学長・野風草だより

No.47

No.47 2011年2月28日(月)

人間作れ、土作れ、作物作れ

2月26日から28日にかけて私の科学研究費(基盤C)の調査で、研究協力者の藤本高志教授、渡邉正英准教授と九州中北部の農村を回りました。戦前戦後の著名な篤農家である松田喜一(1887~1968)の活動を調査するのが目的です。日本初の民間農業実習所を開き、「昭和の農聖」と言われた農民です。

熊本空港でレンタカーを借り、熊本学園大学の土井浩嗣さんにナビしてもらいながら、まずは熊本県八代市昭和日進町の農事実習所跡を訪ねました。そこには、松田喜一を顕彰する松田神社があって、写真のような鍬を持った銅像が建っています。折りよく遺族の三男夫婦の方にお話をうかがうことが出来ました。それから熊本県宇城市松橋町の生家と墓地を訪ねました。巨大な顕彰碑が建立されており、横には自筆の「農魂」の碑がありました。

翌日は熊本県立図書館で彼が発行した「農友」という雑誌を調査しました。そして佐賀県唐津市へ移動して、農家で小説家・評論家でもある山下惣一さんを自宅に訪問しました。お父様が熱心な松田ファンだったので、山下さん自身も日本農友会実習所で短期講習を受けたそうです。山下さんは、岐阜県で自然卵養鶏法の中島正さんと『農魂』(仮称)という本を出版される予定だそうです。2月28日には福岡県糸島郡二丈町の「自然と農の研究所」の元代表の宇根豊さんを訪問しました。宇根さんは、松田喜一の活動、考え方を現代で顕彰している数少ない方です。新刊の『百姓学宣言-経済を中心にしない生き方-』を頂戴しました。

忙しい中でも、こうして農家の方たちとお話し出来るのは、ありがたいことです。やっぱり研究してないと、センスが鈍るなと痛感させられました。松田喜一の言葉を幾つか紹介します。「稲のことは、稲から学べ、世の中のことは、世の中から学べ」、「自分が変われば、世の中が変わる」、「農魂を養い農技を磨け、農技なければ農魂なし」。ですから、農家ならまずは「作物作れ」が一番目に来ると思いがちですが、「人間作れ」が最初に来ているのです。農業と教育は、どちらも「いのち」を育む点で共通です。お金儲けを考えて作ると、作物は歪むそうです。