学長・野風草だより

No.201~210

No.201 2012年4月8日(日)

鈴木亨元学長の経済哲学に学ぶ

2010年1月より東洋医学や看護学、教育学、心理学の人たちと「プロジェクトいのち」という研究会を行っています(野風草だより No.104,124)。4月は、本学の鈴木亨元学長においでいただき、「存在者逆接空からみた『いのち』論」のテーマでお話しいただきました。1時間たっぷりと鈴木経済哲学を論じられ、そのあとのディスカッションでも質問者に丁寧にお答えになられていました。

「存在者逆接空」とは、無限・絶対・永遠なるものを仮に仏教用語の「空」と表現すれば、空は自己を否定して、有限・相対・時間的なる存在者が存在する。私たち有限・相対・時間的なる存在者(物質・生物・人間)から見れば、無限・絶対・永遠なる空に逆に裏から、その存在を支えられているともいえる。私たち存在者は、空の働きとしての「大悲・大愛」によって存在させられているというものです。

鈴木先生の著作はお弟子さんたちによって、『鈴木亨著作集』全5巻にまとめられていますが(三一書房 1996~1997)、難解な鈴木哲学を理解するのは容易でありません。先生は現在93歳ですが、矍鑠として、「現在はただの市井の物書きです。最後の著作として、私のしてきた学問をわかりやすくまとめようとしています。」と述べられていました。

私のようなものには十分理解は至りませんが、鈴木先生のお仕事は西田幾多郎の哲学を創造的に発展させた稀有なものとして、一部の人々からは高く評価されています(森信三、滝沢克己、小野寺功など)。私は先生のまとめの著作である『生きる根拠を求めて』(三一書房 1982)に、「天真独朗」と署名していただきました。おそらく先生のご心境を表現されたものかと思います。先生の横顔は(著作集第1巻しおり)、お弟子さんである成田一徹さんが切り絵で制作されたものです。大阪経済大学の大先輩として、先生のような素晴らしい哲学者と身近に謦咳に接することが出来ることは、この上もない幸せです。是非とも最後の著作が成就、刊行されることをお待ちしています。長岡京のご自宅に送り迎えをさせていただきましたが、奥様の文子様のお心遣いに感謝いたします。鈴木先生ご夫妻のご健勝をお祈りいたします。