学長・野風草だより

No.229

No.229 2012年6月10日(日)

日本画家村上華岳の「仏の世界」

京都祇園の何必館・京都現代美術館で、開館30周年記念の村上華岳展が開かれており、出かけてきました。日本画を見るのは好きで、近くの京都市美術館や京 都国立近代美術館へはよく行っていました。村上華岳(1888~1939)の絵も国立近代美術館の4階の常設展で時折展示されていたように思います。どれ かは、思い出せません。「墨牡丹之図」でしょうか。今回訪れて、あとでわかったのですが、秦恒平が書いた華岳の伝記小説『墨牡丹』(1974)は、これか らとられているのでしょうね。

何必館は、創設者の梶川芳友氏が若き日に華岳の「太子樹下禅那」の絵に感動して、後に運命的に入手することが出来、展示するために建てられたものです。素 晴らしいですね。「何ぞ、必ずしも」とそれまでの定説や常識を疑い、自分の自由自在な眼と心で感動したものをのみ、展示されてきました。研究や教育にも全 く通じることです。権威や有名さに引きずられる自分の卑俗さが恥ずかしくなります。

絵画や書が40点余り、展示されていました。3階の茶室の床の間に、「太子樹下禅那」は飾られています。写真のように前庭は、空まで吹き抜けで太陽の 光、雨風が直接ふり注ぎ、苔と楓が生きています。すばらしい空間でした。絵画は仏様の絵と、墨絵のような山岳風景画が中心です。造形的な書も仏の世界へと 導いていきます。彼の『画論』(1941)をぱらぱらとめくってみましたが、彼の「仏の世界」へは、道はるか遠しです。ただ、村上華岳の絵と書の直接対面 できたことは大きな喜びであり、ゆっくりじっくりこの感動を温めていきたいと思います。

右の写真は、菩提樹の葉に仏様の姿を描かれたものです。「制作は密室の祈りである」と、華岳は言われたそうです。

各階には、北大路魯山人の花器が置かれており、灯台躑躅(どうだんつつじ)の枝葉や山帰来の枝と実が活けられていて、まことに興趣あふれる空間でありました。