。
2つ目です。大経大での学生生活で、皆さんは何を学ばれましたか?何を一番覚えていますか?勉強、ゼミ、クラブ、サークル、バイト、友人、そして皆さんの目の前にいる壇上の恩師、先生方、いろいろでしょう。
しかし、日本で、世界で経大しかないもの、大経大オリジナルが一つあります。何だと思われますか?初代学長黒正巌博士が言った「道理は天地を貫く」という言葉です。E館の前の隅のほうに石碑に刻まれていますよね。黒正巌博士の胸像が正門入って右にありますよね。おそらく皆さんは、この4年間であまり聞いたことなかった言葉かもしれません。最後の最後ですが、この機会に覚えていて欲しいのです。いろいろなことがあっても、結局道理は天地を貫いているんだ。人が生きていくうえで道理とは何だろうと一生考え続けて欲しいと思います。

私たち教職員は、皆さんとともに“大経大FAMILY”として過ごせたことを感謝します。ありがとう。大経大の卒業生であることを誇りに思って、“大経大PRIDE”を持って、これからの人生を生きていってください。卒業おめでとう。以上で学長としてお祝いのメッセージといたします。