学長・野風草だより

No.68

No.68 2011年4月8日(金)

「いのち」が響きあう大経大へ、日本へ

2011年度の基本方針の説明会が11時よりC31教室で開かれました。およそ150名の教職員が出席し、勝田泰久理事長が法人側から話され、私が教学を代表して説明を行いました。以下は、その時の私の話です。少々長いですが、お読みいただければ幸いです。一部省略しています。
途中の写真は、本学にある世界的彫刻家である流政之氏の作品で、30年前の創立50周年記念で作られました。「KAZE NI MUKATTE:KAZE NI TATSU」、「KUMO NI MUKATTE:KUMO NI TATSU」「HANA NI MUKATTE:HANA NI TATSU」で、風・雲・花のいのちの自然と生きる若者のいのちを象徴しているのではないでしょうか。それぞれがどこにあるか、大経大の構内を歩いてみて 下さい。

おはようございます。昨年11月にこの教室で学長就任の所信表明を行ってから5ヶ月がたちました。あの時は、随分と緊張しました。最近だいぶ肩の力は抜け てきましたが、それでも4kg痩せたままです。酒ばかり飲んでるように思われていますが、人並みにストレスを感じているようです。さて、本日は新学期でお 忙しい中、お集まりいただきありがとうございます。こんなに高い所からで恐縮ですが、少しばかりお時間を頂いて、私の大学作りの基本的な考え方をお話しさ せていただきます。
最初に東日本大震災で卒業式を中止した立教新座高等学校の渡辺憲司校長先生のメッセージを紹介します。経営情報学部の先生がすぐに教えてくれ、昨日経営学 部の先生からも教えていただきました。Twitterなどでは話題になっている、素敵な文章です。私は感動しましたので、ちょっと長いですが、聞いてくだ さい。

「泥の海から、救い出された赤子を抱き、立ち尽くす母の姿があった。行方不明の母を呼び、泣き叫ぶ少女の姿がテレビに映る。家族のために生きようとしたと語る父の姿もテレビにあった。今この時こそ親子の絆とは何か。命とは何かを直視して問うべきなのだ。
今ここで高校を卒業できることの重みを深く共に考えよう。そして、被災地にあって、命そのものに対峙して、生きることに懸命の力を振り絞る友人たちのため に、声を上げよう。共に共にいまここに私たちがいることを。被災された多くの方々に心からの哀悼の意を表するととともに、この悲しみを胸に我々は新たなる 旅立ちを誓っていきたい。
真っ正直に生きよ。くそまじめな男になれ。一途な男になれ。貧しさを恐れるな。男たちよ。船出の時が来たのだ。思い出に沈殿するな。未来に向かえ。別れの カウントダウンが始まった。忘れようとしても忘れえぬであろう大震災の時のこの卒業の時を忘れるな。巣立ちゆく立教の若き健児よ。日本復興の先兵となれ。
諸君らのほとんどは、大学に進学する。大学で学ぶとは、又、大学の場にあって、諸君がその時を得るということはいかなることか。大学に行くことは、他の道を行くことといかなる相違があるのか。大学での青春とは、如何なることなのか。
大学に行くことは学ぶためであるという。そうか。学ぶことは一生のことである。いかなる状況にあっても、学ぶことに終わりはない。一生涯辞書を引き続けろ。新たなる知識を常に学べ。知ることに終わりはなく、知識に不動なるものはない。
大学だけが学ぶところではない。日本では、大学進学率は極めて高い水準にあるかもしれない。しかし、地球全体の視野で考えるならば、大学に行くものはまだ 少数である。大学は、学ぶために行くと広言することの背後には、学ぶことに特権意識を持つ者の驕りがあるといってもいい。
多くの友人を得るために、大学に行くと云う者がいる。そうか。友人を得るためなら、このまま社会人になることのほうが近道かもしれない。どの社会にあろう とも、よき友人はできる。大学で得る友人が、すぐれたものであるなどといった保証はどこにもない。そんな思い上がりは捨てるべきだ。
楽しむために大学に行くという者がいる。エンジョイするために大学に行くと高言する者がいる。これほど鼻持ちならない言葉もない。ふざけるな。今この現実の前に真摯であれ。
君らを待つ大学での時間とは、いかなる時間なのか。学ぶことでも、友人を得ることでも、楽しむためでもないとしたら、何のために大学に行くのか。誤解を恐 れずに、あえて、象徴的に云おう。大学に行くとは、「海を見る自由」を得るためなのではないか。言葉を変えるならば、「立ち止まる自由」を得るためではな いかと思う。現実を直視する自由だと言い換えてもいい。大学という青春の時間は、時間を自分が管理できる煌めきの時なのだ。池袋行きの電車に乗ったとしよ う。諸君の脳裏に波の音が聞こえた時、君は途中下車して海に行けるのだ。高校時代、そんなことは許されていない。働いてもそんなことは出来ない。家庭を 持ってもそんなことは出来ない。「今日ひとりで海を見てきたよ。」」
深い愛と高い志がここにあります。私はこの言葉に学びたいと思います。全文は、立教新座中学校・高等学校のホームページをご覧下さい。なお引用に際しては、立教新座中学校・高等学校のご許可をいただいております。
大経大の学生のみんなと教職員全員が力を合わせて、こんな大学を作っていけたら、すばらしいなと思います。読売新聞(西日本版)の元旦に大経大の1面広告を載せました。勝田理事長と2人で、以下のようなメッセージを送りました。

