藤本髙志

市場では評価されない田んぼや森林の価値を求めて

見えない価値を数量化し、日本の農業を守りたい

里山は日本のふるさと。人々の暮らしと自然が密接に結びついている里山に、私は心癒やされます。私自身、20代から兼業農家として田んぼを耕しながら、日本の農業を守るためにどのような政策が必要なのかを考えてきました。また、その政策でどのような効果が得られたかなどについて、主に数量的な調査研究を続けています。

田んぼは稲を作るだけでなく、雨の降る季節に水をためることで、洪水など自然災害から暮らしを守る働きがあります。また森林は水をかん養し、光合成によりCO2削減にも寄与しています。いずれも市場では評価されないサービスですが、この目に見えないサービスの価値を数量的に評価することこそ私の使命だと感じ、研究に取り組んでいます。

美しい田園風景の価値を数字で考える

私の専門分野は、統計データやアンケート調査などを用いた数量的な分析です。食品の消費は、価格や所得だけではなく、時代背景、年齢、世代の影響を考慮することが必要です。農業の存在価値を考える場合、農業がはぐくむ環境や景観にいくらの価格をつけるのかも研究の対象で、数量的に顕在化することが重要だと感じています。また、農村には美しい水辺空間、里山、棚田、そして田植えや炭焼きのような伝統技術があり、このような資源を活用した観光や商品の開発が農村経済に及ぼすインパクトの数量的分析も行なっています。最近では、離島を題材に、農林水産業とその関連産業が、条件不利地域の経済を維持するためにどの程度貢献しているかを数量的に分析しています。

フィールドワークでは、学生の目から見た気づきを何よりも大切にしています。田舎の人との心の触れ合いは、農林業への理解を深め、数量計算に留まることのない、温かな何かを感じてくれているようです。