学長・野風草だより

No.95

No.95 2011年6月1日(水)

「いのち」が響きあうキャンパス作り―大経大2010年度事業報告書より―

近畿では例年より10日も早く梅雨入りだそうです。歩いていると、雨に濡れたアジサイがここかしこで咲いています。開花日数やアルミニウムイオン量、土壌の酸性度などにより、さまざまに色変化して楽しいものです。路地には、ドクダミが咲いていて、これまた梅雨の情緒を深めてくれます。雨が上がれば、空気が澄んで、木々の葉もきれいに輝いています。さて、大経大の2010年度事業報告書が公開されました。
http://www.osaka-ue.ac.jp/file/general/813
字数制限があったため、かなり削りましたので、私が書きました文章の元版を紹介します。

1年、1年と時を刻んできました。本学は1932年の創立以来、来年には80の年輪を数えたことになります。ありがたいことです。これまでご苦労いただいた皆さまに、心から感謝申し上げます。B館の横に、大地に根付き天空をめざして80年間、私たちを見守り続けてくれた大樟の樹よ、ありがとう。学歌の2番に、「学徒師弟が幹負い持ちて 諸汗にしっかと植えた 融和のシンボル」と歌われている大樟です。大地の水と天空の光の恵みに生かされながら、90、100年と生き続けて欲しいですね。
私たち大学が生き続ける源は、何でしょうか。若い20歳の学生たちの「いのち」ではないでしょうか。私たち教職員は歳を重ねていきますが、学生たちは4年ごとに更新され、毎年新鮮なフレッシュマンでキャンパスはにぎわいます。目の前にいる学生たちを「愛と志のある教育」によって育てていき、学生たちと教職員との「いのち」の響きあいによってこそ、90、100年へとつながっていくに違いありません。

2011年3月11日の東日本大震災は、日本社会のあり方を根本から問い直しています。地震や原発への学者たちの対応は、これまでの学問の成果、姿勢を厳しく糾弾しています。大学はこれからどのような道をすすめばいいのでしょうか。
 でも、難しく考えることはないのです。次は、今は40歳となった私のゼミ卒業生ですが、仙台で被災し、同期生たちの「つながる力」のメールの一部です。「あったかもん」の種はすでに蒔かれています。ちゃんと育っています。水をやり光を当てて、若い「いのち」を大樹に育てていきたいですね。

2011年4月21日午前
まいど。なんとか無事に過ごしているだろうか。今回の震災で色々と苦労していると思います。微力ながら、徳永ゼミの有志一同で、応援金を募りました。少ないけれども何かの役に立てればと願います。
まだまだ余震のつづく毎日だろうけれど、今度会える日を皆、楽しみにしています。よろしくな。

2011年4月21日午後9時
いつもありがとう。気持ちだけで十分もったいない話です。気持ちをいただいたみんなに、代わってお礼をお願いします。もし、みなさんの合意がいただければ、どんな使い道があるかわかりませんが、もっと困っている方々のために使ってください。私は幸せです。長く会わなくても遠く離れていようとも、友が友を気遣い行動をおこしてくれる。もう他に何がいるというのか、と本当に思います。
今日、ガスが復旧しました。お風呂に入れました。仕事で出張(北海道と東北6県)をしている方が、シャワーも浴びれるし飯も普通に食える。逆説的で苦笑いの日常です。でも家族は大阪で無事で、私も仕事もあるし、こうして生きています。
マイナスを数えると、この震災は”不幸”以外ではない話です。しかし、学ぶことがたくさんありました。友の心をいただき、もっと困っている方のお役に立ちたいと、なんの衒いもなく素直にそう思います。いまだにニュースを見るたび泣いています。もう少し落ち着いたら、ボランティアをと考えています。ありがとう。

諸星裕の『大学破綻』(2010 角川oneテーマ21)によると、日本の大学が抱える「致命的欠陥」は、次のようなものです。
・大学が独自の「ミッション」をもっていない。
・大学経営が未熟で、マネジメント力が欠如している。
・学部教授会の権限が強すぎることの弊害、および高すぎる学部の壁。
・大学教員の「教育者」としての職業意識の欠如。
・職員の専門性の欠如、および教員と職員の対立。
・いわゆるAO入試への誤解などにより、学生選抜のメカニズムが機能していないこと。
・学生のニーズにマッチした授業ができていないこと。
・客観的な成績評価システムがないこと。
・大学が地域の財産になっていないこと。

そして、大学改革の根幹は、「大学における最大の受益者は学生だ」に尽きると述べています。本学においても、こうした諸点から本学のあり方を検討してみる必要があるのではないでしょうか。2007年に大学基準協会の認証評価を受け、2011年には日本高等教育評価機構の認証評価を受け、「無事」に認定されました。また、毎年こうして「事業報告書」や「年次報告書」を出していますが、大学の改革に有効に機能しているでしょうか。PDCAサイクルは生きているでしょうか。