「まっすぐ。
 一人ひとりの学生とまっすぐに向き合い、一人ひとりのまっすぐな人間性を育む。それが大経大のめざす教育のかたちです。大経大が創立された80年前とは 比べものにならないスピードで、社会は、変化し続けています。しかしこんな時代だからこそ、その動きに翻弄されることなく、自らの考えで主体的に動ける。 そんな、真ん中に一本芯を持ったまっすぐな人間を育てたい。
 就職や卒業のためだけでなく、知識や教養を得るためだけでなく、より高いレベルの人間性を、育むことができる場所でありたい。大経大は、創立以来80年間、変わることのない精神で、これからもずっと学生と、社会と、向き合い続けてまいります。」
渡辺校長のように格調高く表現できてないかもしれませんが、同じ志です。
私は長年農業の研究をしてきましたが、この度の東日本大震災では、聞き取り調査などでお世話になった農家がたくさん被災されました。福島県伊達市、宮城県 栗原市の農家とは安否を確認するのに数日を要しました。幸い亡くなられた、行方不明の方はいらっしゃいませんが、不自由な生活を強いられています。今後と も出来る限りの支援をしていきたいと思っています。
彼らはスイカ作り、さくらんぼ作り、菊作りの名人、天気予測の名人など様々ですが、彼らから教わった一番大切なことは、農業は「いのち」を育てるという当 たり前のことです。たくさん取ろう、金儲けしようと欲に目がくらむと、作物はそれがわかって歪む。農家の性格、家族の様子がそのまま作物に反映する。無心 でいくか、野心でいくか。いろいろな教えがありました。そして、農業のやり方と教育のやり方は、いつも一緒だというのには驚きました。化学肥料や農薬をど んどんやってるのは、知識の詰め込み教育をやっている時代だし、無農薬・無肥料と騒いでいる今は、ゆとり教育の名で責任放棄の放任しているのと同じだ。作 物は自分自身の力で育ち実を成らすのだが、人はそっと手助けをしてあげる必要がある。農業と教育、いずれも「いのち」を育てるという点で共通しているのだ と思います。ただし、「いのち」をどのように考えるかは、DNAであれ、Something Greatであれ、カミであれ、各人各様の解釈でかまいません。
私はこの大阪経済大学で、20歳の若者たちを教育する仕事に携われるのは、農業の研究が出来たことと同様に、大変幸せなことだと思っています。しかも学生 の皆さんの授業料で、ということは学費負担者の方々の働きによって、こうして人並みに暮らせているのですから、まさに「おかげさま」と感謝する以外にはあ りません。私は、本日の基本方針の説明会で教職員の皆さまに、一番にお話ししたいのは、このいのちを育てるすばらしい仕事に携われている喜び、幸せを再確 認していただきたいということです。わが子を育てるように、20歳の若者たちのいのちを育てる、これが私たちの仕事の原点だと思います。

今年1月の新年互例会で、私は一つだけお願いをしました。まずは教職員から挨拶をしようです。皆さんのご努力で教職員同士、学生たちとも挨拶する声が聞こえてくるようになりました。率先して挨拶してくれている皆さん、ありがとうございます。ここでもう一つ、欲張りなお願いをします。「おはよう」の挨拶のあと、「元気?」「講義出てる?」といった声かけをしてあげて欲しいのです。農家では、「声かけは肥えかけ」と言います。作物に大丈夫と声をかけることが、肥料をやるのと同じ効果があるというのです。元気で育って下さいと祈るのです。赤ちゃんに声をかけます。ワンちゃんに声をかけます。まだ名前は決まってないけど、ネコのキャラクターに声をかけます。観葉植物のポトスに声をかけますよね。20歳のいのちに声をかけようじゃないですか。私たちもいのちです。いのちといのちの響きあいがおこります。共振、響きあい、私たちからだけではなく、学生たちからも伝わってくること、教えられることがあるということです。教えるという一方向ではなく、双方向です。この視点を大切にしたいと思います。

以上が私の大学作りへの基本的な考え方です。何を今さら、わかりきったことかもしれません。ご理解いただければ、ありがたいです。さて、本日の基本方針の説明会は、2つ新しいことがあります。一つは、法人の側から勝田理事長が直接皆さんにお話ししたということです。今後とも理事長と協力しながら、大阪経済大学をNo.1の大学にするために努力していきたいと思います。二つ目は、4月から準職員になられた方が出席されているということです。メールでの連絡が遅くなったので、今日は少ないですが、同じ職場で働く仲間として、大経大の全スタッフが同じ方向、同じ気持ちで進まなければならないと思います。リーダーシップがよく言われますが、フォロワーシップも大切です。こうして大経大が存続できているのも、皆さまの長年のご努力のおかげだと思います。改めて、感謝申しあげます。

私は昨年11月に学長に就任し、この教室で所信表明を行いました。大経大の教育の柱は何か、「愛と志のある教育である」。大経大の教育の特徴は何か、「ゼミの大経大」「マナーの大経大」「就職の大経大」である。大経大はどのような学生を育てるのか、「堅実で清新な学生」である。大経大はどのような大学をめざすのか、「経済・経営系の大学としてNo.1」であると述べました、今後とも、100周年に向けて、皆さまと一緒に努力を続けて参りたいと思います。
  (中略)
東日本大震災から立ち直り、21世紀の美しい日本、温かい日本を作っていくのは、私たちの目の前にいる学生たちです。21世紀を担う有為な人材を、学生たちを育てるすばらしい仕事に携われる喜びを感じながら、大経大の教育に係わる全てのスタッフが力を合わせて頑張っていきましょう。御静聴、ありがとうございました。