5回目のセミナーの概要について紹介します。
タイトル:鉄腕アトムを救った大阪の中小企業経営者
~手塚治虫『どついたれ』の真実を明かす~
日 時:2016年8月6日(土)
14:00~16:00
場 所:C館31教室
講 師:巽 尚之氏(産経新聞大阪本社 編集局編集企画室 前編集委員、本学客員教授)
参加者:154名(申込者292名)
今回は、従来とは趣の異なったセミナーを企画しました。地方創生の時代とかビジネス・エコシステム創造の時代などと喧伝されるように、地域企業の役割と地域の発展との関連が、多くの注目を集めています。
そこで、『鉄腕アトムを救った男:手塚治虫と大阪商人「どついたれ」友情物語』実業之日本社(2004年)や『人生で大切なことは手塚治虫が教えてくれた』PHP(2011年)などのご著書があり、手塚治虫作品に造詣の深い巽尚之氏にご登壇いただきました。氏は経済・産業に精通した記者としても活躍されておられ、そのエピソードも交え、世界的に有名な漫画家である手塚治虫氏と大阪の企業との関係を中心に講演いただきました。
巽氏によると、昭和48年に「虫プロダクション」の倒産で債権者に追われた手塚治虫氏の窮地を救ったのが大阪の中小企業経営者である葛西健蔵氏であったとのことです。この逸話がもとになり、後に手塚作品の中では異色作といわれた「どついたれ」が、「ヤングジャンプ」(集英社)に1年間にわたり連載されたとのことです。「どついたれ」は、戦後の焼け野原となった大阪が復興されていく姿がコミカルに、そしてシリアスに描かれた作品であり、葛西氏はベンチャー起業家のモデルとして描かれたとのことです。
手塚治虫氏と葛西健蔵氏との出会いやエピソードなどを、関西や大阪らしいベンチャー精神を浮き彫りにしながらお話をされました。また、この手塚ワールドを関西に生き続けさせるための構想についても紹介いただきました。
巽氏は、30年以上の取材経験を踏まえて、儲けるだけではなく、理念や信念をもって事業化していく経営者は、東京よりも意外に関西に多いのではないかとの認識も披露されました。
今後の関西、とりわけ大阪の地域経済の成長策を考える上で、再度、真摯に、大阪らしさとは何か、大阪の強みとは何かについて問うことの大切さを教えてくれたセミナーでした。